16.勝浦海底ダンジョン実習⑤
最終日の自由時間だが、昨日のこともあり取りやめて帰ったほうが良いのではという意見も出たが、バスの手配の都合もあり、そのまま実施されることになった。気分がすぐれず宿舎で休む生徒のために昼食も用意することになっている。
生徒たちの行動はいろいろだったが、昨日と同じく早朝から電話でいちゃつく佐倉や鍛錬する四街道を見て吹っ切れたものも多く、ほぼ全員が外出を選んだ。
そんな中、佐倉、四街道、柏に足立品川渋谷太田のポニー4人は目の前の浜で海水浴を楽しむことにした。目の前の砂浜は遊泳できるようにクラゲネットをしている。広くはないが安心して遊べるのも後押ししたようだ。
「四街道、サービスしすぎじゃね?」
「昨晩風呂でやけに手入れしてたのはそれかよ」
足立と品川が四街道の水着を見て騒ぐ。今日の四街道はチューブトップの赤いビキニで、しかも布面積が小さい、かなり攻めたものだった。
佐倉はワンピースタイプで、柏に至ってはTシャツ装備の完全防備だ。
「あいつらなんか可愛くね?」
「柏がかわいいだと!?」
「四街道の腹筋すげぇ」
「太田のぽっちゃり度合いがたまらねえ」
「それな」
水着で遊ぶ女子がいれば吸い寄せられるのが男子の宿命。男子5名がふらふらと浜辺にやってきた。
「海パンなんて持ってきてねーし」
「まぁ男は裸でも怒られねーだろ」
「トランクスって海パンと似てるよな」
「よし、俺らも遊ぶか!」
「よっしゃー!」
男子5人はその場で服を脱ぎ始めた。
「あほかあいつら」
「マジかよ」
「義務教育からやり直せって」
女子からは散々な言われようだがパンイチになった男子は海に突撃していく。なお男子だが黒髪ポニテが館山、茶髪イケメンが一宮、大柄マッチョが市原、さわやか細マッチョが千葉、金髪ツーブロックが野田である。5人とも戦闘スキル持ちだが強さは平均的だ。目の前の女子にはどうあがいても勝てない程度である。
うぉぉぉと走っていた市原が派手に転んでパンツが脱げてしまいちんちんがもろ見えになってしまう。
「ちょっ!」
「いやぁぁ!」
「マジカ」
女子が手で顔を隠す中、佐倉だけは「ふっ」と余裕をかます。
「オクサマのヨユウ」
「まだじゃい!」
「見たことある人は強いわー」
「暗がりだったし!」
「私たちがいるってのに一緒にお風呂はいってイチャイチャしてたでしょうよ」
「そそそそれは!」
赤くなる佐倉とその場面を想像してしまい股間を押さえる男子。
「うわ、興奮すんな変態!」
「襲われちゃーう」
女子は塩対応だ。なかなかひどい。
「男女対抗でビーチバレーやろーぜー」
イケメン一宮がボールを持ってきた。ネットなどはないが砂浜に線を引いてコートにすればナンチャッテビーチバレーだ。
対戦は、ポニーの4人と千葉を除く男子4人だ。佐倉たちだと蹂躙しかねないのと、千葉はジャンケンで負けたからだ。
「ふっふっふ、わたしらに勝てると思うな!」
足立が胸をそらせて挑発する。当然胸が強調されるので男子の視線が吸い込まれる。その隙にボールをゲットした女子から試合開始だ。足立が軽く打てば男子コートの後ろまで飛んでいく。
「まじかぁぁ!」
必死に走った市原が拾い野田がボールを返す。ポニーの渋谷が拾って品川につなぐ。
「そういや品川のパンツって可愛い系なのな」
佐倉たちと観戦していた千葉がつぶやく。昨日、地上に帰ったときの品川のジャージがびりびりでパンツが見えていたからだろう。
「ちばぁ、見てんじゃねぇぇぇぇい!」
「ぐばっ!」
品川の渾身のアタックが千葉の腹にヒット。「うぉぉ」と千葉が転がる。
「一応な! 見られてもよさげなの持ってくるに決まってんだろ!」
「じゃあ見てもいいじゃねーか!」
千葉がむくっと起き上がる。お腹が赤くなっているがたいしたダメージはないらしい。
「わたしのパンツなんて見ても嬉しくねーだろ」
「いや、嬉しいが?」
「「「「おおっ!」」」」
「告白キター!?」
「アオハル!?」
「ううううるさぁぁぁい!」
「品川、まてぇぇぇ!」
真っ赤になった品川が千葉を担ぎ上げ、海に放り投げた。
智の遠征先でサハギン大量発生の報を受けてからショタ武者零士くんと一緒にダンジョンにこもってる。朝から交代で見張ってお昼ちょっと前。1階の奥のほうで空間がぼやけてきた。魔物発生の兆候だ。
「来たかな」
スタンピードの翌日に墓場ダンジョンにその骨版が出現するのを待ってるのは、まぁ掃除するためではあるけど、それとは別に記録するためでもある。
「じゃあ小湊を呼んでくるぞ」
「お願いしまーす」
零士くんは京香さんを呼びに地上へ向かった。数分で京香さんを連れてきた。京香さんはカメラを持ってきてる。その間にぼやけた空間が顕現化して大量の骨が出現した。
「魚の骨だ。頭だけだけど」
「肋骨が横に広いので肺がある可能性が高い。体の構造は、足の指が5本とも前にあるので爬虫類に近い?」
京香さんはカメラで撮影しながら器用にスマホでメモを取ってる。これも【速記】スキルらしい。
「普通のサハギンは耳のあたりにエラっぽいのがあるけどな」
「もしかしたらエラと肺が共存しているかもです」
零士くんのつぶやきに京香さんが反応する。恐竜の化石から生態を予測する研究者みたいだ。
「それが何かあるのか?」
「水中、陸上どちらでも長時間の行動が可能ということです。地上に出ても行動に支障がないということは、スタンピードを止められなかった場合の被害が大きくなる可能性があります。勝浦ギルドには映像と一緒に報告書も送ることにします」
「なるほど、そう読み取れるのか。すげーな」
いつの間にか小湊先生の授業になっていた。
なお、サハギンスケルトンが98体と指揮個体にサハギンダインスケルトンが1体で、あっという間に掃除できた。基本は爪とかみつきらしいから、投げ網で一網打尽だった。なお、ダインとは【ちから】という意味があり、なんとかダインと名前がある魔物はたいてい指揮個体なんだとか。
ハンターコースでは基礎知識だそうで、勉強になります。
収納した結果、ドロップ品があった。
【収納:サハギン真珠×98】
【収納:サハギン大真珠×1】
小さな飴くらいの青い真珠だ。吸い込まれるようなオーシャンブルーは天然の色で、一粒50万円はするらしい。サハギン大真珠は2センチくらいある巨大な青真珠で、過去に例がないので算定不可だそう。なにそれ怖い。
サハギンの魔石とは別で体内に凝縮されるのでは、と言われているそうだ。よくわからないけど綺麗だからいいよねって感じ。
「今回のサハギン真珠で真珠のネックレスを作った場合、大真珠抜きでも4000万円くらいはしそうですね」
京香さんがぼそっとつぶやいた。
「京香さん、ほしかったりします?」
「高価すぎて身に着けるのを躊躇しそうなのでいただけるならそれなりのモノが欲しいです今度4人で買いに行きましょういいですね?」
「あ、はい」
一気にまくしたてられて突っ込む間もなく決定事項にされてしまった。いいけど。




