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うちの寺の墓地にダンジョンができたので大変です  作者: 海水


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16.勝浦海底ダンジョン実習②

 夕食を終え、風呂で疲れを癒した後、寝る前の女子だけの時間。佐倉は四街道、柏と一緒だったが、同部屋に寄居とその親友の熊谷、浦和とも一緒だった。

 寄居は黒髪美人だが熊谷は金髪ギャル、浦和は銀髪ギャルで、趣が違うが3人とも美人系だ。

 寝巻は個人の自由で、佐倉は作務衣を持ってきていた。四街道も柏も同じく作務衣で、3人合わせていた。

 対してギャル組はカップ付きキャミに短パンという超リラックススタイルだ。

 布団を敷いて、普通なら女子トークが始まるのだろうが授業のこともあり、空気は険悪だった。


「あなたの彼氏とやらはインチキスキルらしいじゃない?」


 口火を切ったのは寄居だ。布団に寝そべり、そんな口をきく。


「はぁ?」


 佐倉の眉根が寄る。()()()()と同レベルかと呆れもある。


「私さ、船橋ギルドに知り合いがいるんだけど、そんなことを聞いたよ?」

「はぁ?」

「インチキと使えないスキル持ちのカップルなんて、できすぎじゃない? あはは」


 寄居がおかしそうに笑う。

 ほうほう、その知り合いってのはあの化粧ババアか?と佐倉ぶちぎれそうだ。


「寄居、今のうちに謝ットケ。シラネーゾ」


 顔にナイトパウダーをつけていた柏が忠告する。佐倉が馬鹿にされたことでブちぎれた守を知っている柏は、その逆が起きることは容易に想像できた。


「何を謝れってのよ。事実でしょうが! 虚偽のスキルを報告してハーレム作ったクソ野郎でしょ?」

「アーシは警告したぞ。もうシラネ」


 柏は化粧品を布団に置き耳に指を突っ込む。四街道は知らんぷりして窓を見た。佐倉は激怒を通り過ぎて冷静になっていた。

 あぁ、瀬奈おねーちゃんがあの時に激オコだったのはこんな気持ちかー。よーくわかったわ。

 佐倉はゆらりと立ち上がる。


「あたしはどういわれても気にしないけどさ、あたしの旦那について嘘を並べるんだったら、覚悟しな!」


 佐倉は素早く動き寝っ転がったままの寄居を捕まえた。頭を後ろに、お尻を正面に向くように小脇に抱えた。


「ナ、ナニコレ、動けない!」

「はいはいおとなしくしなさいね」

「こ、この、スキル【怪力】!」

「無駄よ」


 寄居は【怪力】スキルを使って振りほどこうとするがレベル16の佐倉がすさまじい力なので抜け出せなずに手足をばたつかせるだけだ。


「な、なんで動けないのよ!?」

「悪い子には教育だね」


 佐倉は寄居の短パンを脱がせてパンツ丸出しにした。白いサテン生地のおしゃれなTバックだ。肌がぴちぴちなのが余計にイラっとする。


「ちょ、なにするの!」


 これからお尻ぺんぺんの刑が始まると直感した四街道はこっそりスマホを操作し勝浦に電話をかける。スピーカーを手でふさぎマイクで音を拾う。


「守が虚偽だとか、()()()()()の大多喜さんからは聞いてないんだけど?」


 バシーン!

 おしりを叩く抜けの良い音が部屋に響く。


「イタイッ!」

「使えないスキルのあたしを拾ってくれて、鍛えてくれた守が虚偽だって?」


 バシーン!


「きゃぁぁ!」

「ふざけんじゃない!」


 バシーン!


「いたいぃぃ!」


 佐倉が叩くごとにお尻りが赤くなっていく。


「あと彼氏じゃない。()だ!」


 バシーン!


「ぎゃひぃぃ!」


 佐倉の力で叩けば皮膚が裂けて血も出る。寄居は痛みで泣きべそになる。


「いだい、いだいよぅ、だずげでぇぇぇ」

「美奈、ポーションとって」

「はいはい、少しは手加減してあげなさいよ?」

「いやよ。あたしにケンカを売ったんだから。ケンカを買われる覚悟くらいはあるでしょ?」


 四街道が守に持たされたポーションを佐倉に渡す。


「これ飲みなさい」

「がぼがぼ」


 無理やり口にあてがいポーションを飲ませるとお尻の赤みは元通り。


「まだ終わってないよ」

「い、いやぁぁぁぁあ!」

「や、やべえぞあいつ」


 金髪ギャルの熊谷が自身の【隠形】スキルを使って逃げようとするも部屋の入口に先回りしていた柏にばれて捕まった。


「な、なんでわかんだよ!」

「ニゲンナ。【隠密】はアンタだけが使えるもんじゃネー」


 残された銀髪ギャルの浦和は四街道を睨む。


「おい四街道、見てないで止めろよ!」

「寄居が智にケンカ売って、智がそのケンカを買っただけじゃん。悪いのはどっちよ」

「やりすぎだろ!」

「相手の強さもわからないでケンカ売る方がバカなだけでしょ?」

「なんだと? ずいぶん言うじゃねーか」

「あら、やってみる? あなた()()()じゃわたしには勝てないわよ?」


 四街道が柔らかく笑う。佐倉ほどではないが四街道もレベルは高い。攻撃力で測れば四街道のほうが上だ。


「消灯時間はすぎてるぞー」


 部屋の入り口から引率の女の先生の声が聞こえ、佐倉はパッと寄居を離した。


「はーい。寝まーす」


 佐倉は何もなかったかのように電気を消した。念のために寄居の枕元にポーションを置いて。


「寄居、今度うちのダンジョンに来なよ。鍛えてあげる」


 真っ暗な部屋に佐倉の言葉(挑戦状)が落とされた。





 起床時間は6時だが、毎日5時には起きている佐倉は目が覚めてしまう。現在時刻は5時半過ぎ。まだ時間がある。昨晩お仕置きをした寄居らは寝ているので起こさないように静かに部屋をでた。

 廊下はすでに明るく、だがシーンとしている。ときおり誰かのいびきがきこえ、佐倉はクスッとした。

 海のそばとはいえ外はすでに暑いくらいだ。佐倉は宿舎近くの石に腰かけた。


「守はダンジョン掃除が終わったくらいかな」


 佐倉は持ち出したスマホで守にかけてみた。


「もしもーし」

『おはよう智。せっかくの遠征なのにずいぶん早起きだね』

「いつもの癖で起きちゃった」

『そっちはどう?』

「合宿みたいで楽しいよ。そっちのダンジョンは大丈夫?」

『今日はオーガがいたからポーションがザクザクだね。在庫ばっかり増えちゃうよ』

「あ、遠征のお金って守が出してくれたんでしょ? みんな楽しそうだよ。ありがとう、その、だだだ旦那様」


 そうささやいた佐倉の耳が赤い。そのタイミングで宿舎から四街道が出てきた。あろうことが黄色のキャミ1枚に短パンで手には小さなアレイを持っている。作務衣はどうした。


「おっと、おにーさんと電話してた? ラブラブタイムを邪魔しちゃった?」

「あ、美奈! あ、うん、切るね。頑張って!」


 佐倉が通話を終えると四街道が近くに来た。鍛えているしなやかな四肢を太陽のもとに晒している。


「さて鍛錬鍛錬」


 四街道はふーっと深呼吸をする。

 両手に小さな鉄アレイを握り、肩幅に足を開いて腰を落とした。静かに呼吸をしつつ、体幹を鍛えるための太極拳のように、腕をゆっくり円を描くように動かしていく。

 足を大きく開き体を沈めていくときも、両腕をビシッと伸ばし片足を持ち上げて立つときも体がぶれない。朝日を浴びた四街道の体は、同性の佐倉から見ても美しかった。


「ほえー、美奈すごいね」

「スキルは戦うための手段であって、基本の肉体がだめならスキルも力を発揮できないって師匠から言われてるからね。体幹を鍛えろって指示されてて、それができてないと何も教えてもらえないんだ」

「鬼教官だ」

「遠すぎる目標だけど、追いかけ甲斐があるよ!」


 四街道が嬉しそうに目を細める。そんな様子を2階のベランダから男子が覗いていた。


「四街道のおっぱいでけー」

「あの谷間に埋もれてぇ!」

「なんだあの鈍い動き」

「……すごく綺麗な動作だ。すごい……」


 男の子な感想だが、一部違う男子もいた。真似をした男子もいたが、すぐにバランスを崩してしりもちをついていた。


「いやムッズ! 無理だろこれ」

「四街道は何でできんだよ」

「おっぱいか?」

「おっぱいだろ」

「雄っぱいじゃダメなのか?」


 謎が謎を呼んでいた。

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