13.瀬奈さんとデート②
連れていかれた先のホテルはおしゃれな外観で、でも窓がなくって。ありていに言えばラブホテルだ。千葉駅近くにもあるんだな。
「じっくりゆっくり、大事な話を語らうにはここが一番なのよー」
瀬奈さんは真剣な顔だ。笑顔でさらっとやってしまうのではなく、俺の目をじっと見てくる。
握ってる手が少し震えてる。本当に大事な話らしい。
行くしかないでしょ。
頼れるお姉さまが泣きそうな女の子に見えるんだもん。
「行きましょう。でも俺ってコーユー所に入った経験ないんで、どうすればいーですかね」
「ふふ、おねーさんに任せなさーい」
という感じで入室したるは黒が基調のシックなお部屋。バスタブも大きく、壁はガラスで丸見えだ。
男は度胸、で突入したけど手汗がすごい。
「まずは一緒にお風呂ねー」
荷物をベッドに放り投げてそのまま風呂へ。瀬奈さんはぱぱぱっと服を脱いで惜しげもなく裸体をさらしている。
水着の時点でわかってはいたけど、ボンキュボンのリアル不二子ちゃんとはこのことか。
「うわー、すげー、きれー」
「ふふ、ありがと。守くんも脱がないとー。脱がしちゃうわよー?」
「脱ぎます脱ぎます!」
急いで脱いだ。恥ずかしいのでおちんちんは隠させてもらう。
「体を洗うわねー」
泡でもこもこにしたスポンジで背中を洗われる。3人とお話合いをした時も洗われたけど、その時は3人でかわるがわるで、みんな水着ではあった。俺だけすっぽんぽんなんだけどね!
「守くんの背中って、裸になると大きく感じるのよねー」
瀬奈さんはゆっくり俺を洗っていく。丁寧というか、時間をかけてるというか。葛藤があるんだろうか。
「あのね、話をしておかないといけないことがあってね」
瀬奈さんがポツリと話を始めた。
あるところにひとりの女の子がいました。女の子が小さいときに、両親が離婚しました。女の子は母親についていきました。
女の子はお金に苦労しました。母親ひとりの稼ぎでは生活も苦しいのです。女の子はお金がもうかる仕事をしたいと思いました。
女の子はハンターという仕事を見つけました。それになるための学校もありました。家にはお金がないので、アルバイトで生活費を賄いました。
女の子は卒業してハンターになりました。なったとたん、母親が男といなくなってしまいました。女の子は独りになってしまいました。
ハンターになった女の子は、何とか生活していましたが、寂しい心につけこむ悪い男に騙されてしまいました。
身体しか見ない男の間を渡って生きていました。
女の子は大人数の男に囲まれて襲われました。なんとか逃げましたが、怖くなってハンターを止めてしまいました。
ハンターをやめた女の子は、受付という仕事をし始めました。ある日、女の子は学校の後輩の女の子と出会いました。その女の子は望むスキルを得られずハンターになることを諦めた子でした。
寂しかった女の子は、その女の子としばらくふたりで生活をしていました。
ある日、ハンターになれなかった女の子はおかしな男の子を見つけました。女の子はハンターを止めた女の子に相談します。
おかしな男の子がいると。
ふたりは男の子に会いに行きました。男の子は、困っている子でした。でも何とかしようとする頑張り屋さんでした。でもこのままだともっと大変なことになりそうでした。
でもふたりの女の子は、そのおかしな男の子に希望を見ました。いまの寂しさを何とかしてくれそうだと。根拠はないけど確信しました。
ふたりの女の子は、男の子と暮らし始めました。大変な目にもあったけど、楽しい、楽しい日々でした。
いつの間にかふたりの女の子は、男の子を好きになっていました。でも男の子はひとりです。取り合ってけんかになってまた独りになるのはイヤでした。女の子は一歩引きました。
3人でいられるなら寂しくはありませんでした。
ある日、国の決まりが変わって、男の子と3人の女の子が仲よくなってもいいことになりました。
女の子は欲が出てしまいました。独りはイヤでした。
もう独りにならなくていい、絆が欲しい。そう思うようになりました。
そして女の子は幸せをつかむことができました。
背中を洗う瀬奈さんがとつとつと語る。
でてくる女の子は瀬奈さんのことだろう。京香さんっぽい子も出てきた。
なんだか俺の周りの子は不憫な子ばっかりだ。
「あのね、さっき私の裸を見てきれいって言ってくれたけど、わたしの体はきれいじゃないの。体しか見ない男がたくさん汚していったの」
「瀬奈さんの体はきれいですよ」
「あはは、ありがと……わたし、お姉さんを頑張ってるけど、身体しかないから、実は自信は、ないのよ」
瀬奈さんの声が震えている。うん、これ以上の言葉は不要だ。
「よっと」
「きゃっ」
振り返って瀬奈さんを抱き寄せて、バスタブのふちに腰掛ける。瀬奈さんを俺の腿に乗せてぎゅっと抱きしめる。
「お経には不垢不浄って言葉があるんです。汚れているとか清らかというのも因縁によるもので、汚れた実体や清らかな実体というものもないって意味なんですけど」
「ふくじょうし?」
「ふくふじょうです。きれいだとか汚れているだとかは観察者の主観であって本人を正確に表している言葉じゃないんですよ。主観はその人の人生を反映させているだけで、絶対じゃない。泥で汚れるって言葉も、スライディングして泥だらけの高校野球の男の子だったらかっこよくないですか? 農家が畑で土まみれだったらカッコ良くないですか?」
「……そうかも」
「俺から見た瀬奈さんはカッコいいんですよ。やりたいことをやってる。その背中を見た後輩が、あこがれてるじゃないですか」
「でも、それはわたしの汚れている部分を知らないから」
「人は完全じゃない。不完全で足りない部分があって、だからこそ惹かれるって面もあるんです。自信がないのは俺もですよ。こうしている俺は爆発寸前です」
俺のおちんちんが瀬奈さんのお尻を突っついてるんだぞ! いろいろ暴発するぞ!
「お尻におちんちん当ててる人が良いこと言ってる」
瀬奈さんの手が俺のおちんちんを優しく包んでさわさわする。やばい、もたんて。
「俺の煩悩はもう108じゃ足りません。瀬奈さんの体は魅力的ですが、俺が好きな瀬奈さんはそれだけじゃないですからね」
「わーい、好きって言ってもらえたぞー」
「自信がなくってもいいじゃないですか。周りには見せられなくても俺にだけ弱みを見せてくれればいいんですよ」
「……守くんがいい男過ぎてお姉さん濡れちゃう」
「そんないい男が今ならお買い得です」
「買った!」
瀬奈さんがウフフと笑う。
「おばさんになっておっぱいが垂れてもいい?」
「俺がおっさんになって嫌われるほうが早いかもです」
「ふふ、ありがと。でも、やっぱり絆は欲しいの」
ぎゅっと抱き着いてきた瀬奈さんが唇を重ねてきた。
いろいろ、すごかった。脱童貞した後に瀬奈さんが性欲ポーションを持ち出して口移しで飲まされてから記憶が怪しい。
気がついたら、俺も瀬奈さんもなんだかわからない液体まみれでべちょべちょだった。
時刻はすでに21時。
急いでタクシー捕まえて帰宅したら、母屋の入り口には京香さんと智ちゃんが待ち受けてた。ふたりとも心配そうな顔をしてる。
「わー、きょーかちゃーんだー」
瀬奈さんが京香さんに抱きついた。
「先輩、ずいぶんご機嫌ですね」
「たのしかったー。わたしのダメなとこぜーんぶ見せちゃったー」
「なるほど。それで使ったんですか?」
「うふふ、ばっちりー」
瀬奈さんがお腹をさする。
京香さん、睨まないでください。
「反省はしてるけど後悔はしてないよ」
「……そうですか」
「次はーきょーかちゃんのばんー」
「……頑張ります」
いや、頑張らないで楽しもうよ!




