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うちの寺の墓地にダンジョンができたので大変です  作者: 海水


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7.レベルアップ確認などいろいろ、あと温泉②

 その夜の隣家では、女子5人による大駄弁り大会が開催されていた。個室では集まれないのでリビングを片付けて布団を敷いて雑魚寝である。7月に入って暑くなったから可能だった。

 合宿のような空気に、佐倉、四街道、柏はワクワクを隠せない。


「今日はお疲れ様ねー。生きて帰ってこれてよかったわー」


 すでに缶ビールを数本空けている勝浦がしみじみと語る。女だけで油断しているので勝浦はキャミソールのみでオッパイがまろびでそうだ。


「本当。瀬奈先輩と柏は4回、私、佐倉、四街道は3回は死んでた」


 赤ら顔の小湊も続く。小湊もキャミソールに短パンと、油断しきっていた。


「アーシはパイセンを信じてた」

「ヨシヨシ、柏は頑張った、おいでギューだ」

「ウホッ、イクイクイク!」


 小湊にご褒美のぎゅーをもらった柏は白目をむいて布団に倒れた。


「えっと、槍が飛んできた時と、足軽集団が迫ってきたとき?」

「最初に4体の足軽亡者が襲ってきた時が1回目ねー」

「え、そこからですか!?」

「まじ!?」


 指を立てて数えていた佐倉に勝浦が訂正する。四街道も驚いている。


「だってー、あの距離を秒で駆けてくる相手にわたしたちは何も対応できなかったじゃなーい」

「あー、あたしもスキルを使うことすら考えられてないや」

「槍で刺されてすぐに死んでたわよー。守くんが対処してくれたけど」

「はー、おにーさんよく動けたよね」

「守くんは、ちょっと前にオーガスケルトンで死にかけてるからねー。死線をくぐったハンターは強いわよー」

「えぇぇぇ! おにーさん死にかけたの!?」


 佐倉もびっくりである。守はそんなことを吹聴しても意味はないと思っているので周りには語らない。小湊が「ポーションがドロップしたから助かった」というと「運も味方につけるとかチートの塊じゃん」とあきれる佐倉。


「オニーサン、マジチート」

「智の言った通りだったわね。チートすぎて反則だよ」

「でも魔法覚えてヤッタゼ!」

「それもチートよね。なんで貴重な魔法書をあれだけ持ってるんだか」

「あたしもチートが欲しい!」

「智のスキルも十分チートでしょ!」

「ソーダソーダ!」

「それについてはー、ちょっと注意がありまーす。あの場でいうと守くんが自責しちゃいそうだったから言わなかったけどー」


 守への文句で盛り上がる3JKに、勝浦が一言申し付ける。シュパっと姿勢を整える3人。


「あなたたちは、今回で、生き残るためとはいえ、魔法をふたつも覚えてしまいました。レベルも上がって、たぶんレベル5のスキルも覚えたでしょー?」

「覚えました!」

「シタッ!」

「あたしはレベル10で【祈り】の上級版を覚えました」


 3人は揃って挙手した。


「柏、四街道がレベル9。佐倉がレベル13」

「わー。佐倉もだけど柏と四街道もかー」


 小湊の鑑定に勝浦が天を仰ぐ。そして新しい缶ビールを開けてゴクゴクいった。


「ああああの先輩、まずい、ですか?」


 四街道が不安になって勝浦ににじり寄る。


「まずくないわよー。むしろこっちの不手際で迷惑をかけちゃうのよー」

「ドユコト?」

「……強すぎる、とか?」

「佐倉正解」

「わーい正解だ!ってそうなんですか? おにーさんに比べればかわいいもんだと思いますけど」

「守君は桁違いのチート。ダンジョン外のほうが輝くまである」

「無限収納なんて国を潰せるレベルだしねー」

「オニーサン、チートスギー」

「はいはいお静かにー」


 勝浦がパンパンと手をたたく。鎮まる3JK。教育が行き届いている。


「まだ学生なのに強くなってしまいましたー。なりすぎてしまって、卒業後にハンターになった際に、悪い奴らに目を付けられちゃう可能性ができちゃいましたー」


 勝浦の言葉に、柏と四街道はぎょっとする。


「あー。もしかしてあたしと同じ、ですか」

「そーねー。佐倉は墓地ダンジョンと相性が良すぎてすぐにレベルが上がっちゃったものねー」

「卒業前だけど、獄楽寺ダンジョンの専属ハンター契約を結ぶべき」

「ケイヤク!?」

「専属ハンター!?」


 佐倉は頷いているが柏と四街道は首をかしげている。


「佐倉も専属契約を結んでるけど、佐倉の場合は守君の交代要員という意味も含まれてる」

「24時間365日ずっとひとりで対応なんてできないのよー」

「パイセン、アーシとミナの場合は?」

「身の安全の確保。いくら強くても不意を打たれて攫われて手籠めにされる可能性がある」

「ドラッグアンドセックスねー」

「パイセン、アーシ、そんなのイヤー!」

「ヨシヨシ泣かない」

「そうならないために先に手を打つのよー。大多喜副ギルド長も巻き込まないとねー。ほらー、四街道も悲しそうな顔しないでー。ぎゅーしてあげるわよー」

「せんぱぁぁぁぃ!!」

「はいはい、わたしがついてるから大丈夫よー」

「ふわぁぁ、ましゅまろぉぉぉ!」


 3JKは、強くなった代償を思い知る夜になってしまったが、その対価には満足していた。


「じゃあ皆にスキルを発表してもらって、こみなっちゃんにその説明をしてもらいましょー」

「どんどんぱふぱふー」

「ということでいいだしっぺのわたしからー」

「え、勝浦先輩もスキルをゲットしたんですか?」

「マ?」

「すごーい!」

「そーなのよー。レベルが20になって【二重の極み】を覚えましたーいえーい!」

「「「おおーー!」」」

「小湊先生、説明をおねがーい」

「はい任されました小湊です。【二重の極み】は、対象に攻撃がヒットしたらもう1発分のダメージがはいるスキルです。一度で二度おいしいスキルです。簡単に言うと、ビンタ一回で往復ビンタのダメージ」

「「「おおーー!」」」

「ということで飲みまーす!」


 パチパチパチパチ。


「次は四街道。自身の理解を深めるためにもスキルの説明も」

「は、はい! わたしが覚えたのは【圧し切り】です!」

「おおーー」

「ツヨソウ!」

「えっと、圧し切りは防御無視したダメージを追加するスキルで、熟練度が増すとダメージも増えるっぽいです!」

「はいよくできました。熟練度が2になるとダメージが2倍。3になると3倍になる。防御が高い魔物にも有効な当たりスキル」

「スッゲ!」

「美奈子にもチートきたー!」

「頑張ります!」


 パチパチパチパチ。


「次は柏」

「イエスマム! アーシがゲットしたのは【隠密】スキル。気配を薄くして認識されにくくするってヤツ。こっそり小湊パイセンの着替えをノゾケルゾ!」

「こっそりしなくてと堂々と覗けばいい」

「やったぜパイセンダイスキ!」

「葉子はスナイパー方面に行くのかなぁ」

「アサシンかもよ?」

「背中からクロスボウでドスン?」

「クラスのむかつく男子のお尻に打ち込んでほしい」

「ヤルゼー!」


 パチパチパチパチ。


「あたしだね! あたしはレベル10で【大いなる祈り】を覚えたよ! 射程が2倍! 効果半径は3倍! 持続時間も3倍だよ!」

「トモッちスゲー!」

「アンデッド専用だけどね!」

「智、それでもすごいって」

「アンデッドは他のダンジョンでも出るからねー。割とハンターが苦戦するのがこいつらなのよー」

「勝浦先輩、そうなんですか?」

「ここは今のところスケルトンばっかりだけど、ゾンビとか相手だとやっぱり躊躇しちゃうからねー」

「人の面影が残ってる程やりにくい」

「あーたしかに。でも、あたしは成仏させるのであればむしろ積極的にやっちゃいますね」

「守くんも喜びそうねー」

「うわー。またチートチートうるさそう。アンタが一番チートじゃい!」

「ソレナ」

「ほんそれ」


 守への怨嗟で意気投合した。


「とりは私。実はレベルが上がって12になってた」

「おーーこみなっちゃんも上がったんだ! おめー!」

「パ・イ・セン! パ・イ・セン!」

「私は【速記】を覚えた。書くことが早くなると思っていたらパソコン入力も早くなってて驚いた。お化粧しながらでも書類作成ができちゃうブイ!」

「おおおおそれはすごぉぉぉい!」


 盛り上がるお姉さま方の脇でしんみりする3JK。


「お化粧かぁ……」

「ニガテ」

「あたし不器用でさぁー」


 高校生で化粧は当たり前になりつつあるがそれは都心の高校だ。進学校である市船はまだおとなしい学生がほとんどだった。


「おねーさん達がお化粧のやり方を教えちゃうわよー」

「基礎的なことは教える」

「勝浦せんぱぁぁぁい!」

「パイセン、神!」

「やったー、教えてもらえちゃう!」

「高校で化粧してるといろいろ言うくせに卒業したらすぐに化粧がデフォルトとかふざけんなーって感じよねー!」

「練習期間もない」

「ほんとそれよー!」


 おねーさまがたの愚痴には実感がこもっている。


「クラスの男子全員を振り向かせちゃうくらいには教えちゃうぞー」

「「「オス!!!」」」


 話はあちこちに飛んでは跳ねて、女子会は終わりが見えないのであった。

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