7.レベルアップ確認などいろいろ、あと温泉①
俺が目を覚ましたら見慣れた天井が目に入った。窓から差し込むのはオレンジの光。どうやら俺の部屋だ。そして何かに拘束されて動けない我が身にも気が付く。
俺の腕と胴体を抱き枕に、小湊先生と勝浦さんが寝ている。絶壁とぷにょぷにょが同時に堪能できる幸せ。至福じゃ。
「じゃねえって!」
掴まれている腕ごとふたりを持ち上げて跳ね起きる。しっかり抱っこちゃんされていてふたりとも落ちない。すごい。
「つかその恰好!」
ふたりともTシャツしか着てない。ピンクとフリフリの緑のパンツがこんにちはしてる。かく言う俺はパンイチだ。
「何が起きた……あ」
マッスルポーションは効果が切れると寝るんだった。で、俺は寝ちゃったのか。
「でもなんでふたりが?」
寝込みを襲うとか?
いや、いくらなんでもそれはないな。金目当てでいろいろしてきたけど、最後は引いてたし。
寝込みを襲うなら風呂に乱入の方がお手軽だ。
「おにーさん、起きた?」
とことこ足音がして佐倉ちゃんが戸から顔を覗かせた。
「うわ、裸じゃん!」
バタンと戸を閉められた。パンツは履いてたけどJKからすると裸なのかもしれない。
ともあれ、服を着ねば。
「ふたりとも朝ですよー」
「うーん、守くん起きたのー?」
「あと5分このままでー」
勝浦さんはむにゃっと目を開けたけど小湊先生は閉じたままむしろ抱きついてくる。
「起きない大人はビール抜きです」
「ビールよりは守くんかなー」
「ぬくぬく」
「ビールが効かないだと???」
そんなこんながあったけどふたりを引き剥がして着替えた。
「では、守くんの裁判をおこないまーす」
ちゃぶ台の前に正座させられてる俺。判事は勝浦さんと小湊先生のようだ。手にはピコピコハンマーを持っている。傍聴席には3JKと父さん。ちゃぶ台にはお菓子と茶。なお、俺の分はない。
「判決。守君は有罪」
ピコピコハンマーがちゃぶ台に落とされた。
「小湊先生、異議あり」
「異議は認めませーん」
「横暴だ!? って、いや本当になんの裁判です?」
「被告は胸に手を当ててよく考えて」
「そうよー。よーく考えてー?」
むむむ、何かしたかな。いや、何もしてないよな。あれか、昼ごはんの用意ができなかったことか?
「えっと、寝てしまったことはごめんなさい」
「守君は有罪2倍」
ピコピコハンマーがちゃぶ台に落とされた。
「ちょっと待って! なんで2倍なの!?」
「被告はわからないようですねー」
「罪が重くなる一方」
「はい、降参します」
万歳だ。わからんて。
「よろしい、私が説明する」
小湊先生がピコっとハンマーを鳴らした。
「まず、被告は帰ってきたら倒れました。慌てて呼吸を確認したところ、呼吸はありましたが、今度はどんどん体が冷えていきました。私小湊と瀬奈先輩が体温で温めました。被告は無事に目覚めましたが、すごく、すごく心配しました」
ピコピコピコピコピコピコ。
ハンマーを連打しながら小湊先生が説明していく。
「もう起きないのではと、心配しました」
小湊先生の目が潤んでいく。
「もちろん、彼女たちも心配して、着替えなどを手伝ってくれました。ありがとう」
水を向けられた3JKはこくこく頷く。でもパンツという最後の砦はさすがに突破できなかったわけだ。
「パンツは私と瀬奈先輩で着替えさせました」
「ふぁぁぁぁぁぁぁ!!」
なんですとぉぉぉぉ!
勝浦さんがふふっと微笑んでる。その笑みは「粗末だな」って思ってる顔だ!
小湊先生は無表情だけど耳が赤い。
見られた……それくらいじゃ落ち込まないけど、こっぱずかしー!
俺のちんちんを見ても顔色一つ変えない勝浦パイセン、すごく経験者なのかも。
「静粛に」
ピコピコピコピコピコピコ。
「被告、罪状がわかりましたね?」
「……多大なるご心配をおかけして申し訳ありません」
「違います。ほしいのは謝罪ではありません」
ピコピコ。
ハンマーが否定する。
違うのか。
「やはり、被告には厳罰が必要なようねー」
「判決。明日はみんなを温泉に連れていくこと。閉廷」
ピコピコ。
「やったー温泉だ!」
「イエーイ!」
「勝浦先輩と温泉……ぐふふ」
「ただし、課題は終わらせることとする」
「エー」
「えー」
「よし、さっさと終わらせてぐふふ」
俺に反論の機会はないようだ。父さんはどうするのかと顔を向ければ。
「ここのところ守は忙しかったろう。父さんは留守番しているから、遊んできなさい」
「「お義父さまありがとうございます」」
「ほっほっほ、おふたりもこちらに来て大変だったでしょう。羽を伸ばしてください」
父さんはふたりに「お義父さま」と呼ばれてまんざらでもない顔をしてる。くそ、外堀から埋めるつもりか。
でもまぁ、みんな嬉しそうだし、いいか。俺も楽しもう。




