34.後始末①
俺が日比谷ダンジョンを踏破してから、ネットは結構荒れたらしい。知らんけど。
配信のコメントだ。
――おいおいおい
――どうなんだ?
――インチキに決まってんだろw
――ひとりで踏破なんてムリゲーw
――現地ハンターだ、ダンジョンで魔物と戦ってたらダンジョンの外に追い出されたぜ
――まじか
――こいつは仕込みか?
――手回しがいいなw
――いま仲間と階段があったところを掘ってるんだけどよ、土ばっかだ
――写真くらい出してやるよ[写真]遠くにいるのが例のギルド長だ
――地震速報きたぞ、だいぶ遅いけどな
――東京日比谷を震源とした震度1ってこれか?
――日比谷のギルド長は例のギルド長にやられて伸びたままだザマア
――唐津もだざまあねえ
――唐津のガキはスキル使って襲い掛かって撃退された
――あのギルド長、手からブレスっぽいの出したぞ
――【速報】総務省が日比谷ダンジョン及びギルドを調査開始
――日比谷ギルド内での不正が認められたって、なんだそれ
――唐津関係だろ
――おい、獄楽寺の女子高生が職員のスカウトしてるぞ
――は?
――なんで?
――盗み聞きしたけど、日比谷ギルドはなくなるからうちに来ない?って
――火事場泥棒w
――獄楽寺ギルドの公式で配信してるぞ
――アイツ、椅子に座ってせんべい食ってるぞw
――ギルド職員が右往左往してて収集つかない感じ
――魔石の買取も止まってる
――日比谷ダンジョンがなくなったら俺はどこにきゃーいーんだよ!
――池袋
――神奈川にでも行け
――ハンターは移動すればいいだけだろw
――あー、だからあいつらがギルド職員に声かけてんのか
――池袋にいるけど職員が日比谷に向かったぞ
――20人くらいのハンターが武器もってあのギルド長に向かったけど全員倒れた
――なんだあれ、スキルか?
――お、カウンターに向かったぞ
――お前らみんな仕込みだろw
――現地民以外黙ってろ
――俺の目の前で起こってることがインチキなのか?
――インチキでダンジョンからおいだされたのか、俺は?
――文句あるなら日比谷に来いよ雑魚
あくまで俺たちが仕込んだイカサマってやつがいる反面、現地にいるハンターは困惑してる。まぁ悪いのは唐津とギルドだからね。文句はそっちに。
だけど、職員は理解できなくって可哀そうだ。カウンターにはマイクがあるはずだし、アナウンスするか。
てくてく歩いていくと、カウンターには呆然としてる女性がいた。
「あの、獄楽寺の坂場ってものなんだけど」
「はははははいっ!」
声を掛けたらビクビクってされちゃった。
「なにかアナウンスしたほうがいいと思うんだけど」
「あの、その、ギルド長ないし副ギルド長の許可が必要でして」
「あー、ギルド長は眠らせてるし、起こすとうるさいからなー。副ギルド長は?」
「今日は、その、休暇でして」
「あー、休暇という名のさぼりね」
この人が言い淀んだからそうだろうね。トップふたりがろくでもないのか。
「ダンジョンが無くなれば管理するためのギルドは必要なくなるし、ギルド長とか関係なくなるから。俺がアナウンスするからマイク貸してくれる?」
「は、はい」
女性はカウンターの下から小さなマイクを取り出した。
「あーあー。こちら獄楽寺ギルド長の坂場です。えー、そこのデブは眠らせたのでしばらく起きません。なので代わりに指示を出します。職員の皆さん、魔石の買取はしてください。金が足りないとか問題があれば費用はうちが持ちます」
俺がアナウンスすると待合場が静まった。職員も動きを止めて俺を見てる。智が俺のところに走ってきた。
「守、ちょっとマイク貸して!」
貸してと言いつつ奪われた。
智がマイクで叫んだ。
「職員の皆さん! 魔石買取の際は鑑定に沿って適正な価格で買い取りをしてください! 脅してくる奴は片っ端から張り倒してやるから!」
そういうことか。じゃあ俺も。
「えー、このギルドでは唐津組のハンターが職員を脅して買取金額を引き上げていたことがわかってます。そこらにいる唐津組のハンターは教育してあげるからかかってきなさい」
マイクをカウンターに戻して、金剛杖を取り出す。力いっぱい床に突きつけたらズボって穴が開いあちゃった。
「おぅおぅおぅ、でけー口叩きやがって!」
「おまえを倒せばいいだけじゃねーか」
指をバキベキ鳴らしながらヤカラハンターが歩いてくる。目が血走ってて正気じゃないな。
「死なない程度に躾けてあげるよ」
「死ねゴルァ!」
「はいっと」
剣を振りかぶってきたヤカラハンターの眉間を金剛杖でゴツンとついてやる。ハンターは白目をむいて床に崩れた。
ゴツンゴツンゴツン。10人くらい突っかかってきたから全員に教育を施した。
こっちのリーチが長すぎるから超らくちん。
俺に向かってくるハンターがいなくなった。唐津組はもういないのかな。合掌。
「はーい職員のみなさーん。暴力的なハンターが出たらこうやって懲らしめるので安心して買取業務を再開してくださーい」
カウンターに向かって叫ぶ。
「あんたのほうがよほど暴力的だろが」
背後でハンターが騒いだ。マッシブなハンターが俺を睨んでた。フィジカルでものを言わせる系かな。
「そりゃー売られた喧嘩は買いますよ。あなたも売りますか?」
金剛杖で床をカツンカツン言わせながらそいつに近づく。
「魔石はランクごとに買取金額は決まっています。ハンターが決めるものではありません。鑑定に文句があるなら他のダンジョンへ行けばいいんです。ハンターは特定のダンジョンに縛られないんですから。うちの墓地ダンジョンでもいいですよ? 強いハンターは大歓迎です」
マッシブハンターの目の前まで来た。
圧も感じないし、そこそこのレベルのハンターかな。あと、汗臭い。
「そんなことを言ってると、誰もあんたのダンジョンにいかないぞ?」
「うちは金もうけでダンジョン管理をしてないんですよ。できてしまったダンジョンが地域のご迷惑にならないように管理するのが目的ですので」
にっこりしてあげる。スマイルは0円です。




