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うちの寺の墓地にダンジョンができたので大変です  作者: 海水


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32.売られたケンカは買います(ニッコリ)②

「佐倉、気持ちはわかるけど、寺に帰った時に先輩たちと相談したほうがいいって!」

「そーだよ。おにーさんならもっとボッコボコにできるでしょ?」

「そ、そうそう。おにーさんと勝浦先輩と小湊先輩にも相談した方がいいよ!」


 足立に続き品川、渋谷、太田も止めに入った。3人だって守を馬鹿にされていい気分などしない。実際に守を見ているポニーとAチームは言いがかりだとわかっている。

 佐倉たちがカチこめば間違いなく日比谷高校を()()してしまうだろうが、それをやってしまうと警察沙汰になってしまう。そうしたら守は悲しむはずだ。

 ポニーの4人で、守をdisられて鬼になってしまった佐倉を止めるのに必死だった。

 

「佐倉。あなたは守さんに迷惑をかけたいのかしら?」

「あぁん?」


 黒髪美人の寄居が声を張り上げた。佐倉は切れ気味に返す。チンピラならちびりそうな迫力だ。


「あなたの身勝手な行動で、守さんが傷つくのよ? それでもあなたはやってしまうのかしら?」


 怖さに膝を震わせながら、寄居は佐倉に歩み寄る。

 怒り狂う佐倉はトラウマだが、ここで止めなければならない。大惨事になってしまう。

 寄居は逃げ出したい恐怖に懸命に抗っていた。


「大事な人を馬鹿にされてむかつくのはわかるけど、まずは守さんに相談しなさいな。それからでも遅くはないでしょう?」

「う……」


 寄居に諭され、だんだん沈静化していく佐倉。

 少し前までは守を馬鹿にする側だった寄居だが、上野に紹介してもらい、また敬愛する上野が世話になっているというものあって、佐倉の気持ちを理解したうえで壁になっているのだ。

 暴走した佐倉が本気になったら自分など殴られておしまい。下手すれば命も危うい。

 そんなことはわかっているが、放っておけない。


「むかつくのはわたくしも一緒だから、守さんと相談の上で殴り込みに行くならわたくしも誘ってちょうだい」

「……わかった」


 なんとか暴君(佐倉)を説得できた寄居は「はぁぁぁ」と長い溜息をついてしゃがみこんだ。説得できた達成感と殴られずに済んだ安堵で腰が抜けたのだ。


「ナイス寄居」

「佐倉にはわたくしの目を覚まさせていただいた借りがあるのよ。こんなものではまだ返済には足りないのだけれど、少しでも役に立てたなら僥倖だわ」


 品川に声を掛けられた寄居は引きつった笑顔で応えたのだった。





「まもるおにーちゃんばいばーい」

「ばいばーい」


 幼稚園バスに乗っていく園児がお帰りのあいさつをしてくれる。手を振って返すとほっこり癒される。

 バスが出発するけどエンジンの音はしない。電気バスに変わったのでひゅーんという宇宙船のような音がするだけだ。

 電気は魔石で発電するし、排気ガスも出ない。園児の親御さんからの評判もいい。


「さーて戻るかな」


 寺の幼稚園のお帰りの手伝いをして母屋に戻ったら瀬奈さんと京香さんに捕まった。ちゃぶだいに座らされ、会議とのことだ。零士くんもいて、おはぎをパクついてる。


「守君、これを」


 京香さんがノートパソコンの画面を見せてくる。そこには金髪のキモイおっさんとリーゼントのヤンキーが映ってる。 


「なんですかこれ」

「ハンターTVというネット番組。それなりに人気はある」

「へぇ、知らなかった」


 どうやら女性の司会がキモイおっさんとリーゼントのヤンキーに話を聞いているよう。


『ユニークスキルの中でもとびっきり特殊なスキルを持ってる俺ならいざ知らずぅ、ぽっと出のガキがドロップ品をバカスカ納品してハンターの売り上げ1位はおかしいんですよぉ』

『なるほどなるほど』

『俺としちゃぁ、不正は見逃せないんでぇ、白黒はっきりさせなきゃと思ってるんですよぉ』

『わぁ! 正義の発言ですね』

『だからよぉ、日比谷ダンジョンでドロップ品で勝負して、化けの皮をはがしてやろうかと思ってなぁ』

『うんうん、それは公正ですねぇ』

『で、挑戦状を送り付けたんですよぉ。不正じゃないなら出てこいってぇ』


 画面の中の中年がニチャァと笑ったので無意識に「キモっ」って言っちゃった。


「なんですかこれ」


 同じセリフで京香さんに聞くと無表情で答えてくれる。


「うちへの誹謗中傷」

「このおっさんは?」

「ユニークスキルを持ったハンター。【盗人】というスキルで魔物からドロップ品を盗める」

「へー。そんなスキルもあるんですね」


 スキルも色々あるなぁ。


「それでー、いままでは自分が一番稼いでたのに守くんにぶっちぎりで抜かれたから文句言ってるっぽいのよねー」

「そんなことで?」

「守くんの売上額って、こいつとは桁が違ってるのよねー。あいつらは1日平均で300万だってー。守くんは1日で数千万だもんねー」

「あー、そんなことありえねーって思ってるわけか」


 どうでもいいじゃん、そんなこと。

 ハンターの役に立つアイテムが広がれば、ケガや亡くなるハンターも減るんだし。万々歳じゃん。


「問題はこの後でねー」


 瀬奈さんがマウスをいじって早送りする。


『それとねぇ、今のハンターランクでもあそこに関係してる学生がおかしいなぁって思っていてぇ』

『おっと、それは現在ランク1位の佐倉智美のことでしょうか?』

『それと2位と3位もおかしいですよぉ』

『そうだぜ! 努力してる俺がレベル7なのにもうレベルが16だとか24だとか、おかしすぎるぜ!』


 中年と女性の会話にツッパリが割り込んできた。

 俺も新人でレベル24なんだけど? それはいいの?


『彼女らも不正だと?』

『うちの鑑定持ちが見たわけじゃないんでぇ、何とも言えませんがねぇ』

『不正だった場合、大問題ですよ!』

『彼女たちの今後がぁ、心配ですよねぇ』

『ユニークスキルを持ってる俺の彼女枠なら空いてるぜ。3人まとめて嫁にしてやるよ』


 ほぅほぅ。こいつは閻魔様の前に引っ立てないといけないなぁ。

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