30.秋のハンター祭り 閉会
『優勝は、四街道選手!』
『圧倒的な強さでした!!』
「「「すげぇぇえ!」」」
「「おめでとー!」」
観客からは割れんばかりに拍手だ。美奈子ちゃんが手を挙げて応えると拍手は一層激しくなる。
出場したほかの6人も会場へ歩いていく。
「やったね美奈」
「負けたら師匠に怒られちゃうから」
智と美奈子ちゃんがハイタッチする。
『選手の皆さん、整列してください!』
『表彰式に移ります!』
校長と冠のようなものを持った生徒が会場へ向かう。8人は横一列になった。
『『第7回闘技大会優勝。四街道美奈子!』』
美奈子ちゃんが校長の前に行く。
「素晴らしい試合でした。卒業してハンターとしての活躍を期待してます。おめでとう」
校長が金メッキっぽい月桂冠を美奈子ちゃんの頭に載せた。ニッコリ笑顔の美奈子ちゃん。
『『おめでとうございます!』』
「「「おめでとー!」」」
「さいこーだった!」
『『準優勝、寄居美里!』』
「未来は己の拳で切り開く。素晴らしい心構えで感動しました」
「精進いたしますわ」
寄居ちゃんには銀色の月桂冠だ。
『閉会式を行います!』
『3年生は会場へ集合してください!』
アナウンスで集合がかかる。入場行進とかもないのがハンターっぽくもある。軍隊じゃねーんだぜって感じで。
『小金井さん、今年はすごかったですねー』
『その通りですね馬橋さん! パンチングマシーン破壊に始まり』
『棒倒しでは男子生徒を投げ』
『射撃では全的命中がふたりも出ました!』
『点数も77点と、今後10年は抜かれないだろう大記録!』
『極めつけは闘技大会!』
『入場時こそコスプレ大会かと思われましたが!』
『強いからこそのあの衣装!』
『第一試合の公開告白に始まり!』
『超高校生級の第二試合!』
『剣と拳の意地のぶつかりがあり!』
『白熱した試合ばかりでした!』
『みなさんも楽しまれたのではないでしょうか!』
『私たちも実況ができて、本当にうれしいです!』
『卒業後も自慢してやるぞ!』
『『いぇぇぇい!!』』
実況のふたりが競技を振り返っている間に生徒が並び終えた。
『校長先生から締めのお言葉をいただきたいと思います!』
校長の話が始まる。
「本日は無事に終えることができ、安心しています」
ケガはポーションで治したからね。ポーションがなかったら結構やばかったでしょ。
強くなった弊害だ。
「スキルの新しい使い方など、今回は今までで一番のハンター祭りだったと感じています。卒業して正式にハンターとなった後も、この向上心を持ち続けてください!」
良さそうなことを言って校長のあいさつが終わった。
『これにて第7回ハンター祭りを終わります!』
『足を運んでくださった観客の皆様、ありがとうございました!』
『3年生は見送りがあります。校門に集合してください』
『在校生は片づけをお願いします!』
アナウンスの指示で生徒がバラバラ動いていく。実況のふたりも疲れているけどやり切った顔だ。
「ふたりともお疲れ様」
実況を頑張った馬橋ちゃんと小金井ちゃんに持ってきたお茶とおやつを渡して来賓席に戻る。サプライズだったけど楽しかった。
来賓席にはまだ大多喜さんも足利さんいる。足利さんは隣にいる女性と何やら内緒話をしてるけど。
「ギルド長。客席に配置したギルド職員からも【羅刹】【裁き】【白鶴】の確認が取れました。間違いないです」
「【羅刹】はたまに聞きますが【裁き】と【白鶴】は初耳ですねぇ。市川の新作でしょうか。そもそも【羅刹】はあの【剣鬼】長篠の愛刀なはず。そんな刀を使っている彼女たちは……ふふ、楽しみが増えそうです」
油断も隙もねえ。
校門には3年生が見送りで集合してる。美奈子ちゃんと智はセーラー服とメイド服のまま。クロスボウを担いだ葉子ちゃんもいる。
その様子すらも中継されていた。
「ありがとうございましたー」
美奈子ちゃんと智にはスマホが向けられてる。SNSに上がったりするんだろうなぁ。
来客を見送る智のもとにカエデちゃんとケイタ君が来た。ケイタくんは興奮してるのか顔が真っ赤だ。
「佐倉さん、すごかったです!」
「佐倉ねーちゃん、すごい人だったんだな」
ケイタ君の目がキラキラしてる。
「あはは、ありがとー。圭太君も頑張ってね!」
「ははははい!」
「楓ちゃんもガンバ!」
「はい!」
智に応援されて緊張するケイタ君は微笑ましい。ちょっと前までは智もそっち側だったんだよなと思うと感慨深い。智も変われてよかったよ。
「先輩! 一緒に写真撮ってもらえませんか!」
美奈子ちゃんが後輩の女の子に囲まれている。かつて自分が瀬奈さんにやったようなことをされる側になっていた。
「おっけー!」
「やったぁぁ!」
満面の笑顔の後輩たちだが、何人の性癖を歪めてしまったのだろうか。美奈子ちゃんに憧れる後輩が増えそうだ。
ちょっと離れたところでは千葉君と品川ちゃんがそれぞれのお母さんに捕まってる。
「うちの武志がすみません」
「いえいえ、武志くんは夜遅くだからって八重を家まで送ってくれてて、頼もしい限りでしたよ」
「八重ちゃん、こんなんでもよろしくね?」
母親同士の会話がなされていた。うまくやってくださいな。
「父さん、帰ろうか」
「うむ、すごいものを見たな」
「あの力を悪いことに使わないように気を付けないとね」
「そうだな」
導く、なんてガキの俺には過ぎたることかもだけど、瀬奈さんたちと一緒に彼らをうまーく誘導していこう。そう思わされた祭りだった。




