30.秋のハンター祭り 午後の部 第三、第四試合
短いです
『さぁ興奮が冷めやみませんが、次の試合です!』
『市原選手、寄居選手、会場へ移動して下さい!』
『改めて両選手の紹介です!』
『市原選手ですが、千葉選手と同じAチームで活動しています! 身体が締まった長身で普通科なら運動系の部活でモテモテでしょう!』
『バスケとかバレーボールとか、サッカーもいいですねえ!』
『残念ながら彼女がいるらしいです』
『残念!』
『寄居選手ですが、3人組のアイアンフィストで活動しており、今回唯一の徒手です! レベルは6!』
『寄居選手はあの【アイアンビューティ】に弟子入りしたという情報があります!』
『裏情報ですが、小学生の時からの強火ファンだそうです!』
『わたしの兄もファンなのですが、目当てはあのオッパイだとか! 我が兄ながらまったく男ってやつは……』
『そんなことを言ってるから彼氏ができないんですよねー』
『うっさい!』
『彼氏といえば、寄居選手には先輩ハンターの彼氏がいたらしいですが別れたとの噂が』
『彼女を狙うなら今かもしれません!』
『さぁ、両者とも準備ができたようです!』
気迫ある目でガツンとガントレットを打ち合わせる寄居ちゃん。気合がこっちまで伝わってくる。
「寄居は鉄拳か」
「お姉さま直伝の鉄拳よ? 味わいなさい」
『始めてください!』
合図と同時に両手を広げ、プロレスのように構える寄居ちゃんに対して市原君は正眼の構えだ。どちらも動かず、10秒ほど経つ。
「いくぞ! うらぁl!」
待ちきれなくなったのか、気合と共に間合いを詰めた市原くんはその勢いのまま剣を振り下ろす。
「踏み込みが甘いですわ!」
寄居ちゃんが横から剣の腹を拳で殴ると、市原君がバランスを崩す。
「クッ!」
「がら空きですわよ!」
寄居ちゃんの鉄拳が市原君の腹に決まり、5メートルほど後方へ飛ばされる。ゴロゴロ転がされ仰向けに倒れた。
「ガハッ! くそ、これくらいで!」
市原君が剣を支えにして立ち上がるけど膝が笑ってる。
「一発で沈まなかったのは褒めてあげますわ!」
寄居ちゃんは容赦なく次も腹パンで市原君を殴り飛ばした。
「うぐ! これくらいで!……ダメだ!」
市原君は立ち上がろうとしたけど足が震えて転んでしまった。
「こ、降参だ」
寝ころんだままの市原君が剣を捨てて両手を上げた。寄居ちゃんが力強く右腕を突き上げる。
「お姉さまやりましたわ!」
『決着です! 勝者は寄居選手!』
『剣に拳が勝ちました!!』
「ぐ……だめか」
市原君が立ち上がろうとするけどまだ無理な様子。転んでまた地面に大の字になってる。
「すまん。動けねえ」
「修行が足りませんわよ?」
勝者たる寄居ちゃんが市原君を肩に担いだ。
「「「「「おおお!!」」」」」
会場が沸騰した。市原君は大柄なのでインパクトは強い。
「言ってくれるなぁ」
「私如きにこうなってるのが証拠ですわ」
「言葉もねぇ」
寄居ちゃんはそのまま待機場まで市原君を担いで、そこで降ろした。待っていた救護班がポーションを渡す。これで大丈夫でしょ。
第四試合
『さぁ次の試合で1回戦が終わります!』
『足立選手、成田選手、会場へ移動して下さい!』
『改めて両選手の紹介です!』
『足立選手ですが、1試合目に出場した品川選手と同じポニーに所属しておりまして、勝浦ダンジョンでのスタンピードの際も最前線でクラスメイトを守っていました!』
『男気溢れるポニテ姐御です! カッコイイ!』
『彼氏は募集中とのことです!』
『成田選手ですが、クラス委員長として出場したと聞いております!』
『今回で一番まともな試合かもしれません!』
ヒドい言い方だけど、言いたくもなるか。成田君自体は強いわけでもなさそうだし。
『両者が会場で相対します!』
「委員長だからって手加減はしないよ」
「頑張ります」
『始めてください!』
合図と同時に足立ちゃんがダッシュして斬りかかる。成田君は反応できたけど受けるのでいっぱいいっぱいだ。たたらを踏んで何とか耐えた感じ。
「へぇ、良く受けたね!」
「い、委員長としての、根性です!」
その後も足立ちゃんが攻め続ける展開で、頑張って凌いでいた成田君だったけど剣が弾かれてしまった。
成田君が両手を挙げた。
「降参です」
足立ちゃんが剣を天に突き上げたけど不完全燃焼な顔してる。
成田君については、レベルの差もあるけど力が勝ててない感じ。うーん、男子は鍛えた方が良いなぁ。でも余計なおせっかいか。
零士君もこんな気持ちだったのかも。
『決着です!』
『勝者、足立選手!』
「「「おお!!」」」
「地味だったな」
「これが普通だって!」
「去年はこんな感じだったぜ!」
残念そうな声がちらほら聞こえる。うちの子たちがおかしいだけだからね。




