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うちの寺の墓地にダンジョンができたので大変です  作者: 海水


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30.秋のハンター祭り 午前の部③ 綱引き&棒倒し

 次は綱引きだ。会場には三又のぶっとい綱が用意されてる。有名神社のしめ縄級だぞ。


『ハンターコースの生徒は27名で割り切れませんので3チームに分け、同時に行います!』

「そんな綱引きってあり?」


 奇数で割り切れないのはわかるけどさ!


『綱の予備がないので苦肉の策です!』


 まじか。切れるの前提なの?


『さぁ準備ができたようです。それぞれの綱に選手がつきます』


 誰がどこにいるかを見れば、智、美奈子ちゃん、葉子ちゃんはバラバラになってる。このチーム分けがほかの競技でも適用されるんだとか。智がA,美奈子ちゃんがB,葉子ちゃんがCチームだ。


『用意!』


 パンとピストルが鳴れば一斉に綱を引く。脇に抱える太さの綱がメキメキと悲鳴を上げる。


「おらー、ヒケー!」


 葉子ちゃんがいるチームが勢いよく綱を引いていく。目を凝らしてみると、葉子ちゃんがこっそり何かを投げてる。葉子ちゃんが何かを投げると相手チームの誰かが足を滑らせて転ぶ。

 やってるなぁ。コレもスキルを使った作戦か。


『Cチームの勝利!』

「ヨッシャー!」


 3戦したけどすべて葉子ちゃんがいるチームが勝った。ピョコピョコ跳ねてる葉子ちゃんは可愛らしいけど結構腹グロかもしれない。


『次の競技③番は全員参加の棒倒しです。このチームのまま競技に入ります!』


 会場では綱が引き上げられ、その代わりに障害物で使用された太い丸太が3本用意された。それぞれのチームに1本配られ、地面に建てられる。これを守り切れば勝ちな競技だ。


『棒倒しは、敵チームの棒を倒せば勝ちです! 3チームいますから、頭脳が必要となっております!!』


 それぞれのチームが棒の前に立つ守備役、相手の棒に突撃する攻撃役に分かれる。智と美奈子ちゃんは攻撃役にいたけど葉子ちゃんは守備役だ。

 また何かやりそうだな。


『どうやら準備ができたようです!』


 アナウンスで攻撃役が前に出る。智の前には美奈子ちゃんがいる。智を止められそうなのは美奈子ちゃんしかいないもんな。


『用意!』


 パンとピストルが鳴ると智と美奈子ちゃんが同時に走り、お互いの手を合わせる手四の格好になった。


「んぐぐ、美奈どきなさいよ!」

「智をフリーにしたら誰も止められないのよ!」


 智と美奈子ちゃんの力比べが始まった。智のマークは美奈子ちゃんの役目らしい。

 同じことがそこかしこで起きている。


「おおおあの巨乳の子、すげえぞ!」

「パンチングマシーンクラッシャーと張り合ってるぜ!」


 智がおかしな名前で呼ばれてる。それは勘弁だけど。

 智と美奈子ちゃんがバチバチやってる頃、やはり葉子ちゃんが動いてた。


「成田イクゾ!」

「お手柔らかに頼みますよ!」


 葉子ちゃんが男子生徒の成田くんの両脇に手を入れ持ち上げてた。


「行ってコイ! 【()()】!!」

「うわぁぁぁ!」


 葉子ちゃんに投擲された成田くんは、弓なりの軌道で智チームの棒に激突、そのまま押し倒した。


「えええぇぇぇ!!」

「は? 人を投げた?」

「それってあり?」


 観客はどよめきまくってる。

 ワカル。葉子ちゃんを知ってる俺でも困惑してる。


「次イクゾ!」

「柏、ほんとにやるのかよ!」

「勝つんダヨ!」


 次弾と思われる男子生徒を同じように持ち上げた葉子ちゃんは、躊躇なく投擲した。


「ず、ずれてる、落ちるぅぅ!!」


 投げたものの目標である棒からは外れてしまい、弾の男子生徒が絶叫してる。そのままなら地面にごっつんこだ。


「うううう、マガレ!」

「ぎゃあぁぁ!」


 葉子ちゃんが叫ぶと男子生徒は急に方向転換して棒に激突。勢いと重さで押し倒した。


「ヨッシャ、勝ったゼェェ!!」

「か、勝った?」

「勝ちで、いいんだよな?」


 葉子ちゃんが勝利の雄たけびを上げると、チームの生徒も腕を突き上げるも顔は困惑一色だ。観客も唖然としている。


『えええっと、こんな時はどうすれば……あ、来賓席のギルド長の皆さん! これはどう解釈すればよいでしょうか?』


 アナウンスが判断を放り投げた。


「アーシは自分の【投擲】スキルを使っただけダゾ!」


 葉子ちゃんがそう声を上げる。彼女なりの戦術なのだ。


『おっと大多喜ギルド長が頭を抱えてます!』


 俺の横で大多喜さんが比喩ではなく頭を抱えてる。


「アタシもギルドの人間としてそれなりにやってきたけどさ、人間を()()したのは初めて見たよ」

「投擲の概念がひっくり返りそうですねぇ」


 足利さんも困惑を隠せないでいる。


『えっと、どうしましょう……』

「よし、あんたたち、出な」


 大多喜さんは俺と足利さんの腕をつかむと来賓席からでてアナウンスの女生徒の場所に連行していく。さらし者だよこれじゃ。

 ついたところでマイクを渡される。


「あの子はアンタんとこで育てた子だろ?」

「……大多喜さんいきなりですね。確かにそうですが」

「アンタんとこが常識をぶち壊したのは何度目なんだい?」

「そんなに壊してますかー?」


 身に覚えがありませんが?

 なんでそんなに渋い顔をするんですか大多喜さん。


「まぁまぁ落ち着きましょう。そもそもこの棒倒しのルールはどうなっているのですか?」


 足利さんが仲裁に入った。


『えーと、ルールは、特にありません!』

「ルールがないのであれば、自身のスキルを使用しただけなので、問題ないと思いますよ」

『えっと、お二方は……』

「問題なし」

「それなら、問題なしだねぇ」


 俺も大多喜さんもオッケーを出した。


『審議がありましたが、有効といたします! よって、Cチームの勝利です!!』

「イェーイ!」


 またもピョコピョコ飛び跳ねる葉子ちゃん。何があったんかわからない顔の智と美奈子ちゃんだけど足立ちゃんに説明されてポカーンと口を開けてた。


 【トリックスター】


 今後そう呼ばれるようになる葉子ちゃんの第一歩だった。

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