24.ハンターコースでアピール①
ハンター祭りまで2週間となったある日。智の学校に召集された。午後の最後の授業で説明せよと。
現地にいるのは勝浦ギルドのギルド長の足利さんと船橋ギルドの大多喜さんと俺と京香さんだ。俺だけだと不安なのでついてきてもらった。ちなみに今日もメイド服である。
担任の先生とともに教壇付近にいる。各ギルド長がいるからか、教室も騒がしい。
「小湊先輩だ」
「辛辣メイドさんだ」
「踏まれたい」
違ったようだ。
「おら静かにしろー。始めるぞ。今日は卒業後にハンターとして活動するにあたって、県内のギルドから話を聞くことになった」
担任が説明すると、「卒業後かー」「ハンターやればいーんじゃないの?」なんて声が聞こえる。
「今年のハンター祭りはネットで中継されることになったからなー。お前らの様子が全国に流れることになるぞー」
「「「はぁ?」」」
「「マジ?」」
どよめく教室。さすがの智もびっくりして俺を見てきた。俺も初耳なんだけど。
「京香さんこんな話って聞いてた?」
「初めて聞きました」
「智とか美奈子ちゃんの強さがばれちゃうけどいいのかなぁ」
「そこは守君が保護すれば何とか」
「やっぱそうなるよねー」
頑張るしかないか。何を頑張るんだって話だけどさ。
「当ハンターコースは専門に学ぶだけあって例年優秀なハンターを輩出していると評価されているが今年は別格だ。勝浦遠征時のスタンピードを戦い切り、全員が生き残った。もちろん勝浦ギルドのハンターたちによって鎮圧されたが、血路を開いたのはクラスのみなだ。この事件は全国のギルドで共有されており、お前たちは全国的に注目されている生徒になっている」
担任がことの説明すると「俺たち有名人!?」「モテモテ!?」と黄色い声も上がる。
「だが、世の中そんなに甘くないぞー。優しい顔した悪い奴が寄ってくるからな。だからこそ、自分の身の振り方をよーく考えるよーに! ということで、今日は卒業したてのお前たちがすぐにお世話になる可能性が高いギルドのギルド長においでいただいてるわけだ」
なるほど理解した。
「では足利ギルド長からお願いします」
担任に促され、自己紹介という名のアピールタイムだ。
「こんにちは、勝浦ギルドの足利です。遠征の時以来ですね。先の件がトラウマになってしまっているかと心配しましたがみなさん元気そうでほっとしています。遠征の時に来てもらったのでダンジョンの様子はわかると思いますが、うちは海辺のダンジョンです。ドロップ品もほかのダンジョンに比べれば多いと思います。ポーションなどの備蓄もありますしギルド経営のハンター向け宿泊施設もありますので、安心していただけると考えております」
サクッとしてるけど説明が終わりまばらな拍手が起きる。
「質問はあるかー。一般的な質問でもいいぞ。この機会に聞いておけー」
「はい!」
「成田はやいな。さすが学級委員長だ」
「魔石の買取というのは、基本そのダンジョンのギルドという規定がありますがやっぱりそうなんですか?」
「ということですが足利ギルド長」
担任に水を向けられ、小さく咳払いした足利ギルド長が返答する。
「規定としては魔物を倒したことで得た魔石はそこのギルドで買い取ることになっております。これは、まぁこちらの都合ではあるのですが、魔石の数量や買取金額はギルドの成績になるのです。魔石=倒した魔物の数と言えますのでね。さらに俗なことを言ってしまえば、その魔石の量でギルド職員の給料も変化します。よって、ダンジョンで得た魔石はそこのギルドで売ってほしいですね」
「ありがとうございます。でもそれって、ほかのダンジョンから魔石を持ち込んじゃうことも可能ですよね?」
「うん、その通りです。過去には実際にそれをやってしまったギルドもあったんですよ。ずっと変わらなかった売り上げが急に増えたギルドがありましてね。おかしいということで査察が入って、鑑定スキルで魔石の種類を調べたらそのダンジョンでは出現しないはずの魔物の魔石が大量に混ざっていたという事件もありました。ギルド内部を調べられて、それを企んだ職員が逮捕されて、確かまだ刑務所で服役しているはずですね」
「横から悪いね。船橋の大多喜さ。ちょっと前にうちでも犯罪行為があってね。ひっ捕まえて監獄にぶち込んだけど、軽くても懲役15年さ。あんたたちはそんな馬鹿なことに手を染めるんじゃないよ?」
大多喜さんが強く言うからか、教室の空気が固くなった。
でもそれって、うちからのポーションとかはまずかったんじゃないの?
「守君、ドロップ品についてはそのような縛りはありません」
「ギリギリセーフってとこ?」
「ギルドの査定は魔石の売り上げで行うのと、ドロップ品はどこで売ろうともギルドに不利益がないので」
「ポーションなんかは自分らで使っちまうから売りに出せるほどのハンターもいないのさ。大量のポーションを売るなんてアンタんとこくらいなもんさ」
おっと、こっちにも大多喜さんが入ってきた。今日はお菓子を食べないんですね。
「このように、悪い奴らはどこからでも寄ってくるからな。慎重に行動しろよ。ほかにはあるかー?」
誰の手も上がらないので大多喜さんの番になった。
「船橋の大多喜だよ。うちは、一番近いからダンジョンの様子はわかってると思う。今回は、ギルド職員の募集をしたい。コイツに優秀なふたりを取られちまって困ってるのさ」
大多喜さんににらまれた。
「そこにいる小湊もそうだけど、ハンターになったからといって必ずしも戦闘向けのスキルを得られるわけじゃない。事務系のスキルだってある。それが役に立つのがギルドさ。休日に仲の良いハンターに混ざってダンジョンに入ってコツコツレベルを上げていくこともできる。精神的な疲労やけがでハンターが辛いと感じたらアタシに相談しておくれ。足利とかコイツでもいい。コイツのとこの小湊や勝浦のようにハンターをやめて職員になったっていいんだ。ハンターとして学んだことは無駄になりゃしないさ。あんたたちが生きていく時間は長いんだ。はやまるんじゃないよ」
大多喜さんが熱く語る。大多喜さんて面倒見がいいというか姉御肌だな。先生だったらいい先生になってたんじゃないかな。
「うんうん、うちにも軽い気持ちで相談に来てください。安易に悪い道へ行かないでほしい。取り返しのつかないことになってしまう。それは我々ギルド職員の共通認識です」
足利さんも続いた。道を踏み外してしまうハンターも多いんだろう。
レベルが上がって身体能力が上がると普通の人よりも優位だと勘違いして、気が緩むんだろうなぁ。
俺も気を付けないと。
「では最後に、最近できたばかりなのにやたら有名になってる獄楽寺ギルドだ」
なんともな紹介のされ方だ。まあいいか。




