「波と【カイジョ】と魔法少女!?」
頑張って主婦をやってる一美さん。今日はノアさんと海にやって来たのですが……
(……おっ!? だ、大学生……かな?)
(すっ、すげぇ……ッ!! う、海に来てよかった、俺……!!)
(……ママァ!! おねえさんのおっぱい、ママよりおっきいよ!!)
(……マナブちゃん、今夜は宿題終わるまで、花火は無しよ……?)
私とノアさんの二人で海辺へとやって来ましたが……周囲の声がさざ波みたいに広がっていきます……ひいぃ!!
(……あの、ノアさん……豆腐メンタルな私には厳しいですぅ!!)
(なーに言ってるのよ!! カズちゃんは十分に大人の魅力がある証拠よ? 非日常を楽しむ位平気にならなきゃ!!)
私達の向かった海岸は、宿から防砂林の松林を越えた先。典型的なやや黒めの砂浜が広がるフツーの海岸だったけど……そこそこにヒトが居るから、地元民以外にも名の知れた海辺なのかも知れないみたい。
でも!! 周囲の男性陣からの視線がモロ突き刺さります!!
……アラサー女子なんですよ? こー見えても……。
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「はぁ……サングラスが二重の意味で、こんなに役立つ日が来るなんて……主婦やってると、ホント世間から離れて生きてるって実感しちゃいますよぅ……」
「よく言うわね……ほーりぃ☆パルすいーつ様ともあろう方が、弱気なんだから……」
ノアさんは颯爽と砂浜の一角に借りたビーチチェアーとパラソルを設置しながら、きっちりカッチリてきぱき手際よく、マイポジションを確保して寝そべってますよ……勿論、サングラスしたまま……。
「……だって、昨日まで普通にテレビ見ながら、ヨシオさんの帰りを待つ生活だったんですよ? 時々、ウニょんが来る時以外は……」
「あー、ウニょんね……私の場合は現れたのが【じゃむキャット】だったから、それで変身した姿が決まったけど、カズちゃんは関係ない格好を選んだ訳なのね?」
「あっ、当たり前です!! あんな恥ずかしい被り物して『ほーりぃ☆パルウニょん参上!!』……なんて死んでもやりませんから!!」
傍らの小さなテーブルからペットボトルを手に取り、ストローでジャスミンティーを飲んでから、私はため息と一緒に言葉を紡ぎます……
「……はぁ……ヨーチューブに画像をアップするまでは、ただ訳の判んないまんま【カイジン】と戦う事になって……一応知ってる知識の中から『武器』が選べるって判ってたから……銃で戦うなら、いーかなーぁ? みたいな感じで始めて……」
「えっ!? あ、あのド派手な銃って、カズちゃんの知ってる武器を形にして産み出されてたの!?」
「……そーですが、変ですか? ……ウチの父親が兵器オタクだったから、ディアゴチュティーニの【世界の武器全集】みたいな本が沢山有って……小さな頃から『AKはコピー品の方が数が多い』とか『64式の照準は勝手に倒れて使い辛い』みたいな事を散々吹き込まれて育ちましたから……」
「……そりゃあ、魔法少女になっても銃で戦うよーになっちゃうわね……」
そう言いながらノアさんは、う~んっ、て伸びをしつつ、ばいんとお胸を弾ませてから、サングラスを直して……
「……さて、と! ……ねぇ、カズちゃん……」
……ぐいっ、と身体を寄せて来て、ンフフ♪ って感じで笑いながら……、
「……お昼、何処で何食べる?」
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「ふおおぉっ!! 【海の家】ですッ!!」
「そうね、確かに【海の家】ですわね~♪」
私とノアさんは、歩いて直ぐの《海の薫る野郎共が集う家》とババン! って銘打たれたおっきな看板を尻目に入り口を潜りました。略して海の家……いやいやいやいや、そーゆーもんじゃないでしょっ!? 海の薫るって、磯臭いの!? せめて【海の薫りに包まれた野郎共が集う家】とかにしたほーがよくない?
「……でも、ラーメン一杯350円って……本当なのかな?」
「あっ!! イカ焼き一本150円……スーパーより安い!?」
でも、二人で店内にズラッと貼り並んだお品書きを眺めると……一つ一つの値段がやたらに安い!! ……主婦の悲しいサガよね……ついつい店頭販売価格と比較しちゃうのよ……あ、サザエつぼ焼き150円?
「おじさーん!! 一個ちょーだい!!」
「あいよーッ♪ ……ちょっと待っててね、今殻から身を出すから……よっ!」
威勢良く返事したおじちゃんが、目の前の水槽に沈んでた、おっきなサザエにがしゅっ、と貝剥きを差し込んで、身とワタを切り離してからダシ汁をちょんちょん滴して、火鉢の上に載せました。
「……おじさん、サザエおっきいですね……」
「あー、ここらはイイ海草が沢山生えっかんね、サザエもデカくならぁね!」
「おじさーん! この【海丼】って何が入ってるんですか?」
「ん? あー、今日のドンブリは何が入ったっけ?」
(……ウニー、カサゴとー、あとアジと何かだねー!)
入口そばの屋台側から、店内の厨房におじさんが声をかけると、若いアルバイト女性の声が返ってきて……何かって、なんだろ?
「はいよっ!! ヤケドしないよーに気をつけてぇな!!」
「ありがとっ♪ あ、ビール二本お願いします!」
(はーい!! ビンで? カンで?)
そう声が返ってきて、すたすたと奥からやって来たショートカットの日焼け女子がレジ脇の冷蔵ケースから、銀色のラベルが眩しいビールを差し出して、
「……えっと、カンは300円、ビンは400円です……これだけはウチで作れないから、高くてゴメンね……?」
……どーやら私達の《安いっ!!》発言を気にしてたみたいで……赤いTシャツの端っこを揉み揉みといじりながら、上目遣い……いやいや、別にあなたは悪くないよ!?
「えっ!? や……そーゆー意味じゃないから!! か、カンでお願いします!!」
「ありがとうございますっ!! ガンガン飲んでくださいね!!」
「いや、それは流石に……ねぇ、あなたはこちらのアルバイトさん?」
私がビールを手渡すと、ノアさんは早速ベンチに腰掛けて、女子力高めのネイルを気にしつつプルトップを引き上げて、サラリと自然に質問します。
「あー、ワタシはお手伝いですよ? 此処は代々、ウチの番屋の跡地に在る海の家ですからね~。一応、修行みたいな感じでやってる……かなぁ?」
「ハツミはうちの二番目の孫だからよ~、そのうち嫁に行くだろーけんどよ、今はこーして手伝いしてくれっけんね! ありがてぇ~よ!」
横からおじさん(……孫!? 若いじゃんオジサン!!)が補足して、ハツミさんと海の家の関係を教えてくれました。ふーむ、成る程ねぇ……ん? 新しいお客さんが来たかな?
「……うわ!! やっすい!! イカ焼き150円だって!!」
「見てください! サザエも150円ですよ!! 俺、この世界に来てよかった……ッ!!」
なんだろう、随分と熱量の高い人達が来たなぁ……!?
「……あら? そちらは【ほーりぃ☆パルすいーつ】さんじゃない?」
言われて振り向くと、結構盛り気味に赤い髪の毛を纏めた、ビシッと赤いビキニとパレオで決めた女のヒトと、背の高い男のヒト(見た目じゃ年が判らない……)が、私に向かって《魔法少女》としての名前を呼んだの……
ではまた次回!! ブクマ評価も宜しくお願い致します!




