第13章「本気」
夕暮れの星見ケ丘。
西の空は茜色から群青へと移ろい、街の灯りが少しずつ瞬きはじめている。昨日と同じように、レイ、セナ、ステラ、そして仲間たちが丘に集まっていた。セナが「さて、お手並み拝見ね」等と呟く一方、ステラ、ユーリ、アルヴァン、アオイは本当に一日で完成したのか少し心配そうな表情で今まさに踊ろうとするレイに注目していた。
「じゃあ――始めるぞ?」
レイが深呼吸をしている間、小型スピーカーからシャイニング・ブレイズのイントロが流れ出した。
「ステラ、頼んだ」
「うん!任せて!」
ステラは少し得意げな顔で携帯を構える。レイのダンスを撮るなんて、どこか誇らしい役割のように思えた。
曲が始まる。
レイの体が音に合わせて流れるように動き出す。整った顔立ちが夕焼けに照らされ、その美しさはただ立っているだけでも絵になるほど。だが、そこにダンスが加わると――一瞬で空気が変わった。
優雅で、そして妖艶。
鋭いターンの合間に見せるしなやかな身のこなし。セクシーさすら漂わせる仕草の数々に、見ている者の心を掴んで離さない。
「……カッコいい……」
セナが思わず呟く。頬を赤らめ、胸の奥がドキドキと騒ぎ出す。
隣で携帯を構えているステラも、画面越しに見ているはずなのに、気づけばレンズから視線が外れ、レイの姿を直に追っていた。
(……ヤバっ……スッゴく惹き付けられる……)
ユーリはぽかんと口を開けたまま、信じられないといった顔で呟いた。
「……おいおい、あいつ……人間かよ。たった一日考えただけでこのクオリティって……」
アルヴァンは両手を胸の前でぎゅっと握りしめ、感極まったように瞳を潤ませていた。
「レイ君!すごい……!あんなに情熱的で、美しいダンス、初めて見た……」
アオイは腕を組んでいたが、気づけば視線を逸らせずにいた。誰にも聞こえない声で静かに感想を言う。
「……ふふっ、まいったわね。想像以上だわ。こんなの見せられたら、誰だって虜になるに決まってる。ステラが惚れてるだけあるわね」
仲間たち全員が息を呑み、言葉を失ったまま釘付けになっている。
ダンスは頂点を迎え、曲がクライマックスを駆け抜けていく。
やがて音が止む。
最後のポーズを決めたレイは、汗を滲ませながらも凛とした笑みを浮かべていた。
沈黙を破ったのは、セナの震えるような拍手だった。
「最高……!ほんとに、最高よ、レイ!」
その瞳は憧れと、ときめきでいっぱいだった。
ステラも遅れて拍手を始める。携帯を下ろし、わずかに伏し目がちになりながら。
「……セナさんのために頑張りすぎだよ、バカレイ……」
その言葉はほとんど囁きに近く、真っ赤になった頬が夕陽に染まってさらに熱を帯びていた。
レイは息を整え、真剣な瞳でセナを見つめる。
「セナ――これでどうだ?もう少し簡単にもできるが……」
「これがいいわ!!レイ!お願い!!教えて!!」
そのセナの懇願は心から気持ちのこもったものだった。丘に集まった仲間たちの胸を再び熱くする。
夕焼けの残光と夜の星々が混じり合い、レイの背中を照らしていた。




