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戦国生存記  作者: 現実逃避
179/180

179 突破

大手門、裏門を突破後、三の丸内はキリシタンからの抵抗は殆ど無く制圧された。というのも、殆どの者が痩せ細り抵抗出来ない状態だった。また、隅には餓死していた者の遺体が貯められていた。要は城に籠ったキリシタンに食料が行き渡っていなかったのだ。


「殿。二の丸の制圧完了しました。しかし本丸に続く城門の抵抗が烈しく突破出来ません」



本丸から少し離れた所で直政から報告を聞いていた義尊は黙ったまま城の方を見ている。


「……殿?」


「直政、お主はここに来るまでに話に聞いていた全身鉄に覆われ鉄砲が効かぬ兵を見たか?」


「いえ、見ておりませぬ。恐らく敵の最強戦力な為本丸にいるのではないでしょうか?」


「私もそう思っていた。だが、おかしくないか?既に敵は逃げ道が無いのに籠城しているのだぞ」


「はぁ?しかし、もとより奴等に逃げ場などありませんからでは?……殿は敵に援軍が来るとお考えですか?」


「義父上(義照)の話だと、南蛮船を逃してしまったそうだ。援軍を引き連れて戻ったとしてもおかしくない。もしくは逃げる為に何処かに潜んでいるかもしれない」


「大殿(義照)に使いを送り……何事か!」


直政が使いを送ろうと意見をしようとしたところに伝令が駆け寄ってくる。一応周りには護衛の兵が囲っているがまだ暗い中では視界が悪かった為気付くのに遅れた。


「はっ!仁科様より至急合流せよと!」


「わかった。すぐに向かうと伝えよ」


義尊が答えると伝令は直ぐに掛けていく。直政は見届けた後、家臣に命じ使いを義照に向かわせた。


「……至急とは一体何があったのか……」

義尊は直ぐに義勝の下へ向かう。



「暇だな〜」

「全く、何のためにこんなところまで来たんだよ」


その頃、周囲を囲っていた朝倉軍は暇を持て余していた。というのも包囲を突破しようとする者が一人もおらず、トントン拍子でニの丸、三の丸を制圧してしまった為だった。


 二の丸はまだ戦闘状態だが、三の丸は四国勢や浅井家が制圧し巡回しており朝倉軍は蚊帳の外である。一部の朝倉兵は二の丸にいるが……。


「そう言えば聞いたか?この戦いが終わったら日ノ本の戦が無くなるって話」


「聞いた聞いた。真柄様がぼやいてたってやつだろ?ここにいる大名全員が同盟を結ぶだろうって」


「まぁ、俺達には関係ないな。それにしても暇だな〜」

三国同盟のその先について一部の兵士達の耳にまで届いたが、領主が同盟を結ぼうが結ぶまいが末端の者達には別にどうでもよかった。自分達が生活できればどうでもいいからだ。


そんな呑気に見回りをしていた兵士達の近くに恐怖が襲いかかるとは、この時誰にも予想は出来なかった。


 

状況が動いたのはそれから半刻程経ってからだった。遂に本丸の城門を打ち破り突撃していく。だが、中で待っていたのは鉄砲が効かなかった鎧の兵士達と大筒だった。


「Shoot!!」


中の南蛮騎士の号令で大砲は火を吹き、突入した武士、兵士達は一瞬で肉塊となった。

南蛮人達は大砲の玉の代わりに鉄砲の弾を利用し詰め込んだ。散弾として使ったのだ。


一気呵成に突撃した兵達が目の間で肉塊に変わり、後ろにいた兵や武将達にも甚大な被害を齎した。


さっきまでの威勢は消え、何もわからず呆然とする者、一目散に逃げる者、負傷し悲鳴を上げる者に分かれた。


「impetum!!」(攻撃)


南蛮兵達はそんな日ノ本連合軍に攻撃を開始した。攻撃と言っても全身に南蛮鎧を着けたパイク兵士を全面に配置しテルシオを組んでいるだけだ。

だが、最初の大砲の衝撃と恐怖に兵達は恐慌状態に陥りまともな抵抗が出来ずにいた。


「怯むな!ワシに続け!」


おぉぉぉぉぉ!

味方を鼓舞しようと武将が突撃するもパイクによって足を止められ後方から鉄砲で撃ち抜かれた。


「退けー退けー!」

最早場を鎮めることが出来ず城門前から撤退を始める。


「ハハハ!猿どもめ!慌てふためいて逃げていくわ!」


「ペドロ隊長、早くここを離れましょう。カブラル達も既に抜け穴から抜けたはずです」


「そうだな。急いで北に向う!そこで味方の船が待っているぞ!」


南蛮軍を指揮しているペドロは脱出の手筈を整えていた。これも連合軍に紛れていたキリシタンのおかげだった。


なんとかキリシタンを通じて肥前にいる南蛮船に連絡を送り、府内の港で合流する予定まで立てたのだ。

予想外だったのは連合軍が紛れ込んだキリシタンを一掃したことだ。だが何かを企てていることは知られても詳しい内容は一部の南蛮人たちしか知らないので問題なかった。


(後は問題なく包囲を突破できるかだな。……カブラル、()()()()にしくじるなよ)


ペドロは内心カブラルが失敗しないことを祈りつつ隊列は崩すことなく速やかに北に進めていくのだった。


「うん?なんの音だ?ぐふっ」

見回りをしていた朝倉兵達は闇の中から繰り出された槍で一瞬で命を刈り取られた。




「良し、見た者は殺せ」

カブラルが指示すると南蛮人達が一斉に襲いかかる。…


「カブラル様、あちらも陽動を始めたようです」


「では、予定通り港へ行くぞ。既に船を盗んでいるはずだ」


カブラルはペドロに臼杵の港で味方が船を強奪しているから合流し砲撃してくれと頼まれた。その為カブラルの方は戦力にならない宣教師達と数十人の兵士しか居なかった。実際はこちらが囮である。


そしてカブラルは港に向かいつつ包囲を抜けようとしていたが……。


「敵だ!南蛮人がいるぞ!!」

「皆に知らせろ!討ち取れ!」

朝倉兵達も馬鹿ではなく、見つけたら直ぐに笛を鳴らし敵の存在を知らせた。


「クソが!殺して逃げるぞ」

カブラル自身も剣を抜き、兵達と共に朝倉兵達と戦闘を始めた。



「報告します!包囲していた朝倉兵が敵を発見!港の直ぐ側にいます!」


「「何だと!」」


包囲網の一番外側で南蛮人達が見つかった事に連合軍本陣は驚きを隠せなかった。包囲は三重しかも二の丸、三の丸も制圧済だったからだ。


「抜け穴か………。隆景、直ぐに援軍を送れ!決して逃がすな!」

「はっ!征くぞ!」


隆元の命で直ぐに隆景が兵を率いて向かった。既に城門を出た南蛮の軍は三の丸に入っていた。道中止めようと立ち向かったが盾を並べた上、先頭は鉄砲の効かなかった重装兵だった為犠牲だけが増えていた。


だが、時間が稼げたお陰で三の丸には連合軍の最強達が待ち替えている。


「後は元春達に任せよう」


隆元は目の前に置かれた配置図の駒を見つめながら呟くのだった。

久し振りの投稿です。遅くなって申し訳ありません。

外での仕事をしてますが数年ぶりに熱中症になりました。危うく運ばれそうになるなんて……。

これからも暑くなりますので皆様もお気を付け下さい。

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