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戦国生存記  作者: 現実逃避
172/180

172 豊後海戦

申し訳ありません。

諸事情により4~6月は投稿を休ませて頂きます。

今後の予定はまたお知らせします

元亀十一年(一五八〇年)三月中旬

豊後水道 日ノ本連合水軍


「……これで策は決まったな」

「はい。最早これしかありませぬ」

「しかし兄上(義照)。失敗する可能性も大きいですよ。それに、我等の被害は計り知れないです」


義照を含め集まっている家臣全員が心痛な面持ちだった。

推定される被害が当初よりも桁違いに大きいからだ。

当初は艦隊の半数を失うことをも想定していた。だが、天照達別動隊の戦果報告を聞いて再度想定を見直して出た結果は凡そ七割以上を失うという悲惨な物だった。


「この南蛮との戦、決して負ける訳にいかぬ。例え、全て失ったとしても必ず敵船団を葬るぞ」

「「ははぁ!!」」


閻王の甲板で決まった策を全ての部隊に通達され、連合軍大将毛利隆元に伝わった。


「本当にこれをやるのか?村上殿は何を考えてる?」

「いや、確かに出来るのなら効果はあるでしょうが……。上陸についてはなんと?」

「はっ!関船、小早を総動員して輸送すると申されております!」


隆元達は本当に出来るのか疑心暗鬼になりながらも水軍を全て任せているので受け入れるしかなかった。


「今は信ずる他ない。兵達に直ぐに取りかからせよ」

「ははぁ!!」


伝令が出ていくと、隆元は元春と隆景だけを残して部屋を出ていかせる。残った二人もなぜ残されたか何となく分かっていた。


「元清はワシの、毛利家の為に必死になって戦い水軍を支えてくれておった。ワシより早く死なせることになるとは思わんかった」

「兄上、申し訳ありません。私が元清に任せきりだったせいです!此度の策、私も終わってから伝わり何も出来ませんでした」

「隆景、お主のせいではない。そう泣くな。それより兄者(隆元)、村上はわざと元清を見殺しにしたと思うか?」


三人が残ったのは弟の穂井田元清についてだった。元清は三人にも劣らず優秀で自分達の後のことも任せられると思っていた。しかし、今回無謀とも思える策で死んだ。策は成功したがわざと元清を殺したのではと思わざるを得なかった。いや、そう思いたかった。


「それはないだろう。乃美から経緯を書いた書状が届いている。それには元清が自ら言ったそうだ。村上家は南蛮船を失い、異質な船も最早浮いているのが奇跡な程だとある。その為、周防で修理をするそうだ」


「武吉の奴は南蛮船を手に入れ大喜びしてるそうだ。あのクソ野郎め!叩き斬ってくれる!」


「待て元春!全ては終わった後だ。隆景、お主は村上殿の側に行き策に加われ。それと、毛利水軍の全権を預ける。乃美は副将とし勝手に死ぬことは許さぬと厳命しろ」


「分かり……ました…。それでは直ぐに合流します」

隆景は直ぐに出ていき、隆元と元春の二人だけになる、


「元春。お主は兵を纏め先に上陸し、筑前の者達と合流し、全軍を指揮しろ」


「分かった。兄者は?」

「ワシは予定通り朝倉や村上軍と共に動く。上陸したら合流する」

「分かった。兄者、隆景にはああ言ったが兄者も無理をするんじゃないぞ?」


元春はそう言うと部屋を出て兵達の元に向かった。

隆元は顔に出ていたかと思い手を顔に当てる。だが毛利家の為、今は悲しがっている場合ではないと気持ちを切り替えて皆の元へ向かうのだった。



そして十日程が過ぎ、

元亀十一年(一五八〇年)三月二十六日


「やはり、そう簡単に夜襲はさせてくれんか……」

義照は南蛮船団を目の前にしてぼやく。

考えていた策は二つ、夜襲を前提とした策と日中を前提とした策……とは呼べない総力戦だ。


「泰親、全艦隊に戦闘態勢、総力戦と伝えろ」


「ははぁ!鐘を鳴らし全ての船に知らせろ!全艦戦闘態勢!手筈通り総力戦だ!!」


静寂だった海に鐘の音が響き渡る。連合水軍は安宅船、関船、小舟を残し旗艦閻王を先頭に戦列艦三番艦、建御名方タケミナカタとガレオン船三隻、キャラック船五隻、合わせて十隻が単縦陣を敷いていく。



一方、南蛮船を総動員し臼杵から出てきたロドリゲスは目の前の船団を見て苛立っていた。原因は別府の船団が全滅、また拿捕され目の前にいたからだ。


「猿共め!奪ったからといって俺達に勝てるなど思うな!進め!!」


ロドリゲスは他の船に旗旒信号で突撃を命じ、全船が一斉に単横陣で進む。


「来たか。泰親やれ」


「ははぁ!!奴等に一撃を与える!炮烙火矢全弾放てぇぇぇ!!」


泰親の号令で戦列艦の甲板に用意されていた炮烙火矢が、一斉に点火され飛び出して行く。

船が進みながらの為、当たる物は少ないが、当たった船は悉く炎上し始めた。


「なんだこれ!火が消えないぞ!」

「アツい!アツい!助け!」


運悪く当たった船の船員は炎に巻かれ悲鳴を上げながら死んでいく。


炎から逃げる為に海に飛び込んだ者達もいたが更なる悲劇に見舞われる。


「海が燃えてる!!」

「炎から離れろ!燃え移るぞ!」


生き残った南蛮船は一切に回頭を始める。しかし、急な回頭で船同士が激突した。



「上手くいったな。よし、砲撃戦に移行する!艦首回せ!!」


「とぉぉりかぁじ一杯!」

「とぉぉりかぁじ一杯!」


十隻の船が一斉に左回りを始める。

しかし、奪ったばかりで、人手が足りないため素人が多い船は徐々に遅れ、隊列は乱れた。


「付いて来られた者だけで構わん!撃てぇぇ~!!」


轟音と共に一斉射され、混乱する南蛮軍は格好の的となった。


「次弾装填!各自射ち続けろ!」

直ぐに再装填されていくが、後装式ではなく前装式な為時間が掛かってしまう。

後装式の開発はしているが、まだ南蛮の物と大差は無く数も少ない為である。

その為…



「伏せろー!」


敵に反撃する時間を与えてしまう。


「クソ!サル供め!奴等の船に乗り込むぞ!」

単横陣だった為全く被害を受けなかった両端のガレオン船が大砲を撃ちながら突撃する。


この時代、数打ちゃ当たるという頃で大砲一つで船を沈める程の威力は無かった。その為、足が早く数多くの大砲が積める船が強力であった。故に、戦列艦は圧倒的な強さを誇った。


しかし、日本まで幾度もなく困難を越えて来た彼ら(南蛮人)が弱い等ある筈もなかった。


「帆柱が折れたぞ!避けろ~!!」

先頭に付いていけず遅れていたキャラック船やガレオン船が大砲の被害を受けた。南蛮人達が撃った砲弾は見事に帆柱に命中したのだ。更に船脚が遅くなった船は南蛮船からの激しい砲撃に曝されていく。


「村上殿!味方が!!」

「捨て置けぇぇ!目の前が先だ!撃てぇぇぇ!」


一緒に乗船していた隆景はやられていく味方を見て叫んだが義照は無視し目の前の船を攻撃していく。


実際やられているのは毛利や四国の者達の船で、躁船しているのは村上家の兵とは言え全体で考えれば極僅かの被害でしかなかった。その為、義照と隆景との考えの差は大きかった。

実際、先頭の旗艦に付いてこれているのは、村上水軍(義照配下)が三隻、村上水軍(村上武吉)、毛利水軍(乃美宗勝)の六隻のみである。


「右舷の敵船が突っ込んでくるぞ!」

「敵が乗り込んで来るぞ!鉄砲用意!!」


「ぶつかるぞ!!」

「放てぇぇぇぇぇ!!」

ぶつかる前にガレオン船に大砲を撃ち込んだが止まらず激突した。


「来たぞ!」

「鉄砲放て!!」

「かかれぇぇぇ!!」

鉄砲で船を渡ろうとした敵を落としはしたが、それでも南蛮人達は止まらず、遂に斬り合いが始まった。


「囲んで討ち取れ!」「こいつら手強いぞ!」

数はこちらが多く、討ち取ってはいくが敵もかなり手強かった。


「大殿、小早川様、ここは危険ですので奥へ!」


「構うな!侵入した敵は甲板にいる者達で討ち取れ!大筒は玉が尽きるまで撃ち続けろ!」


大声をだし指示をすると南蛮人が此方に剣を向けて何か叫んだ。すると、乗り込んできた者達が一斉に向かって来はじめた。

「大殿を守れ!討ち取れ!」

泰親が叫び兵士達が向かっていく。南蛮人達は必死に向かって来るが一人また一人と命を落としていく。


そんな中、義照は先程叫んでいた南蛮人に刀を向けて叫ぶ。


「Vieni qui!(こっちへ来い!)」


急に義照が南蛮語で叫んだことで、争っていた誰もが一瞬手を止めてしまう。

今度は刀で指しながら来いとジェスチャーをする。それを見て指名された男はどういうことか理解出来たようで、南蛮人達に何か言いながら此方に向かってくる。


「大殿!!何を!」

「泰親、敵の船は沈んだ。乗り込んできた奴等も殆どが死に最早逃げ場は無い。最後に相手をしてやるだけだ」


「危険ですぞ!」

「隆景殿。もしもの時は、全権を任す。泰親、砲撃は続けろ。他の敵は気にせず向かってくるからな」


泰親と隆景にそう指示をして、上から一段下の甲板に降りる。相手も上がって来て周りを兵達に囲まれる。


「御主の名前は何だ?」

「何のつもりだ?勝ったつもりでいるのか?」

「敵ながら見事だったから相手をしてやろう。ワシの名は村上義照。貴様は?」


男は目の前の男の正体に驚く。悪魔と言われ、ジェスト(高山右近)から危険人物と言われていた敵の大将だったからだ。

「大将自らとは舐めるな。私はエステバン・ロドリゲス!この船団の大将だ!貴様を討てば我々の勝利だ!!」


ロドリゲスが大声で叫び剣を構える。二人は南蛮語で会話をしているため隆景や毛利兵達に何を言っているか全く分からなかった。

なので、側にいた泰親に通訳を頼んだ。

泰親は部下にもしもの時は討ち取れと密かに命令をして、二人を見守っていた。


「ふむ。敵の大将か!!ならば……是非に及ばず!存分に殺ろうぞ!」


義照が叫び、二人の決闘が始まるのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] いつも楽しく読ませて頂いています。 うわー この場面で先生お休みですか>< 復帰していただける日をお待ちしています!
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