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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
〇〇なんて今さらオレが言えるかよ!
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男前な乙女とオレ①

 翌日から、すぐに授業があり、クレイの言う学校生活が始まった。


 午前中は日課に沿って各教科の授業が行われ、昼食・休憩を挟んで、午後も引き続き同様の授業かクラスごとの課外授業が行われている。


 クラスは4組に分けられ、1~3組が12名、4組が13名という編成になり、オレ達は4組に振り分けられた。

 ちょうど各クラス3班で構成される形だ。


 事前に学力等を調べる試験も無く、レベル別にクラス分けされている訳ではなかったので、当然のごとく個人差がある。

 オレとユクはついていけるかどうか、ビクビクしながら授業を迎えた。 

 実際、授業の内容は高度ではあったけれど、学がある者からすれば初級者レベルであり、教授陣もわかりやい授業を心がけているようだ。

 さらに、教わる必要のないレベルの者は教える側について授業の支援を行うというスタイルをとったので、オレもユクもかろうじて授業についていくことができた。

 もっとも夕食後の自由時間は、復習や予習をする時間に費やされることになったけど……。


 基本的には、夕食後は自由時間で談話室で話したり書庫で勉強したり、みんな思い思いの時間を過ごしていた。

 また、各週6の日(イオス暦では1週間は6日)は安息日で、授業は行われず、終日を自由に過ごすことができた。


 まぁ、なんというか規則正しい毎日で、最初は退屈するかと思ったけど、意外にそうでもないことはすぐわかった。

 それというのも、同じクラスの女子達と一緒にいるだけで、驚きの連続だったからだ。


 考えてみれば、オレの育った傭兵団は男所帯だったし、その後もクレイとずっと一緒で、こうした同じ年頃の女の子達と共に生活する機会なんて全くなかった。


 ユクとは確かに旅を供にしたけど、クレイ達も一緒だったし、自己主張の少ない控えめな性格だったから、取り立てて違和感を感じなかった。


 でも、クラスの女子達と一緒にいるのは別段、嫌ではなかったけど、女の子のなんとも甘ったるい香りと女子特有の恋愛トークに頭がくらくらした。  

 目下のところ、彼女達の最大の関心事は、護衛陣の男子の品定めのようだ。 

 やはり、クレイとヒューは目立つらしく、女子の間で話題の的になっていた。


 あの立ち位置は怪しい関係に違いないとかなんとか、オレにもホントのところどうなの? と尋ねてくる猛者もいた。


 ホント、女子のパワーに圧倒されっぱなしだ。


 そして、同じ班の4人はそうした女子とは明らかに一線を画していた。

 なんというか、普通でないというか個性的というべきか……。


 アレイラは、侯爵令嬢の矜持を頑なに守り続け、身分の低い者には容赦の無い暴言を繰り返し、周囲から孤立していた。

 勉学もさすがというか、どの教科も一定レベルこなしているので、他人の助力を必要としなかった。

 

 同じ班の者とさえ挨拶も交わさず、無視を貫いているぐらいだ。

 けど、オレにだけは部屋を交換したおかげか、挨拶や二言三言の会話を交わすようになっていたので、他のクラスメイト達から橋渡し役として重宝されていた。


 きっと、根は悪くない子だと思うんだ。


 ただ、言い出したら引けなくなるタイプの上、周囲に合わせるのが苦手な性格に見えた。


 一方ユクはというと、逆のタイプで自分を必要以上に卑下し、周りの反応を気にするあまり、行動に一貫性がなかった。

 

 でも、笑顔が可愛く誰に対しても丁寧なユクはみんなに好かれていた。

 時折、神秘系発言で周囲を驚かせたけど、それも意外な魅力と捉えられているようだ。


 それにユクと一緒にいるだけで、何だか優しい気持ちになれた。

 規則に縛られた生活の中で、オレにとって心のオアシスと言って良かった。



 次にノルティだけれど……実に不思議な子だ。


 授業中も、ぼーっとしていることが多い。


 教授に指されると、ぼそぼそと正解を答えるところから頭はいいようだ。

 でも、主体的に行動することは滅多になく、いつも誰かにくっついて動いている。

 大抵はオーリエだけど、最近オレの後にもついてくる。


 言葉も少なく、厚い眼鏡のせいで表情もよくわからない。

 見た目は愛らしい少女なんだけど、将来は大丈夫かちょっと不安になる。


 そして、オーリエ。


 なんというか、オーリエとは最初からウマが合った。

 気さくで女を感じさせない行動や言動は、一緒にいて気分が楽だった。


 かといって男っぽいというわけでなく、青年になろうとする少年のような中性的な魅力を感じさせた。

 粗暴ではなく、いたって紳士的で、ヒューのそれに近い属性のようだ。


 オレとオーリエが話していると、ユクに言わせれば、男の子の会話を聞いてるみたいだそうだ。


 もっとも、オーリエはオレとだけ親しくしているわけではなく、誰に対しても公平に接していた。

 いつも自信に満ち、沈着冷静で頼れるオーリエはクラスの女子から慕われる存在だったのだ。


 勉強はオレと同じで、あまり得意というわけではなかったけど、努力家で真面目に授業を受けていた。


 豪快な髭団長と団長の色っぽい奥さんの娘とは、ちょっと想像できない。


 オレのオーリエの印象は、傭兵と言うより騎士に近い。


 何だろう、何か自分を厳しく戒めているように思える。

 普段は感情の発現を極力抑えている……そんな感じだ。


 実際、感情をあらわにしたのは、アレイラに髭団長を馬鹿にされたと怒ったあの時ぐらいだ。


 そんな風に思っていた矢先、オレはオーリエの別の一面を見ることになる。



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