エピローグ
「あのさ……聞きにくいんだけど、みんな、オレのこと変に思わないの?」
後方にルマが見えなくなった頃、オレはふと疑問に思って聞いてみた。
「どういう意味ですか?」
オレの隣を並んで走るヒューが小首を傾げる。
「いや、だから。男なのに女みたいな振る舞いをしてさ」
「でも、今は女性だから当たり前じゃないですか?」
「それはそうだけど、中身が男とわかって気持ち悪くない?」
「……だって、リデルはリデルでしょう。違いはありませんよ」
意外そうにヒューが言う。
「私もそう思います。でも、女らしい振る舞いをしているとは、到底思えませんが……」
馬車から顔を出してソフィアが同意する。
そ、そうなの……。
「何を悩んでるんだ。この俺がお前を変に思う奴を近づけさせるわけないじゃないか」
クレイが御者台から苦笑しながら言う。
「惚気ですか? そういう発言をするから誤解を招くんですよ」
くすくすとヒューが笑う。
ヒューの言葉を無視して、クレイがオレに尋ねる。
「それとも、リデル。お前自身、女になって中身が変わったのか?」
オレ自身……。
どうなんだろう、正直よくわからない。
確かにクレイの見方が少し変わったことは認める。
それが一時的なものなのか、ずっと続くものなのか……本当のところわからない。
不安を感じないと言ったら嘘になる。
でも、くよくよ考えても仕方ない。
オレはオレなんだし、思ったとおり生きていくしかないじゃないか。
そう思うことにした。
「いくら考えても、オレはオレだし…………それより、クレイ。オレ、ちょっと走ってくるから、後は頼む。行くよ、リーリム!」
オレは勢いよく馬を走らせる。
「おい、長旅なんだから、ほどほどにしとけよ――――」
クレイの忠告があっという間に後方に聞き流される。
オレは手綱をしっかり握ると、ひたすら前方を見つめ、リーリムを走らせた。
心の奥底の迷う心を吹き飛ばすように、心地よい風を身体いっぱいに受けながら……。
第一部 完
第一部完結です。
これほど長い作品を書いたのは初めてなので、行き届かない部分も多々あったと思います。
それでも最後まで読んで下さった貴方に心より感謝いたします。
本当にありがとうございました。
みまり




