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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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邪神……⑦


「な、何なんだよ、それ?」


 黒い影として個別に攻撃させ、いざとなったら身代わりにする。さらに、倒されたら即、補充だなんて卑怯すぎるだろ。


「君と遊ぶのには、ちょうど良い魔法だろう?」


 遊ぶ……か。確かに致命的なダメージを与える攻撃とは言えない。戦闘は長引くかもだけど、今のところはオレも何とか対処できている。一方、オレの方もゾルダートを倒す決め手に欠けている状態だ。まさに奴に遊ばれてると言っていい。


「余裕ぶっこいてると痛い目にあうぞ」


「ほほう。ぜひとも、その痛い目とやらにあわせて欲しいものだね」


 無表情のデスマスクのくせに、ほんのり余裕が透けて見えてむかつく。


 くそっ。黒い影さえ何とかなれば、本体ゾルダートを叩けるのに……。


 そうすりゃ、こんな奴なんか……っ、冷静になれリデル。腹を立てたら相手の思うつぼだろ。考えろ、考えるんだ、何か方法があるはずだ。


 攻撃してくる影は全部で10体。指の数と同じだ。もしかしたら、指を減らせば黒い影を減らせるのかも……いやダメだ。そもそも、奴への攻撃は黒い影が身代わりになってダメージを与えられない。じゃあ、どうしたらいいんだ………………う~っ、考えがまとまらない。


 とにかく攻撃の手を緩めず戦闘を続行しよう。ゾルダートの魔力量がどれぐらいかは知らないけど、神を僭称する相手だ。並大抵の量では無いに違いない。もし、そうだとしても、少しでも魔力量を減らすために戦い続けることが最良だろう。

 オレもこの身体になってから疲れ知らずではあるけど、スタミナは無限じゃない。早めに決着をつける必要があることに間違いない。


 そう考え、再び攻勢に出たオレの攻撃は案の定、先ほど同様の結果に終わる。今度は、まず先に黒い影を全て倒そうと試みたが、上手く連携を取って必ず身代わり用を数体残すようにしているようだ。


 結果的にわかったのは、最後の一体が倒されてから10体補充することぐらいだ。不足分を適宜に充足するのではなく、全員倒されたら再召喚するというのは何か意味でもあるのだろうか。呪文効果として必ず10体出現してしまうので、魔力の無駄を省くためにそうしているという線も考えられなくもない。

 もしそうなら、オレにも遣り様がある。その場合、奴の魔力が有限であるか若しくは回数制限があり、魔法を使えなくなる可能性があるということだ。つまり、黒い影を倒して倒して倒しまくれば回数制限や魔力の枯渇を狙えるという訳だ。


 とにかくだ。つまるところ、戦いはオレのスタミナと奴の魔力勝負という地獄の消耗戦に突入したことに他ならない。そんな陰鬱な考えに囚われ気が重くなったけど、頭を振って負の妄想を吹き飛ばす。あれこれ考えても仕方ない。オレに出来ることを愚直にやり続けるしか勝機は無いのだ。

 オレがテリオネシスの剣を握りしめ、ゾルダートに向かって再び突進しょうとした瞬間、オレの右手側を囲んでいた黒い影が、いきなり爆散した。




「え?」


 驚きのあまり、消えた黒い影の先に目をやると、子どもトルペンが両手伸ばして魔法を行使し終えた姿が目に入った。


「トルペン?」


「リデル、微力ではアリマスガ、支援させていただきマス」


 どうやら、魔法の矢を放ったようだ。確かに味方の中で遠距離攻撃が出来るのはトルペンとハーマリーナだけだったから、支援攻撃できるのは当然なのだけど。


「身体は大丈夫なの?」


 現在、ハーマリーナとの戦いで損耗したトルペンは本体を別宇宙(アウタープレーン)に退避させて回復中で、ここにいる子どもトルペンは疑似生命体で端末のようなものらしい。そのため、身体能力ステイタスは抑えられ、使える魔法も限定的で威力も落ちると聞いている。


「ええ、これぐらいの魔法は使えマス。もっとも、数体を倒すのが関の山デスガ」


「いや、助かるよ。それだけ離れてれば、身代わりにされることもないしね」


 思わぬ援護で勝機が上がったと喜びながらゾルダートに視線を戻したオレは背筋が凍り付いた。


 戦闘中といえども(おかしな話ではあるが)終始、和やかな表情を見せていたゾルダートの様子が一変していたのだ。

 デスマスクから覗く目が険しさと冷酷さを湛え、口元は憤怒で震えているように見えた。


「貴様……トルペン……この下郎が!」


 明らかに常軌を逸した怒りはトルペンに向けられている。


「ゾルダート……?」


 黒い影の攻撃の手を休めるほど激怒するゾルダートに呆気に取られたオレは恐る恐る声をかける。


「わしの……わしとアリシアの楽しき時間に、無粋にも横合いから邪魔だてするとは許してはおけぬ」


 ちょっとマジ切れしてるじゃん。ど、どうしたゾルダート?


 オレが焦っていると黒い影たちが一斉にトルペンの方を向く。

 あ、ヤバい。あっちにはトルペンだけじゃなくヒューもいるんだ。


 次の瞬間、黒い影たちが腕を真っ直ぐ上げると次々に飛び上がり、矢のように弧を描いてトルペンの方向へ飛んで行く。その姿は、さながら黒い投げ槍のようだ。


 あれ、待てよ? ゾルダートの周りに黒い影が一人もいなくなってる? 今なら本体を叩けそうかも…………けど。


「うりゃぁぁ――!」


 どすっ。


 オレは奇声を上げながら、トルペンへの射線に無理やり飛び込んで黒い影の直撃を代わりに受ける。


「リ、リデル! 大丈夫デスカ?」


 トルペンが驚愕の悲鳴を上げる。


「……そっちこそ、大丈夫?」


 振り返って見ると、トルペンの展開した障壁を貫いて壁に突き刺さる黒い影たちが見えた。幸いなことに、ちょうどオレが受けた黒い影がトルペンの真正面に位置していたようで、トルペンもその後ろにいたヒューも無傷だ。


「リデル、肩に……」


 ヒューが顔を白くして心配そうにオレに聞く。


「だ、大丈夫だ。何ともない」


 何ともなくはない……口では虚勢を張ったが、激痛に目が眩みそうだ。


 槍のような大きさだった黒い影は、矢じりのように小さくなって、オレの左肩に突き立っていた。右手で抜こうとしたが、現実の物体で無いかのように触ることが出来ない。


「まさか、君が身体を張って受けるとは思わなかった」


 ゾルダートが信じられないものを見たように呆れた声で言った。


「てっきり、わしを攻撃してくるものだと思い込んでいたよ」


 ゾルダートの後ろに隠れるように身代わり用として残していた黒い影を自ら消し去ると、再び影たちを召喚する。やはり、全員が一旦消えないと再召喚できない魔法のようだ。


「気分はどうかね、アリシア。その影矢はね、通常では抜くことは出来ぬのだよ。さらに、命には別状ないから聖石の力で取り除くことも不可能だ。そして、効果は……」


「麻痺か……」


 激痛が治まると傷口の周辺が痺れたように感覚が無かった。


最近、お馬鹿な短編を書きたいのですが、実際に書いてみると絶妙に重い話になります。

何故だろう?


ちなみに、昔はよく漫画も描いていたのですが、漫画は逆で4コマ漫画の方が得意でしたw

ストーリー漫画は概ね不評でした。解せぬ(一一")


液タブ買って、ずっと放置しているので練習して描きたいなと思う今日この頃。

じ、時間が足りない!(>_<)


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― 新着の感想 ―
[一言] また違う執着を感じられる……
[良い点] リデル君と自分との間に挟まろうとするトルペンに皇子激おこの巻。一方リデル君はインチキ防御の攻略法を考えようとしててKOOL状態でそれどころじゃない。頭脳担当は…うん、人質生活長かったから疲…
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