黒鎧の騎士……⑥
誤字報告ありがとうございます。
いつも助かっています。
今後もよろしくお願いいたします。
あと、前話の最後を少し修正しました。(R4 9/17修正)
申し訳ありません。
アイル皇子はオレの反応が見たかったのか、またもや一呼吸置く。
時間稼ぎのために適当に聞いただけだったけど、中途半端な説明は逆に続きが気になって仕方がない。
「で、何が判明したんだ?」
オレは不本意ながら急かすように聞くと、アイル皇子は調子に乗ったように答える。
「ほお、わしの話がそんなに聞きたいとは喜ばしい」
「イクスみたいな勘違い発言はいいから、早く続きを話せ」
アイル皇子の発言をばっさり切って捨てると、隣にいるイクスが『とんだとばっちりだ』と言わんばかりの顔をする。
「まったく面倒な性格をしておるな。それでは君の想い人は苦労してきたであろう」
「余計なお世話だ」
「まあ良い。続きを話そう……先ほども言ったが、最初は中に入っていた人物こそがヴァンダインで黒鎧はただの神具と思われていた。しかし、黒鎧を調べる内にそれが単なる防具でないことがわかってきたのだ。寝る時でさえ脱ぐことなく長期に着込んでいたいうのに、黒鎧の中は清潔そのもので老廃物や糞尿の類いは一切認められなかった。遺体をつぶさに検証した結果、どうやら、健啖家と知られた彼の食した物は、実際のところ彼の身体に入らず全て黒鎧が吸収していたようなのだ」
あ、やっぱり。鎧の中に閉じ込められたから、ちょっとは覚悟してたけど、クレイの奴ちっとも臭くなくてビックリしてたんだ。むしろ、良い匂いに感じたもの。
どういう仕組みかはわからないけど、おそらく鎧を着込んでいる間は新陳代謝などの生体活動が著しく抑えられた状態になっているのかもしれない。
「つまり、それって……」
「そう、中の人物は黒鎧を動かす単なる部品の一つに過ぎず、そのために黒鎧によって生かされていたのではないかと推測された。さらに、その状態で本人の生気は黒鎧に吸い取られていたことも判明している。遺体が骨と皮だけになっていたのが、その証拠だな。まさしく生きる屍となっていたと言えよう……そして、それを裏付ける出来事が起きた」
裏付ける出来事だって?
「事件の調査を担当していた神具研究者グループの一人が検証のために黒鎧を着込んでみたのだ。全身鎧をほぼ着込み、着心地を聞かれたその研究者は『脱ぎたくなくなるほど素晴らしい』との感想を漏らしたそうだ。どうやら、着ると同時に鎧と身体の間に生暖かい謎の物体によって満たされ、恍惚となるらしい。そして、ヘルムを被り完全に着終わったところで彼からの返答は途絶えた……そして、しばらく時間を置いた後、ヴァンダインが復活したのだ」
「え?」
「第二の生贄を得て『黒鎧の騎士』が復活したことで、黒鎧の真の正体が明らかになった。つまり、黒鎧が『黒鎧の騎士』そのものであり、中身の人間は使い捨ての部品に過ぎなかった訳だな」
「待ってくれ! それって一度着たら、もう脱げないとか言うんじゃないだろ?」
「君の言う通り、中身が死ぬまで脱げない。ほとんど呪いや罠のようなものだね。事実、その研究者は死ぬまで黒鎧を脱ぐことができなかったそうだ。すなわち、ヴァンダインの晩年の一年は第二の生贄が務めたというのが真実なのだよ」
アイル皇子は神妙な顔で続ける。
「結局、二人目の生贄が死に再び黒鎧が停止した後、誰も黒鎧の騎士になりたい者などおらず、特別宝物庫の奥に封印され続けてきたという訳だ。まあ、どんな酔狂な者でも死ぬまで部品になりたい者などおらぬだろうからね」
「おい、あんた。クレイになんてモノ、着せたんだ!」
オレが核を壊さなければ、どうなってたことか。
考えただけで寒気がする。
「いやいや、その研究者は一年も持たなかったが、君の想い人ならかなりの長期間、活動できたのではないかと……」
「そういうこと言ってるんじゃない」
「まあ、落ち着きたまえ。実際、クレイ君は助かったのだから、今さらとやかく言うこともなかろう」
アイル皇子は過ぎたことで済ますつもりらしいが、オレには納得できそうになかった。
そんな呪いの鎧を、よりによってクレイに着せるなんて……。
もし、クレイの身に何かあったら、ただじゃ置かないからな。
待てよ。さっき、入っている間は生気を吸われ続けているとか言ってたよな。
そう思って見てみると、クレイの顔は青褪めているだけでなく心無し頬もこけているようにも見える。
もしかして衰弱し切ってるってこと、無いよね?
「ク、クレイ、ホントに大丈夫か? 返事をしてくれ!」
「う……ぅぅっ」
思わず心配になって、クレイをぎゅっと抱きしめると、苦しそうに身じろぎする。
やべっ、ちょっと強く抱きしめ過ぎたか。
少し力を緩めてやると、クレイは苦し気な表情を浮かべた後…………ゆっくりと目を開いた。
「うっ……ん、リデル?」
「ク、クレイ――――!」
「ぐえっ!」
クレイが息を吹き返したのが嬉しくて、再び思いきり抱きしめてしまう。
「クレイ、良かった。クレイ、生きてる……」
「ま、待て……リデル。力を抜け、本気で死ぬ」
「ふん、そのまま死んでしまえばいいのに」
横で見ているイクスが死んだ目で、ぼそりと呟く。
こら、イクス。お前、何てことを!
普通なら聞き捨てならないところだけど、今回はお前のおかげでクレイが助かったから、大目に見てやる。それより、クレイだ。
「クレイ、大丈夫? どこか痛くない?」
「ん? 俺は何ともないけど、ここはどこだ? それにお前こそ大丈夫か?」
「え? ああ、これな……」
エクシィや黒鎧の騎士(クレイ、お前だぞ)に、ぼっこぼこにされたせいで、身体は復元しているけど衣服や防具はボロボロのままだったっけ。
「怪我は治ってるから安心していいよ。そんなことより、クレイ。今までのこと、全く覚えてないの?」
「俺か? そういや、晩御飯を食べたら急に眠くなって……げ、何だこりゃ。何で俺、こんな悪趣味な鎧着てるんだ?」
自分の格好に気付いたクレイが素っ頓狂な声を上げる。
「え、そこから? まあ、いいか。それがさ、いろいろあって…………あれ?」
密着して話しながら、オレはクレイを抱きしめたままでいることに、ふと気が付く。
「……っ!」
オレ、気が動転して何てこと、しちゃってるの?
急に恥ずかしくなったオレは知らん顔して、クレイからそっと離れる。
「リデル……耳まで真っ赤だよ」
う、うるさい、イクス。口に出すな、クレイにバレるだろ。
「と、とにかくクレイ、説明は後だ。あいつを見てくれ」
オレは話題を変えるべく玉座にいるアイル皇子を指差す。
「あれは……誰だ?」
視線を向けたクレイが訝し気な表情で聞く。
「本来ならデュラント四世になってた人。ゾルダート教の邪神一歩手前。全ての諸悪の根源」
「簡潔な説明ありがとう、リデル。大体、わかった」
え、マジ? 理解力ありすぎでしょ。
某人物が復活(>_<)
やっぱり彼がいると話が動かしやすいし、場が明るくなりますねw
貴重なキャラです(死ななくて良かった)
いよいよ最終段階に入って来ました!
次章タイトルは「邪神」の予定です。




