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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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皇宮へ……⑨


 左右の大扉をヒューとソフィアに押し開いてもらい、オレはテリオネシスの剣を構えて中に入る。


 真夜中ということもあり、さすがにシャンデリアには火が灯っていないが、壁に取り付けられた燭台の火が、だだっ広い大広間を薄明るく照らしていた。

 夜目がきくオレやソフィア、暗視能力のあるトルペンに取っては普段通り戦える明るさだ。ヒューも研ぎ澄まされた感覚があるため、万全とは言えないが戦闘で後れを取ることは無いだろう。


 ん? 正面に誰かいる。


 そう思った瞬間、目の前にいた奴が不意に突進してくる。その後ろに、さらに二人いるのが見えた。


 怖ろしいほどの鋭い突きだった。


 けれど、その動きは直線的で単調だ。

 倒すべき敵であったら、避けてやり過ごし、すれ違いざまに切り捨てれば良い。

 しかし、夜目に映った赤毛には見覚えがあった。


 えっと、確かアルサノーク(傭兵団)に入ったクレイの知り合いだっけ?


 オレは、ほんのわずか右に逸れると赤毛の突きを躱した。

 と同時に左脇で突きを放った彼の両腕を挟み込む。

 オレの左胸を的にした突きは体格差から前傾姿勢となっていたので、ちょうど良く捕らえることが出来た。


「ぐ……」


 女性とは思えない剛力で挟まれ、赤毛は進むことも退くこともままならない。


「観念して剣を放せば悪いようには……」


 そう話しかけようとした刹那、オレの直感が顔を天井に向けさせた。


「な……!」


 そこに映ったのは短剣を手に身をひるがえして、頭上から降ってくる黒髪の少女。


 どうやら、後ろにいるもう一人の手を借りて軽業師のように弧を描いて投げ飛ばされてきたようだ。避けようにも赤毛を抑え込んでいるので、身動きが取れない。

 どうやら、こいつは囮だったらしい。


 やるな、三人組。

 だが、残念だったな。

 左手は封じられたが、オレにはまだ右手がある。


「ソフィア」


「はい、リデル様」


 オレは背を向けたままソフィアに剣を投げ渡すと、右手で赤毛の皮鎧をむんずと引っ掴むと、動きの取れない左手も使って赤毛のがっしりとした身体を持ち上げる。


「え? えええ~っ!」


 軽々と抱かかえられて赤毛くんが驚きの声を上げる。

 そしてオレは、そのまま驚愕する赤毛くんを頭上の黒髪少女に向けて、えいやっと投げつけた。


「あ? 馬鹿!」


 飛んでくる同僚に驚きながらも構えた短剣をとっさに手放した少女は両手を広げたまま赤毛くんと空中で激突した。


「うぎゃ」


「ぐえっ」


 くぐもった悲鳴を上げた二人は派手な音を立てながら床に落下した。


「だ、大丈夫ですか。ラドルくん、フィーベルさん!」


 動揺した最後の一人の金髪くんが慌てて二人に駆け寄る。


「いったぁ~。何すんのよ、馬鹿ラドル!」


「しょ、しょうがないじゃないかフィーベル、こんなの想定外だぜ」


「よ、良かった。無事のようですね、二人とも」


 さきほどの殺気は消え失せ、三人はわちゃわちゃと騒ぎ始める。


 何だ、これ?


 オレが呆気に取られていると、オレの後ろからひんやりとした冷気が漂った。


「ラドル、ヴァルリッヒ、フィーベル。どういうことか説明してもらえるでしょうか?」


 言葉は丁寧だけど、有無を言わせない迫力があった。


「す、すみませんでした!」


 三人は姿勢を正し、声を震わせそろって頭を下げた。




「だから、僕は無茶だって反対したんです、それなのに君たちは」


「だってさ、ヴァルリッヒ。俺たちだってそれなりに成長したんだぜ。試してみたくなるのは当然だろ」


「は? あんたのどこが成長したってのよ。相変わらず馬鹿のまんまじゃない」


「何だと! フィーベルだって全然成長してないじゃないか」


「ば、ば、馬鹿ラドルのスケベ! どこ見てるのよ。それにリデルさんよりは成長してるんだから」


「確かに……」


 おい、そこは納得するんじゃねぇ。


 ちなみに赤毛の短髪で図体がでかくて、やや直情的な男がラドル、癖のない金髪に痩せ型の長身で、訳知り顔をした男がヴァルリッヒ、そして挑戦的で強気に見える黒髪ショートの小柄なのがフィーベルだ。

 オレより少しばかり年上のこの三人組は、アルサノーク傭兵団に入団させるためにクレイが一族から呼び寄せた若者達だ。アルサノーク傭兵団が皇帝義勇軍に徴用されたため、その流れで現在は皇帝義勇軍に所属している。


 結局ソフィアが厳しく問い詰めたところ、腕上げたと信じた彼らは、もしオレが潜入してくるようなことがあれば、いっちょ腕試しでもしてみようと考えたようだ。


 全くはた迷惑な話だが、皇帝義勇軍の職務は単純な警備ばかりで退屈極まりないものだったらしく、普段止めに入るヴァルリッヒも珍しく賛成したらしい。

 まあ、皇宮内のここまで敵が潜入することなど、ほぼ無いので暇なのは事実と言っていい。


「それにしても、やっぱリデルさんはスゲーっすね。なりはちっちゃいけど、無類の強さですよね。俺、あの突きにけっこう自信あったんすけど、全然歯が立たなかったですもん」


「まあ、そうね。女としての魅力じゃ全然負けてないけど、武技については、さすが無差別級準優勝ってところよね」


「はい、僕も見ていて感動しました。その可愛らしい姿で、あの圧倒的な暴力……惚れ惚れします」


 さいですか……何か、ちっとも褒められてる気がしないんだが。


「三人とも言葉に気をつけなさい。リデル様は、このように見えてもれっきとした皇女殿下であらせられます。万が一無礼があったら、私が許しません」


 ソフィア……フォローになってないから。


「とにかく皇帝義勇軍の詰め所に参りましょう。この時間ならネフィリカ団長も、まだ起きていらっしゃると思いますので……団長、連絡をもらってから、リデ……皇女殿下のこと、ずっと気にしておいででしたから」


 三人の中で一番常識的なヴァルリッヒくんの案内でオレ達は皇帝義勇軍の待機所に向かうことになった。


 道中で、改めて皇宮内の情報を彼らから聞き出すと、意外なことが分かった。

 何と皇帝義勇軍の警備範囲は中枢区画までで、皇帝の住まう最奥部には立ち入れないのだそうだ。


 そこから先はと言うと、皇帝の近回りの従者や侍女が受け持っているらしい。

 ネフィリカも警備面から立ち入りを要望したが、拒否されたのだそうだ。なので、最奥部の様子は彼ら皇帝義勇軍も皆目見当もつかないとの話だ。

 おそらくゾルダート教の導師や信者が多く配置されているのは想像に難くない。


 やはり、オレの最終目的地は最奥部に間違いないだろうと強く感じた。


あけましておめでとうございます。

旧年中はお世話になりました。

本年もよろしくお願いいたします。


今年度中こは完結したいと思っていますので、引き続き応援願います。

またコミカライズの方も、ぜひともよろしくお願いいたします。


最後になりますが、読者の皆様にとって、良いお年になることを祈念しております。


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