内戦、再び……⑦
申し訳ありません。後半を書き直しました。
パティオの深刻そうな物言いにオレは首を傾げた。
「……えと、それって、どういう意味なのかな?」
それに、そんなに大騒ぎすることなのだろうか。
血が繋がっていることに変わりはないと思うのだけど。
「そもそもですね。アエル様の一族である『呪われし血の一族』には親子という概念が無いのです。もちろん、兄弟姉妹もですが……というのも、かの一族は不死に近い種族なので子を成して一族を増やすようなことが、ほとんどありません」
確かに不老不死なら、人が減らないわけだから、赤ちゃんは必要ないか。もしそうなら、そういう能力が備わっているかさえ疑わしい。
オレは、嬉しげにオレを見つめている少女然としたアエルを、横目でちらりと眺める。
「けれど、ごく稀なことですが、外部的な要因……すなわち戦争や迫害とかでしょうか、短期間に一族の数が著しく減った場合など、半ば強制的に番いを作って子供を作るのだそうです。そして養育は一族を挙げて行い、子を成した二人は養育に参加しない……そういう風習のようです」
「え? 親は子育てに参加しないの?」
「はい、子作りは個に強いる負担が大きいので、当事者の子育ては免除されると聞いています」
それじゃ、親子どころか兄弟関係も理解できないのも当然だ。
そもそも『家族』という発想が無いのだから。
「ですので、『親子』という概念を教え込んだのは、我々人間側……はっきり申せば、かつての神殿の指導者達ということになります」
神殿が教え込む?
「神殿が、かの一族に期待したのは血統裁定官として血統裁判を滞りなく行うことでした。そして、血統裁判というのは、ほとんどが親子関係の有無を審議すると言ってよいものです。そこで、彼ら一族は裁判の過程で血の構成が類似する者達を『親子』と認識するようになったようです」
「それが姉弟でも親子と誤認する理由か……」
「はい、リデル様の仰る通りでございます」
「でも、それってそんなに大袈裟に騒ぐことなの? 親子鑑定って、大抵は年齢が離れているから兄弟っていうことは少ないんじゃないのか」
まあ、祖父さんがお盛んな人で御高齢でも若い娘に子を産ませる例もあるから、兄弟って線も無いこともないけど。
「それも仰る通りです。ただ、血統裁判でのラーデガルト前尚書令の証言でも明らかなように三世は男色家でいらっしゃいましたので、他にお子を作られた可能性は低いです。なので、普通は兄妹より親子と考える方がより現実的と言えるでしょう」
そう言えば、前尚書令のラーデガルトが血統裁判の時に、そんなこと言ってたな。そのせいで、デュラント三世の子供は長子のアイル(四世)と、双子のライル、カイルの三人しかいないんだそうだ。
「ですので、間柄の誤認の可能性はありますが、前回のどちらが正しい皇女かを判定する血統裁判の結果は翻らないということになります」
「なるほど……だから、過誤はあったけど結果は変わらないってことか。なら、それほど重大な過誤とは言えないんじゃないかな」
オレがそう呟くとパティオは難しげな表情で首を横に振った。
「ところが、そうでもないのです。確かに皇女の是非を問うリデル様との血統裁判の結果には影響を及ぼしません。前のデュラント四世が、その……申し訳ありません、本物でないことが立証され、リデル様が皇女でないことは明白となりました。そして、そこに親子・兄妹問題は何ら関係しません」
「うん、それは確かにそうだけど……?」
パティオが何を言いたいのか、さっぱりわからず、オレは訝し気な顔になる。
「ところが、こと帝位継承権が絡んでくると、この点が大きな問題となるのです」
「帝位継承権?」
確か、ずいぶん前にトルペンから、帝室典範の第一条に『帝位は皇帝の血統に属する長子が、これを継承する』とあり、また附則には『帝位継承に性別の差異を認めず』と追記されているって、聞いた覚えがある。
だから、本物のデュラント四世の長子であるガートルードことアリシアは第一帝位継承権を有し、その継承権第一位をもって皇帝に即位したはずだ。
でも、待てよ。万が一、ガートルードが本物のデュラント四世の娘ではなくて、妹だったとしたら、長子では無いってことになる。
そうなると年齢を考慮すれば、継承順位はライル・カイルに次ぐ第三位に落ちることになってしまう。もし、それが事実であるなら、今回の皇帝即位自体が無効ってことになるぞ。
もっとも、それはガートルードがオレと同じ年齢という前提に基づいている話で、アエルのような種族の例もあるので、必ずしも見た目通りとは限らないのだけど……。
けど、そんなことが……。
「……本当に有りうるのか?」
ようやくパティオが深刻になっている理由を悟る。
「可能性が無いとは言い切れません。先ほど話しました通り、普通に考えれば親子と考えるのが現実的でしょう。けれど、三世陛下がいくら男色家で女性を寄せ付けなかったとしても皇帝の立場です。不可抗力で子を成すことはあったかもしれません」
「それって、どういう……」
「三世陛下は豪胆で勇猛な武人として多くの外征を行いました。また『英雄色を好む』を地で行く人物としても知られています。よもや、あの女好きの性格が表向きだけの虚偽の姿だったとは、夢にも思いませんでした」
そうか……たぶん、三世は国民が思う勇ましい英雄像を演じることで人々の心を掴んでいたに違いない。
「ただ、擬態とはいえ、三世陛下は若い頃より侍女を侍らせ、貴族の令嬢と浮名を流し、結婚後は皇后さまをやきもきさせておられました。晩年までその調子でしたので、何かのはずみで子を成す可能性は皆無とは申せません」
果たして、そうだろうか?
今までの話から、世に伝わっている風評より、ずいぶん抜け目のない人物だと感じた。そんな間違いなんて、決して起こさないような気がするけど。
「でもさ……結局の話。もし、ガートルードがパティオの言うように、娘でなくて年の離れた妹だったとしたら、どうなるんだ?」
「はい、考えたくないことですが、最初から四世の娘であるアリシア皇女は存在しないことになってしまいます」
アリシア皇女が存在しない……。
パティオの衝撃的な発言にオレは言葉を失った。
いつも誤字訂正ありがとうございます。
この場を借りて、お礼申し上げます。
気を付けているつもりですが、見落としは多々あります。
とても助かっていますので、これからもよろしくお願いします。
あと、パソコンを新調したので、お絵描きにも挑戦したいです。
皆さんにもお見せできるようになればと意気込んでます。(←たぶん無理)
あ、FAはいつでも熱望していますので、よろしくお願いします(ノД`)・゜・。
追記 後半部分を書き直しています。そのため、いただいた感想の辻褄が合わなくなっていますが、作者のミスのせいです。感想をお寄せくださった方には大変申し訳ありませんでした。




