変転……⑦
正直、面倒くさいと思わないでもなかったけど、情報取集のためには話に乗ってやるしかなさそうだ。
「え~と……じゃあ、二番の渡界人で」
「えっ……!」
仕方なく答えてやると、イクスは声を上げ、目に見えて動揺する。
あれ? もしかして当たりだったか。
「……せ、正解」
急激にテンションが下がったイクスはがっかりした表情で、ぼそりと答える。
さっきまで、あんなに調子良かったのに……ホント面倒なヤツだ。
けど、落胆して口が重くなると困るから、少しフォローしてやろう。
「いやあ、正解できて嬉しいよ。それにしてもイクスはいろんなことに詳しくて博学だよな」
「え? まあ、それほどでも……あるかな。僕の叡智は人とは比べ物にはならないからね」
お、少しは持ち直したか? 単純なヤツめ。
「けど、何でわかったんだ? せっかく第三ヒントまで考えていたのに」
「いや、消去法で……だってお前、神界って柄じゃないだろ。それに妹も一緒にこっちの世界に来てるのなら、変生人も無いかなって」
「……いつもは抜けてるのに、時たま妙に冴えるんだよね、君って」
何い! いつも抜けてるだと?
確かに抜けてるとこあるけど、いつもじゃないぞ、失敬な。
「ま、とにかく正解は君の言う通り、2番って訳だ。詳しくは言えないけど、僕と妹は別の世界からこちらに渡って来た種族なんだ」
別の世界の種族……俄かに信じがたいが、奴の非常識さや能力を考えると、あながち的外れでもない気がした。
「こちらの世界の人は僕たちの世界をよく『魔界』と称することが多いから、強いて言えば僕らは『魔族』ってことになるかな」
イクスは、のほほんと答えるが、他の人が聞けば忌避する事実だろう。
現にソフィアがぎょっとした顔でイクスを見いている。
『魔族』か……イクスを表現するには、ぴったりの言葉だとオレには思えた。
「それでさ、こちらに来た時は、いきなり連れて来られたんで、ずいぶんと往生したのさ。その時に今の主様に、妹と二人さんざん世話になってね。ちょっとばかり恩義を感じてるから、こうして力を貸してるって訳」
部下ではないけど、協力する関係……そういうことかと納得する。
「それでさ、イクス。さっきの『稀人』の話なんだけど」
オレは言葉を選びながら、思い当たったことについて尋ねてみる。
「一番目に話した『天落人』って言うのは、どんな種族なんだ?」
「さっき話した通り『神界』から落ちて来た連中さ。あいつら、元神だったり神の血を引いてたりするんで、馬鹿みたいに強くてさ。その上、人の話を聞かない輩が多くて、僕たちの天敵みたいな連中さ」
イクスはやれやれと言った表情を見せるが、不意にニヤリと笑うとオレに囁いた。
「やっぱり、同族のことは気になるのかい?」
同族……その言葉にオレはドキリとする。
もしかしたら、と思ってもいた。
ただ、はっきりと明言されるのが怖くて、聞くのを躊躇っていたのだ。
意を決して……けれど、おずおずと尋ねる。
「オレの母さんって、やっぱり天落人だったのか?」
「う~ん……たぶん、そうなんじゃないかな。少なくとも僕の主様は、そう信じてるみたい。まあ、君の母君が残した数々の逸話や君自身の能力を見ると信憑性は高いかもね」
オレは文字通り『神の子』あるいは神の血を引く神族なのか。
この馬鹿げた身体能力や不思議な力が、聖石の力に寄るものではないと知った時から、ずっと謎だったけど、ようやくその理由が判明した気分だ。
薄々、感じてはいたが、普通の人間でない事実が明らかになったことで、正直へこむ。
けれど、オレが落ち込んでいるのがわからないのか、イクスは自信満々に話し出す。
「だから、君の伴侶は僕しかありえないのさ」
「どうして、そうなる!」
不意に意味の分からないことを言い出すイクスに、オレは再び拳を向ける。
「だって、君はおそらく不老不死だよ。それに寄り添って生きていけるのは僕を置いて他にはないだろう?」
確かに種族的な特性を考えれば、オレに見合うのはイクスしかいないのかもしれない。
けど、オレの気持ちは……。
「なので、ルマで君と初めて出会った得、僕は感動に打ち震えたよ。やっと生涯を共にできる伴侶を見つけたってね」
そういや、ルマの武闘大会で対戦した時、いきなりプロポーズされたっけ。
願い下げの話なので忘れてたけど、理由を考えると気持ちも分からないでもない。
「大体、考えてみてよ。君の愛しのクレイ君は、人間としては優秀な部類なのかもしれないけど、ただの人間に過ぎない。君と人生を共に歩める資格がないんだ。どうせ、すぐに年老いて、先に死ぬことになる。そうなると残されて傷つくのは、結局君だけなんだ……それに気づかないあいつを僕は許せない」
熱っぽく語るイクスに対し、オレは醒めた表情で返す。
オレの人生を心配してくれるのはいいけど、クレイのことを悪く言われるのは腹立たしかった。
イクスとしては事実を述べただけかもしれないが、オレとクレイの将来を否定されたように感じられたからだ。
だから、オレはイクスに言ってのける。
「許すも許さないも、お前には関係ない。オレの未来を選ぶのはオレ自身で、お前じゃない。勝手にオレの人生を決めるな!」
オレの憮然とした態度に、イクスは目を丸くして驚き、自分の失敗を悟った。
完結のために、伏線の取りこぼしや話の辻褄を確認するために最初から読み直してます。
時々、改定していますので更新表示が出るかもしれません。ごめんなさい。
あと、一時は消そうとした「あとがき」ですが、読み返すと当時の自分の様子が知れて、なかなか面白いですw
それと、今後の展開は意外と早いかもしれません。並行して新作もストックしなきゃ(>_<)




