表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
511/655

変転……④

◇◆◇◆◇◆


「で、どうして、お前はここにいるんだ?」


 静かな川のほとりに場所を移し、血が付いた手や足を洗い流しながらオレはイクスを睨みつける。


「いや、ただの偶然だよ」


 イクスは、のほほんと答える。


「嘘言え。さっきの口ぶりじゃ、ここにいるのがわかってたみたいに聞こえたぞ」


「そんなことはないよ。ここに居合わせたのは本当に偶然なんだ」


「でも、無理してここまで来たって言ってたじゃないか」


「ああ、そのことかい。君のピンチに駆けつけたのは偶々だったけれど、君を追いかけてここまで来たのは本当さ。だから、まったくの偶然とは言えないかもね」


「どういうことだ?」


 オレは岸に上がり、ソフィアから乾いたタオルを受け取りながら、イクスの不穏なフレーズに表情を険しくする。


 オレを追いかけて来たって……?


 イクスはオレの顔色に気付かないのか能天気に話を続ける。


「いやあ、それにしてもリデルの危機に颯爽と現れるなんて、僕もなかなか、たいしたもんだと思わないかい。まさに運命を感じるよ。まるで、白馬に乗った王子様……いや、この場合は公子様かな……」


「……イ・ク・ス……」


 御託を並べるイクスに対し、オレが底冷えする気配を漂わせると、イクスはにこやかに笑みを浮かべる。


「暴力反対! でも、怒った顔も相変わらず可愛いね、惚れ直しちゃうよ」


 歯の浮く台詞に思わず、げんなりする。


 そうだった。こいつは、こういうヤツだった。

 オレが敏感に反応すればするほど、調子に乗るタイプなのだ。

 こういう時は、下手に反応してはダメだ。

 平常心と無反応に徹しよう。


 オレは方針を変え、努めて冷静に尋ねることにした。


「もう一度聞くけど、どうしてオレをここまで追いかけて来たんだ?」


「あれ、怒らないの? 急に大人しくなって、どうかしたの?」


「オレも大人になったんだ。それよりも質問に答えてくれ」


「えええっ? 全然、成長してないじゃん」


 こ、こいつ……。

 イクスの視線の先に気付き、思わず握りこぶしを作るが、ぐっと我慢する。


「……質問に答える気がないなら、もうお前と話す必要はないな。何処へなりとも行ってくれ。オレはソフィアと先を急ぐから」


 オレが素気無く返すと、イクスは急に慌て始める。


「ちょっと、待って。答える……答えるから、結論を急がないで。って言うか、僕は君のために親切にも伝言してあげようとここまで来たんだ。聞かないと、君は一生後悔するよ」


 もったい付けようとするイクスにオレはあえて淡々とした表情で言った。


「わかったから。とっとと話しやがれ」





「まったく、君は相変わらずだね。ま、そこが良いところなんだけどさ」


「ああん? 話すんじゃなかったのか?」


「話すよ、話す。せっかちさんだなぁ」


 オレの剣幕にイクスはニヤニヤしながら、ご機嫌で話し始める。


「実は僕には頭の固い雇い主がいてね。あ、でも別に部下って言うわけじゃないよ、協力者ってところなんだ。で、その人物が君にえらくご執心でね。ぜひ、自分の下へ連れて来て欲しいなんてて言うのさ。でも、僕としては、ちょっと思うところがあって、その要望に応えたくなかったんだ。そしたら、別の者にその任務を命令したのさ」


 イクスは不満そうに口を尖らせる。


「なので、急いで追いかけて来たわけ」


「じゃあ、さっきの怪異を操った術者が別に命じられた者だったんだな」


「いや、それが違うんだ」


 オレが納得の表情をすると、イクスは即座に否定する。

 

「さっきのは大方、フェルナトウの手の者だと思う」


「フェルナトウ?」


「ゾルダート教の高位神官で僕の主の忠実なしもべさ。いけ好かない男でね」


 やっぱり、ゾルダート教が絡んでるのか。

 ……ってことは?


「イクスの主って、いったい誰なんだ?」


「君の頼みなら教えてあげたいところだけど、それはちょっと契約上、言えないことになってるんだ、ごめん」


 イクスは申し訳なさそうに頭を下げる。


「……そうなんだ。まあ、それなら仕方ないけど。お前が、そんな律儀とは知らなかったな。とにかく、さっきの怪異がそうじゃないなら、お前の主とやらが差し向けた奴は、まだオレに接触してないってことか」


「いや、彼女は目的を済ませて、帰途についてるようだよ」


 目的を済ませた?


「どういうことか説明してくれ、イクス」


「もちろんさ。そのために僕はここに来たんだ」


 イクスがドヤ顔で言うので、冷たい視線で先を促す。


「ハーマリーナは……あ、君が聞いている名前はワトスンかな。イーディス(ガートルード)の側近なんだけど。彼女、とんでもなく強いよ。でも、それでもたぶん、君には勝てない。君に五分の勝負に持ち込めるのは僕ぐらいなもんかな」


 オレって、そんな化け物認定されてんだ。そこまで、オレは強くないと思うんだけど。


 それに……。


「イーディスって誰だ? 流れからガートルードのことのようだけど。ガートルードは偽名なのか?」


「ガートルードはバール商会会長クレヴァンス・バール・ウェイの娘としての名だね。本名かどうか知らないけど、僕たちはイーディスって呼んでる」


「イーディス……」


 正直、言っている意味がよくわからないが、ガートールドにもいろいろ秘密があるってことは確かだ。


 ただ、ガートルードの側近がイクスの主から命令を受けて行動するということは、ガートルードもその主とやらの配下なのだろうか?


「ガートルードの側近にお前の妹がいるらしいってユクから聞いたけど、お前もガートルードもゾルダート教に関係しているのか?」


「う~ん、関係あるとも、無いとも言えないかな」


 イクスは首を傾げるが、ぽんと手を打つ。


「互いに利用している関係ってのが一番近いかな」


 おいおい、そんなのが皇帝になって大丈夫なんだろうか。


「話は戻るけど、ハーマリーナは君に勝てないことを承知しているんで、善後策を考えたそうなんだ。そして、君の弱点を突くことが有効と結論付けた」


「オレの弱点?」


「そう、君の相棒。クレイ・ハーグリーブスさ」

イクスがいると話が進むんで助かりますね。

次は目立たないハーマリーナちゃんの話かな。

彼女のイメージは能面無口キャラですw


(注)勘違いがあったので、一部書き足しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=687025585&s
― 新着の感想 ―
[一言] 久々に見る名前も多くて誰だっけ?ってなる( ˘ω˘ ) 大きな蜘蛛(アシダカ蜘蛛)は臆病な性格の益虫なので見逃してあげてください
[一言] ワトスン?そんな人居ましたっけ(笑) リデルはガートルードの名前をイーディスと知っても、本物の皇女じゃ無いことが分かってるから、今更別の名前が出ても驚かないのでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ