その後の顛末……①
「おい、大丈夫か? どうかしたのかい」
ユーリスに肩を揺さぶられてオレはハッと我に返る。
オレ、今まで夢を見ていた……?
いや、ちゃんとユーリスの話も覚えてる。
いったい、何なんだこれは?
どうやら、ユーリスの話を聞きながら、オレの意識は遠のいていたようだ。
また、それと同時に白昼夢のようなものも見ていたらしい。
まるでオレの意識だけが過去に飛んで、親父の視点でユーリスの話す昔語りを体感してきた感じだ。
実際の話、ユーリスが語った内容はあくまで彼の立場で知りえている情報だけだったので、親父や母さんのプライベートな部分はオレが夢の中で得たものだ。
目を瞑れば、母さんや若いユーリスが目に浮かぶほど、はっきり覚えている。
あれが、夢だったとはとても信じられない。
待てよ。前にもこんなことがあったような……。
そうだ。確か、あれはルマでの出来事だ。
イクスにクレイが殺されそうになり、オレの身体が突然光り出してイクスをかろうじて退けた時のことだ。意識を失ったオレは次に目が覚めるまでの間、おかしな夢を見たのだ。
誰かの視点で、オレそっくりの金髪の少女がイスケルド城の前で表情豊かに驚く仕草を見せる夢……そう今なら、わかる。あれは親父の視点で母さんを見たものだ。
先ほどの白昼夢で見た女の人と瓜二つだったから、間違いないと思う。何故、母さんでなくて親父の視点なのかは謎だけど、今回もおそらく同じような現象なのだろう。
まあ、おかげでよく知らなかった母さんのことがわかって、オレとしてはすごく嬉しかったけど。
でも、オレの前ではいつも偉そうにしてたけど……親父、あんた相当ヘタレだったんだな。
見ていて、めちゃ恥ずかしかったし、優柔不断すぎて何度も殴りたくなったよ。
それに親父もアレだけど、母さんも相当おかしい。
何なんだ、あの行動と言動は?
あの美貌であの性格は、かなり面倒くさいと思う。
オレなら、絶対に寄り付かないと断言できる。
よく二人とも結婚できたな。
ある意味、オレは奇跡の子かもしれない。
でも、待てよ。親父、変なこと言っていたな。
母さんが「墜ちてきた」って……しかも、この世界の者でないような言い草だったし。
どういう意味なんだろ。
どうせ、親父視点になるなら、出会いの場面も映してくれたら良かったのに。
オレが不満げな顔をしていると、ユーリスが言った。
「どうするね? 眠いようなら、続きは明日にしてもいいが」
オレがぼんやりしていたので眠いのだと判断したらしい。
「ごめん、大丈夫だから続けて」
オレの返答にユーリスは「そうか」と頷き、続きを話し始めた。
「確か、フォルムス帝国がメルヴェ城砦に攻め込んで来たところまで話したんだな」
「そうそう、師匠が駆け込んで来たとこまでだよ」
「師匠は止めろって言ったじゃねえか。ん、駆け込んで来た? そりゃ、どういう意味だい」
「し、師匠って呼ばないと約束するから、早く続きを話してよ、ユーリスさん」
「ユーリスで構わねえよ……まあ、いいか。続きを話すぞ」
「うん、お願いします」
危ない危ない、うっかり変な夢のことがバレるところだった。
「でだな。フォルムス帝国の奇襲にメルヴェ城砦は――――」
ユーリスの話は次のようなものだった。
突然、攻め込んで来たフォルムス帝国軍にメルヴェ城砦側は大混乱に陥ったそうだ。
というのもフォルムス帝国は当時、隣国のアルセム王国との関係が悪化しており、開戦も近いと噂されていたので、よもやメルヴェ城砦に兵を差し向けるとは夢にも思わなかったらしい。
しかも、皇太子が前線視察に来るというタイミングで、城砦内もお祭りのような空気で警戒感が薄れていた状況にあった。
どうやら、密偵などを砦に紛れ込ませ、用意周到に準備を進めていたようで、こちらの内情は敵に筒抜けだったことが後に判明している。
わざわざ、皇太子の視察時期に合わせて奇襲を行ってきたのは決して偶然ではなく、防御態勢の低下を見越して城砦陥落を狙うと同時に皇太子までも人質に取ることが念頭にあったようだ。
まさに親父は貧乏くじを引かされる運命にあったわけだ。
さらに悪いことに、敵側は念には念を入れるため、砦内に潜入していた密偵の女に城砦司令官を寝所で襲わせるという謀略を使ってきた。
密偵はすぐに打ち倒されたが、司令官は重傷を負い防戦の指揮を取るのが不可能になってしまったのだ。それにより、城砦側は指揮系統が大混乱し、陥落は時間の問題と誰もが思う状況にあったという。
「その状況で、いったい何が起こったんだ?」
帝国の軍事史に明るくないので詳しくは知らないが、皇女候補の授業で聞いた史実ではメルヴェ城砦は一度も陥落していないと覚えている。
けど、今の話を聞く限り、その状況では陥落しない方がおかしいと思えた。
いったい、何が起こったのか……疑問に感じてユーリスに問いかけると、彼はニヤリと片目を瞑ると少し嬉しそうに言った。
「そこで、我らがデイル様の出番ってえ訳さ」
短めで、ごめんなさい。
仕事の多忙や体調不良に加え、父の一周忌の準備とリアルが立て込んでいるため、時間がありませんでした。年末はさらに忙しくなりそうなので、更新の遅れはご容赦ください。




