思わぬ再会……②
「お、無事に帰って来れたんだな」
クレイは、さも気にかけていなかったような振りでオレに声をかける。
けど、オレの人間離れした聴力は誤魔化せない。
この部屋まで全速力でやって来て、扉の前で息を整えてから入って来たことなどお見通しなのだ。さらにクレイの後ろに控えているソフィアがクレイの台詞に口元を緩めているので、バレバレだ。
「ただいま、クレイ。なんとか無事に目的を果たして帰って来られたよ」
オレはクレイの強がりには気がつかなかった体で、言葉を続ける。
「アエルとジルコークさんも無事に連れて来られたし、血統裁判にも協力してくれるって」
「そりゃ、良かったな」
気のない返事だけど、内心ほっとしているのが傍から見てわかる。
「で、あれはいったい何なんだ?」
いつの間にか、オレの『あんなこと、こんなこと知ってる自慢』になっているノルティとアエルの言い争いを怪訝そうな表情でクレイが眺める。
「き、気にしないでくれ。まあ、ある種の親交を深めるためのレクリエーションみたいなものだから」
「そんなものなのか?」
「そんなものだよ」
オレはきっぱりと断言して、何か言いたそうなクレイの反論を封じる。
「……ソンナ訳デ、一緒ニ旅シテタカラ、りでるノ寝顔、見放題ダッタゾ」
「ぐぬぬ……」
アエルがオレと一緒に旅をしていたことを自慢げに話す。
「わかりました。ここは仕方ありません。ボクもとっておきの話を提供しましょう……リデルの今、履いているパンツの色はですね……」
「ノ・ル・テ・ィ……」
「ひっ」
オレがドスの効いた声を一言を発するとノルティが飛び上がる。
「二人ともいいかげんにしろ。仲が良いのわかったけど、そろそろ不毛な議論は終わりにしたらどうかな?」
「仲良くないですし、不毛でもありません」
「仲良クナイ、不毛ナイ」
オレの発言に二人は声を揃えて否を唱える。
こういうところは、息がぴったりだ。やっぱり相性がいいんじゃないだろうか。
たぶん、絶対に認めないだろうけど。
「クレイ殿、ご無沙汰しております。いつぞやはお世話になりました。この度は『血統裁判』を開くのにあたり、アエル様を呼んでいただき、まことに感謝申し上げます」
「いや、ジルコークさん。『血統裁判』はアエル様があって、成り立つものです。ご依頼をするのは当然の帰結でしょう」
クレイとジルコークの大人組は、オレ達の茶番を無視して話を進めていた。
「それで、この後の段取りはどのようになりますか? すぐに中央大神殿で『血統裁判』を行うのでしょうか」
「いえ、たぶんガートルード側は俺達が『血統裁判』を企図していることに気付いてないでしょう。それに、その話は向こうにとってはとても不利な話です。表立って動いては、裁判に応じない可能性があります」
「それはそうですな。白黒ハッキリされて困るのはあちらの方ですから」
「ええ、なので一計を案じました」
「と言いますと?」
興味を示すジルコークにクレイは答える。
「ガートルードは例の謁見の間における政変の折に、自分が本物である証のデュラント4世の『護りの紅玉』について、大神殿の『天帝の間』に出向いて真贋を判定してもかまわない、と明言したことが一部では知れ渡っています」
「ほう、それは自信満々ですな」
「ですので、帝国参事会の要請で『護りの紅玉』の真贋を見極める場を設けてもらおうと思っています。これなら、ガートルードも応じざる得ないはずです」
「確かに妙案ですが、はたして帝国参事会がこちらの都合どおり動いてくれましょうか」
「その点については抜かりありません。すでに参事会のメンバーに密かに接触し、それについての提案を内々で行ってもらい、参事会の承認をすでに受けています。まあ、参事会としてもガートルードが本物の皇女か見極めたかったようなので、渡りに船だったようで……」
そうか……アーキスのおっさんか。
立派な髭を蓄えた老将軍の顔が浮かぶ。
オレのためにクレイの提案を呑んでくれる奇特な参事会のメンバーと言ったら、あのおっさんしか考えられない。
大方、オレのことを心配しての行動なのだろう。いつか、ちゃんとお礼をしたいけど、当分は無理そうだ。
「なるほど、それでは」
「ええ、『護りの紅玉』の真贋判定を餌にガートルードをおびき出して、『血統裁判』に持ち込むつもりなのです。しかも、帝国参事会の面々を証人に巻き込むというおまけ付きです」
むむ、オレがアリスリーゼに行っているわずかな間に、ここまで悪巧みをしてるとは。さすがはクレイというか、悪知恵が働くというか……いや、一応これは褒め言葉だから。
「リデル、今度はこちらの番だ。一気に巻き返すぞ」
「ああ、わかった。オレ、頑張るよ」
オレはクレイの期待に応えるべく力強く頷いた。
しばらく、お休みした反動というか、待っていて下さった方が多くいらっしゃったのか、ここ数日アクセス数が伸びていて、感激しています。
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