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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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カンディア武闘大会……④

「……知らないけど?」


「リ、リデルさんが知らないのも当然です。古い話ですから」


 オレの返答にクレイが「そうだろうな」という表情をし、少し酔いから醒めたネフィリカが慌てたように言い訳する。

 オレが疑問符を浮かべていると、クレイがアルサノーク傭兵団の来歴を講義してくれた。




 かつて、皇帝リフテ三世の治世の時代、帝都で大規模なクーデターが発生した。宰相ザルクマンと皇帝の弟ミゲルフォンが結託し、リフテ三世を弑逆しようとしたのだ。

 異変を察知した三世はいち早く皇宮外へと脱出を図るも、近衛軍の一部も加担していたため、進退に窮する。


 ところが、南門の警備についていたアルサノーク傭兵団の初代団長レイドリック・アルサノークは義侠心から皇帝の窮状を救い、皇宮外へと逃がすことに成功した。

 その上で、身命を賭して脱出先であるイスケルド城までの護衛を買って出る。


 三世はいたく感激し、史上初めて皇帝自ら傭兵団を直接雇用することとなった。


 やがて、追っ手と幾度と無く激戦を繰り返しながら、辛くもイスケルド城へと逃げおおせることができたが、当初63人いた傭兵のうち生き残ったのはわずか14人で、レイドリックも最後の戦いで殿しんがりを務め戦死している。

 その後、諸侯の軍勢を集め帝都を奪還し、クーデターを鎮圧した三世は論功行賞の一番にアルサノーク傭兵団の業績を挙げた。


 三世は、生き残ったアルサノーク傭兵団の二代目団長である息子のセドリック・アルサノークを貴族に叙そうとするが、諸事情があり断念する。

 一説にはアルサノーク家が外国人であったため、あるいは当人からの強い固辞があったためなど諸説あるが、真相は不明のままだ。

 けれど、貴族にすることを諦めた三世は、その代わりに勅許状を与え、皇帝の身辺を警護する役目を命じた。


 世に言う『皇帝直衛傭兵団』である。

 以後、皇帝の身辺警護は皇帝直衛傭兵団が担うこととなった。さらに、帝国に事ある時には傭兵団を束ねる権限も勅許状には付与されていたのである。


 時代は流れ、デュラント家に皇帝の家系が移った際に、直衛傭兵団は解体され、一傭兵団に戻ったが、その権威は今も連綿と息づいていると言う。

 そのせいかはわからないが、ネフィリカの父親である先々代のエイナス・アルサノーク団長もオスフェルト伯爵に重用されていたのだそうだ。




「……と、まあこんな感じだが、間違ってないか?」


「はい、そのとおりです。よくご存知ですね、驚きました」


 クレイがネフィリカに確認すると、目を丸くしながら頷いた。


 相変わらず、物知りな奴だ。


「で、質問なんだが……皇帝勅許状、今は誰が持ってるんだ?」


 クレイは笑みを消して、ネフィリカを見つめた。


「それは秘密です。……と言いたいところですが、誰もが知っていることなので、お教えします。勅許状は団長が代々引き継ぐことになっていますので、兄から引き継いだ私が所有しています。ただ、誰にもわからないところに隠してはありますが……」


 ロスラムがネフィリカを欲する理由はわかった。けど、そんな古臭い書状一枚にそれだけの価値があるんだろうか?


「あと、もう一つ。勅許状には、その事ある時に備えて隠された財宝の位置が記されているっていう噂は本当かい?」


 なに、財宝とな。


 オレが目を輝かせるとネフィリカは苦笑いする。


「全くのでたらめです。よく耳にする噂ですが、そんな都合の良い話なんてありません。そのお金があったら、アルサノーク傭兵団は今のような体たらくにはなっていないでしょうね」


 なるほど、ネフィリカの言葉にも一理あるし、隠し財宝というのも、さすがに現実離れし過ぎていると思う。


「ま、必ずしも嘘とばかりは言えないんだが……」


 クレイが小声でぼやくのをオレは聞き逃さなかったが、あえてこの場で追及するのは避ける。

 どうせ、クレイのことだ。何らかの裏情報を握っているに違いない。

 あとで、きっちり聞かせてもらおう。


 とにかく、アルサノーク傭兵団が由緒正しい権威のある傭兵団であることと、それを取り巻く状況については理解した。

 しかもネフィリカの弁によれば、ロスラムは廃業寸前のアルサノークの名跡みょうせきを惜しみ、善意と義侠心からネフィリカを娶り、アルサノーク傭兵団を再興しようしている――そういう触れ込みで、ネフィリカに婚儀を持ちかけているのだそうだ。


 なので、武闘大会でアルサノーク傭兵団が上位に入賞すると、その前提が崩れ、具合が悪くなるため、大会参加を執拗に妨害してきたのだと言う。

 となると、今後もロスラムからの妨害や嫌がらせは続くと予想され、特にネフィリカの安全には細心の注意が必要だという結論に至った。


 ソフィアには悪いけど、当分はネフィリカの護衛役に徹してもらうことになりそうだ。


「ねえ、ネフィリカ。もし良かったら、しばらくオレ達と一緒に寝泊りしないか? せっかく仲良くなれたんだし、もっとネフィリカのこと、よく知りたいんだ」


「え! そ、そんな……」


 オレの言葉に、お酒で赤かったネフィリカの顔がますます赤くなる。


 あれ、オレ何か変なこと言った?。


「ダメかな?」


「そ、そ、そんなことありません! こちらこそ、ぜひお願いします!!」


 オレの手を、ぎゅっと握って勢い込んで返答するネフィリカの後ろで、ソフィアが生温かい目でオレ達を見つめていた。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

感想等いただけたら、泣いて喜びます。


次回の更新は2月1日(水)の0時の予定です。

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