Take me out to the ...game ③
迷路のような通路を歩き、奥まった部屋に案内された。
「すまんが、わしはこの後、やぼ用があってな。ラドベルクを紹介するまでは同席したかったんだが時間がないのだ」
将軍はオレにここでしばらく待つように告げると、名残惜しそうに立ち去った。まぁ、オレとしても立ち入った話をするつもりだったから、二人きりになれるのはありがたい。
案内された部屋は静かだった。
遠くでかすかに聞こえる観客の歓声がなければ、ここが闘技場であることを忘れそうになるほどだ。調度品も高級そうで、一見して貴賓室とわかる。価値がわからない絵画や置物が上品に飾られていた。座っているソファーもふかふかで、オレみたいな貧乏人はお尻がもぞもぞしそうだ。
部屋付きの給仕をしている女性が、お飲み物はと聞いてくる。調度品と同じように上品そうな女性に見えた。
「あの……それって無料なの?」
「はい、こちらの部屋のサービスでございます」
にこやかに答えるが、一瞬蔑みの表情を見せたのをオレは見逃さなかった。
「……いりません」
将軍のゴチだと思うけど、なんとなく嫌だった。
彼女は頭を下げると脇に控える。
しばらくして、ノックの音がした。
すかさず、彼女は入り口に近づき扉越しに会話を交わすと、オレの方へ振り向いて言った。
「ラドベルク様という方がお訪ねですが、いかがいたしますか?」
「あ、入室をお願いしてください」
いかがも何も彼を待ってたんだから早く入れろよ! と言いたいところを我慢して入室を促す。
彼女が二言三言と扉の向こうに話しかけると、ゆっくりと扉が開く音がした。
いよいよだ……念願のラドベルクに会える!
恋人に会う時って、こんな気持ちなのかな? オレは期待と不安で心臓がドキドキしていた。




