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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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二人旅 ②

「おい、大丈夫か? 目が虚ろになってるぞ」


 物思いに耽るオレを心配そうにクレイが見つめていた。


「あ、ごめん。続けてクレイ」


「ああ、人の多いカンディアを避けるという案もないこともないが、傭兵という身分で旅するなら、カンディアを通らないのは逆に不自然だしな」


 カンディアには多くの傭兵団が拠点を置いていて、傭兵の街としても有名なのだ。

 

「が、さしあたってはジュバラクへ向かおうと思う」


 ジュバラクというのは、今いる村からしばらくした所にあるこの辺りで一番大きな街だ。

 領主はゼノールだかザノールとかいう男爵だったはずだ。


「お客さん達、ジュバルクに行きなさるんで?」


 料理を運んできた宿屋の主人が驚いたように尋ねる。


「そのつもりだが、何か不都合なことでもあるのかい、親父さん」


「ああ、悪いことは言わん、ジュバルク周辺にゃ近づかん方がええ」


「ほう、そりゃまた、どうして?」


「盗賊団が頻繁に旅人を襲うんでさ」


 主人の言葉にオレとクレイは顔を見合わせた。




 確かに両陣営の境界線は小競り合いが絶えないため治安が悪かった。

 逃亡兵や契約切れの傭兵が野盗になったりするのも、よく聞く話だ。

 ただ、最近は小康状態が長く続いていた上、皇女が帰還したこともあり、戦端が開かれる可能性がずっと下がった。

 そのせいで、境界線の治安も目に見えて回復してきたと耳にしている。

 今回、アリスリーゼ行きに最短ルートを選んだ理由もそこにあった。


 本来、主街道と呼ばれる帝国が整備した帝国各地から帝都を結ぶ街道を通るのが、遠回りになっても比較的安全な経路だ。

 けれど、先を急ぐ旅であること、道程の治安回復が期待できること、傭兵という身分を活かせること、この3点からカンディア経由で境界線沿いの道を進むこととなった。 

 

 まさかの盗賊団だ。


「よりによって、このタイミングで暴れなくても……」


「悪党の考えることに文句を言っても仕方ないだろう」


「でも……」


 オレが口を尖らすと、宿屋の主人は言った。


「どうしてもジュバラクに行きなさるなら、この先の噴水広場にゼノール男爵の護衛隊が来てますんで、同行を頼んだらどうです」


「護衛隊?」


「ええ、ジュバラクからこの村にやってきた商人や旅人を護衛してきた者達でさぁ。盗賊団が現れてから、男爵様が行き来に護衛を付けて下さるようになったんで……もっとも護衛料が必要ですがね」


 金をとるのか……ちゃっかりしてやがる。


「どうするクレイ?」


「そうだな……」


 どのくらいの規模の盗賊団かは知らないが、クレイとオレなら相当の手練れが何人かいるか、よほどの大人数で囲まれない限り、切り抜けられる自信はある。

 ただ、たった二人で盗賊団を向こうに回して勝つようなことがあったら、目立つことこの上ない。


「あまり注目を集めるのも良くないしな、ここは護衛隊に一口乗せてもらおうか」


「了解だ」


 初手から目立って騒ぎを起こすのは賢明な策じゃない。

 朝食が済んだら、宿を引き払い噴水広場とやらに向かうことにした。



 ◇◆◇◆◇



「そ、そんなお金とても払えません」


 広場に若い女性の声が響いた。


 オレ達が広場へ着くのと同じくらいに広場では一騒ぎ起こっていた。

 見ると10代後半と思われる女性とジュバラクの護衛隊の隊長と揉めているようだ。


「払えないなら、自分一人でジュバラクに行けばいいだけだろう。こちらとしても無理に護衛したいわけじゃない。それに上手くすれば盗賊団に遭わないかもしれんしな」


「そんな……」


「他の人間は、ちゃんと払っているんだ。例外を認めるわけにはいかんだろう」


「でも、先ほどの方より明らかに高くなってます」


「当たり前だろう。あんたは自分の価値がわかってないのさ」


「私の……?」


「そうさ、あんたみたいな別嬪さんを連れて行ったら、盗賊団に襲われる可能性が高まるんだよ」


 確かにその女性の容姿は優れていた。

 村一番の美人と言われれば納得するレベルだ。


「だから、割り増しの料金をもらうのは当然のことさ」


 護衛隊長の言葉に若い女性は絶句する。


「だがしかし、俺も人でなしってわけじゃない。あんたがジュバラクに着いたら、俺と一晩付き合ってくれるなら、割り増し分の減額どころか半額にしてやってもいいぜ」


 ニヤニヤしながら女性の体を嘗め回すような視線を向ける。


 こいつ、最低な奴だ。

 そう思った瞬間、身体が動いていた。


「お姉さん、こんな奴に頼るのを止めて、オレ達を雇ったらどうだい?」


 二人の間にオレが割って入ると、お姉さんは目を丸くし、護衛隊長は唖然とした顔をした。


 後ろで、クレイが盛大にため息をつくけど、知ったこっちゃない。


「何だ、坊主。傭兵か? 下らん横槍は止めておけ。痛い目を見るぞ」


「ふん、痛い目に合うのはどっちかな」


「何だと!」


 腹を立てた隊長が剣の柄に手をかけ気色ばむと、他の護衛隊の連中もざわめいた。


「お姉さん、こっちに」


 あたふたしている女の人の腕を引いて自分の後ろに下がらせると、オレは隊長に向き直る。

 大柄な隊長はオレを見下ろすとせせら笑って言った。


「小僧! 後悔するぞ」


「そっちがな!」


「おいおい、何で、こう揉め事を起こすかな……」


 一触即発のタイミングにクレイが諦め顔で、オレと隊長の間にのんびりと入ってくる。


「なんだお前は? 関係ない奴はすっこんでろ」


「まあまあ、そういきり立ちなさんな。一応、そいつの保護者って立場でね」


「何だと!」


 恐ろしい形相でクレイを睨みつける。

 

 クレイは涼しい顔で懐から小袋を取り出すと、回りから見えないように護衛隊長の男にそっと押し付けた。


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