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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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帝国参事会 ①

「皇女殿下が御入室されます。方々、臣下の礼をお取りください」


 ケルヴィンの招きに応じて、オレは取り澄ました表情で参事会が行われる『碧天の間』に進んだ。

 オレが長テーブルの上座の席に座ると、ケルヴィンが列席者に声をかける。


「ご着席ください」


 頭を下げ、恭順の意を示していた一同は面を上げると、ゆっくりと着席した。


 オレの左手にはトルペンが座る。

 どこへ行っていたかは知らないが、どうやら会議に間に合ったようだ。

 姿形も大人のトルペンで例の仮面もしっかり付けて座っている。


 全員の着席を見届けた後、ケルヴィンが空いていたオレの右手の席に座ると場が少しざわめく。

 たぶん、序列しては三番目の席だからだろうか。


「それでは、これより定例の帝国参事会を開会いたします。最初にご臨席の皇女殿下よりお言葉を賜りたいと存じます……それでは殿下、お願い申し上げます」


 ざわめきが静まり、一同の視線がオレに集中するのがわかる。


 興味、関心、好奇、落胆、侮蔑……さまざまな感情を孕んだ視線に、気後れしそうになるのを必死にこらえ、平然とした素振りで言葉を紡ぎ出す。


「アリシア・プレジィス・イオ・デュラントである。会に先立ち、まずは皆に礼を言いたい。皇女である私の不在の間、帝国をよく支えてくれたことに深く感謝する。ここに私が再び戻ることができたのも皆の尽力によるものと理解している。本日の参事会も忌憚の無い意見を交わし、帝国の更なる発展のために有意義な会となるように願う」


 言い終えて軽く目礼すると、ケルヴィンが大げさに反応する。


「もったいないお言葉でございます。臣下として当然の責務を果たしたまでのこと。ここにいる一同、殿下のご帰還を心よりお喜び申し上げます。皇女殿下におかれましては、本日の参事会にご助言者としてご参加いただけると伺っております。何卒、高位のお立場からのご指導、よろしくお願いいたします」


「先達の皆に意見など笑止極まりないが、努力することを約束しよう」


 よし。ここまでは、台本どおりにできたぞ。

 ケルヴィンに目で合図を送ると、他の列席者にわからぬよう、かすかに頷いてくれた。

 一応、及第点はもらえたようだ。


 オレがほっとしていると、続けてケルヴィンが言う。


「それでは開会いたしますが、今回は皇女殿下を始め、初めて列席する者もおりますので 会に先立ちまして列席者の紹介をいたしたいと思います。それでは恐れながら小官が紹介を……」


「待たれよ。ケルヴィン殿」


 一同の理解を得たと列席者の紹介に移ろうとしたケルヴィンに突然、制止の声がかかる。

 見ると、猿のような顔付きの小柄で貧相な男が皮肉めいた表情で手を上げていた。


「ネルレケス内政官、いかがいたしました?」


 ケルヴィンがにこやかに尋ねる。

 作り笑いが微妙に怖い。


「私の記憶違いでなければ、この場にふさわしくない人物が紛れ込んでいるように思えるのだが」


「仰っている意味がわかりませんが?


「何を言っておるのかね、ケルヴィン君。君のことを言っているんだ。いったい何の権限があって、この会に参加しているのだ? あまっさえ議事まで進行するなど、正気の沙汰とは思えないのだがね」


「事前に通達をお出ししているはずですが?」


「内政官に昇格したなど、我々は認めていないぞ」


「失礼ながら、宰相補が奏上し、殿下がお認めくださっております。また、前尚書令ラーデガルト様、前聖神官ニールアン様にも了承をいただいております」


 名前を出された両者が鷹揚に頷く。

 すでに根回し済みってわけか。


 さすが、腹黒ケルヴィン。


「ネルレケス殿、釈然としない心情はお察しします。しかしながら、同じ内政官同士、参事会の議事が円滑に進むよう寄与していこうではありませんか」


 お前も同じ内政官に過ぎないから文句言うな、という言外の言葉にネルレケス内政官は猿のような顔を歪めて沈黙する。


 うん、オレの頭の中で、お猿さん=ネルレケス内政官と認識された。

 人が多くて、誰が誰だかわからないので、動物で分類することにしよう。


「それでは当初の予定通り、列席者の紹介を行いたいと思います」


 一同を見回し反対の声が上がらないの確認すると、ケルヴィンは続けた。


「上座から順にご紹介いたします。殿下の左手は『カール・トルペン』宰相補でございます」


 トルペンが黙って一礼する。

 まあ、今日はしゃべれないからね。


 まあ、それにしてもよく間に合ったな。

 空間転移だか何だか知らないが、すごい魔法だ。

 腐っても、さすがは大魔法使いを名乗るだけのことはある。

 

 ご自慢の幻覚もたいしたものだ。 

 触らなければ、幻覚とは絶対にわからないだろう。

 これじゃ、目の前の起こることをうかつに信じられなくなる。





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