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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
〇〇なんて今さらオレが言えるかよ!
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徘徊する幽霊とオレ 前編

「やっぱり無理しない方が良いと思うのですけど」


 ユクが心配そうに覗き込む。


 一日休んだだけで、オレは講義に復帰した。

 もっとも、最終週に近くなり、必修の講義は数えるほどしかなく、自主勉強の時間が大半となっていたけど。


 今日の必修講義もすでに終わり、今はいつもの面子で談話室に篭って自主勉強をしていた。



「あ、ううん。確かに体調は良いとは言えないけど、大丈夫だよ」


 心配げなユクの問いかけに笑顔を見せる。


「そうですか? でも顔色、良くないです」


「そんなことないよ。ほら、こんなに元気だから」


 無理して身体を動かして見せる。


「それなら、いいですけど……」


 ユクには虚勢を張ったけど、実際は絶不調だ。


 その理由は体調のせいばかりとは言えなかった。

 昨日のアレイラとの話し合いが不調に終わったことも後を引いていた。


 オレが見たところ、今でもアレイラとガレアは相手のことを想っていると感じた。

 それなのにお互いの立場やしがらみのために諦めなくちゃいけないなんて、どうにも納得できなかった。


 シンシアが言うには、貴族でなくても農家や商家でも娘の嫁ぎ先を家長が決めることは、よくある話だそうだ。

 あいにくオレは、そういった堅苦しいしきたりには無縁で育ったので、とうてい理解の外だった。


 あ~なんか、イライラする。


 オレが不機嫌そうにしていると、オーリエがニヤリと笑いながら話しかけてくる。


「そう言えばリデル、例の噂を聞いたか?」


 どきりとしてオーリエを見る。

 あの最終試練の噂が耳に入ったのかと緊張する。


「どうやら、この宮殿に出るんだと……」


「出る?」


 どうやら違う噂らしい。


 オレが安堵したの見て、不思議そうな顔でオーリエは続ける。


「なんだ、知ってたのか」


「いや、知らないよ。何が出るんだ」


「…………幽霊さ」



 自慢じゃないけど、オレは幽霊の類いが大の苦手だ。

 凶悪なモンスターや魔法生物は全く怖くないけど、霊的な存在はどうにもダメなんだ。

 だって、剣で切れないものって、得体が知れなくて……怖くないか?


 ずいぶん前にもクレイが寝る間際にわざと怖い話をしやがって、本気で怒ったことがあったっけ。

 とにかく、そんなオレとしては内心びびりまくりだったけど、平然とした顔で返答を返す。


「そ、そうなんだ。まぁ、よく聞く話だよね」


「お、リデル嫌いじゃないな、この手の話」


 いやいや嫌いだから。


「こういう場所って、必ず曰く付きの話があるよな。なんかワクワクしてこないか?」


 全然、ワクワクしませんってば。

 大体、オーリエさん目が輝いてますよ、大丈夫ですか?


 オレが意図的に沈黙し、話を流そうとしたけど、横から別の声が割り込む。


「オーリエ……幽霊……根拠ない……たぶん見間違い」


 ノルティ、余計なことを。


「お、ノルティは信じてないのか、私はいると信じてるぞ。だが、確かに検証が必要だな…………よし、私達でこの幽霊騒ぎの真相を解き明かすってのはどうだろう」


 オーリエが嬉しそうに提案する。


 あ、やっぱり。

 嫌な予感はしたんだよね。


「いいだろう、リデル?」


「リデル……一緒に調べる……」


 どうやら有無を言わせないつもりのようだ。


「オ、オレはかまわないけど、ユクはどう思う?」


 オレは黙って聞いているユクに助けを求めた。


「……えっ、あたしですか。みんなの意見に合わせますよ」


 どこか心あらずな様子でユクは同意する。


「じゃ、決まりだ」


「決まりです」


 ええぇぇ――――――――!


 オレの心の悲鳴に誰も気付かず、幽霊話の真相解明に乗り出すことが決定した。





 結局、昼間は情報を収集し、夜中に探索することになったのだけど、オレは体調不良を理由に昼の調査を免除された。


 オレとしては、ぜひ夜の部の方を免除して欲しかったけど。


「いや、夜のお楽しみのため、昼間はゆっくり休んでくれ」


 オーリエからありがたい言葉を賜り、オレは無理矢理休養させられた。


 幽霊なんて存在しない……幽霊なんてまやかし……。


 ベッドに横になり、天井を見つめながら自分に言い聞かせる。

 そうこうしている内に、体調が思わしくないせいか、いつの間にかぐっすり眠っていた。


 夜更けにシンシアが起こしてくれたけど、完全に呆れ顔だ。


「オーリエ様からお話は聞きました。お止めしませんが、夜中に騒ぎを起こして、人様の迷惑にならないようお願いします」


 オレだってやりたくない……っていうか止めてくれ。


「それにクレイ様達に秘密で行動するというのも、如何かと思います」


 だって、男を入れると面白みに欠けるって言うからさ。


 まぁ、クレイがいたらオレの幽霊嫌いがすぐにバレただろうけど。


「とにかく気をつけるよ。シンシアに決して迷惑かけないようにするから」


「本当にそうならいいんですけど……オーリエ様から伝言です。他の皆様は日付が変る頃、談話室に集まる予定だそうです。その前に何か召し上がりますか?」


「うん、お腹すいた」


 温めたスープは眠気覚ましには丁度良かった。




 簡単な食事を済ませると、オレは談話室に向かう支度を始める。


 今夜はクレイもいないし、スカートは止めて動きやすいパンツスタイルにした。

 難敵に備え、テリオネシスの剣を装備したいところだったけど、クレイが保管してくれていたので、泣く泣く諦めるしかなかった。


「シンシア、いつ帰ってこられるかわからないから、先に休んでくれていいから」


 そう言っても起きて待っているだろうな、と思いながらも一声かけて部屋を後にした。




 談話室に入ると、すでに一同がそろっていた。


「お、やっと来たな、リデル」


「リデル……待ってた……」


「こんばんは、リデル。体調は大丈夫ですか?」


「これは、リデルさん。幽霊探索、楽しみデスネ」


 あれ、何か一人多いような……。


 一同を見渡すと、いつもの顔ぶれとは明らかに違う奴が交じっていた。


「おい、お前。ここで何してる?」


 マスクを付けた彼を冷たい視線で睨む。


「あれあれ、可愛い弟子に頼まれたら時間ぐらい作りますヨ」


「ノルティ……」


 非難の目を向けると、ノルティはオーリエの影に隠れる。


「リデル、トルペン先生に来てもらったのには理由があるんだ」


 オーリエが申し訳なさそうに続ける。


「とにかく、昼間に手に入れた情報をもう一度、確認しよう。リデルも座ってくれ」


 オレが席に着くのを待ってオーリエが再び口を開く。


「ここ最近、宮殿で起きている怪現象や噂されている幽霊について、昼間に情報を集めた。リデル、君が来るまで皆に報告してもらったが、要約すると次のようになる」


 幽霊が目撃された場所は、エントランスホール・食堂・中庭・1階大ホール・2階中央階段・謁見の間の6箇所。

 それに関連しているかわからないが、エントランスホールにあるモニュメントと中庭にある石碑が何者かに壊されるという事件が起きていた。


「まずはここから近い食堂へ行ってみよう」


 オーリエの提案にみんな頷いた。


 カンテラを提げるオーリエを先頭に、二番目はユク、オレとオレにひっついているノルティ、最後をトルペンが歩く。


 いつもなら、『あんまりくっつくな』と引き剥がすところだけど、今夜はノルティの好きにさせていた。

 何というか、人の体温が安心するっていうか、藁にもすがりたい気分というか……。


 やがて食堂に着くと、オレは恐る恐る中を覗き込んだ。


 誰もいない夜の食堂は、ひっそりと静まり返っていた。

 昼間の喧騒との対比がより不気味な雰囲気を助長する。


 一人、すたすたと中へ入ったオーリエが辺りを見回してからユクに尋ねる。


「別段、昼間と変わり映えしないように見えるが……ユク、何か感じるか?」


 神秘系少女は首を横に振った。


「そうか、確かに何の気配もしないしな……じゃ、次はエントランスに向かおう」


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