王子と騎士 2
「ドゥラさんはテディと仲が良いんだな」
「私とテディは幼馴染でして、昔からテディはこんな感じなんですよ。突拍子のない事を行うことも度々あって、その度に周りが大変な目に遭ったものです」
俺とネノのように、ずっと幼い頃から過ごしてきたからこその気安さのようだ。
それにしてもテディは悪い奴ではないのは分かったけれども、確かに突拍子もない考えなしの行動を行うというのであれば周りはたまったものではないだろう。幼いテディの無茶ぶりに振り回される幼いドゥラさんの姿は簡単に想像が出来た。
幼い頃の俺とネノはどうだっただろうかと考える。
ネノも幼い子供が実行するにはおかしなことをやっていた。しかし昔から普通ではなかったネノからしてみればそれは出来て当然ともいえる事だったのかもしれない。平然と変わったことを起こしていたっけ。
そしてそんなネノに追いつきたくて俺も同じ行動を起こしていたりして……。どっちらかというとネノの事を真似しようとしていた俺の方が危険な行動を起こしていたと言えるかもしれない。俺の昔の行動も周りから見れば変だっただろうしな。
「へー。テディって昔からこんなに変なんだー。やっぱり変な人間だー」
「むっ、メルよ、俺は変な人間ではない!!」
「変だよ。僕、人間の事はそんなに知っているわけじゃないけど、絶対、テディって変だって」
「人間の事を知っているわけではない……? メルは人間ではないのか?」
「へへ、僕はドラゴンだよー」
あ、この前、面倒だと思ってメルがドラゴンな事をテディに言わなかったのにさらっとメルが自己申告している。
「ドラゴン!? メルはドラゴンなのか!? ドラゴンで人の姿になれるとは、高位竜か……っ。だからこそ、俺に勝つ事が出来たのだなっ」
「ドラゴン? この子供がですか? ドラゴンまで従えているとは、流石、ネノフィラー様とレオニード様」
テディとドゥラさんがそんな反応を示している。でも一つ訂正しなければならない。
「従えている、違う。メルは幼馴染みたいなもの。契約はしてるけど、命令はしない」
「ネノの言う通り、従えているとは違うな。メルはこう……もう一人の幼馴染で弟みたいなもんだし」
契約はしているけれども従えている、というほど主従関係があるわけではない。契約は結んでいるけれど、俺たちの間にあるのは対等な関係で、命令なんてものはしないし。
こういう反応も嫌だし、メルの事を縛り付けるのも嫌だなと思ったからこそ、契約は結ばないって俺とネノは言っていたんだよな。メルが自分から結びたいっていうから結んだけど。
「そうだよ! 僕はレオ様とネノ様と一緒に居たいって思って、人里だと契約結んでいないと大変だからって理由だけで結んでいるだけだもん」
メル本人も笑みを溢して、そんな発言をする。
でも一般的な魔物と人との契約ってどちらかというと主従関係が多いんだろうなと思う。人の中には無理やり魔物を従わせて命令を下しているという人もいるらしいし。契約の仕方次第だって村長が言ってた気がする。
俺達の契約の場合はメル主導で行ったし、契約の言葉も対等な~って言ってたからそういう強制的な力はない。
「そうなのか! 高位のドラゴンと対等な絆を結べるなんて良いな!! 俺も是非とも対等な絆を結んだパートナー的なものが欲しいものだ!!」
「申し訳ありません。従えるなどと言って不愉快な気持ちにさせてしまったでしょう。対等な契約を結んでいるというのは素晴らしい事です。……あとテディは、もしかしたら強い魔物と対等な絆を結びに行くぞっなどと考えていないだろうな? やめろよ?」
目をキラキラさせているテディにドゥラさんが忠告をしていた。
「何でわかったんだ!? そして、何故止める? このかっこいい俺がかっこいい魔物と対等の絆を結べたらとてもかっこいいだろう! かっこよさが二倍、いやもっと凄いことになるはずだ!」
「かっこよさが二倍になるとかはどうでもいい! そうではなくてだな。テディは仮にも……一応、この国の王族の一員だろう! どうせ、テディの事だからその辺にいる魔物ではなく、高位の魔物と対等の絆を結びたいって思ってるだろ! そんな危険な事をわざわざ自分からやりにいくんじゃない!!」
「確かに俺はメルのような高位の魔物と契約を結びたいと思ったが……。高位の魔物と絆を結べればこの国にとっても良いだろう!!」
「……確かに良い事であるとはいえるが、高位の魔物と契約を結ぶまでの過程で多くのものが犠牲になる可能性もある。それにテディだって命を落とす可能性がある。切羽詰まった状態でどうしても高位の魔物と契約を結ばなければならないって時ならともかく、多くの騎士を動員して皆死にましたじゃシャレにならないだろ」
「何を言う。そんなに騎士などいらない。俺は一人で行くぞ」
「だから、王族としての自覚を持てって言ってんだろうが!!」
……やっぱりメルがドラゴンだと告げたら、面倒なことをテディが言い出している。俺やネノには実害はないけれど、ドゥラさんが大変そうだ。




