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王子 3

「俺が貴様の魔の手からネノフィラーを救ってみせる!」

 そう言いながら、長剣を向けてくる第二王子。魔の手って、俺の事を何だと思っているんだろうか、この第二王子は。

 やっぱり思った通り、第二王子は変な男なのだと思う。

 第二王子の中では、俺がネノと第二王子を引き裂いている悪役にでも見えるのかもしれない。

 周りの騎士達は、「テディ様! 『魔王』討伐のメンバーである方が一般人に喧嘩を吹っ掛けるなんて、大人げないですよ!!」とか、「テディ様! 陛下に叱られますよ!」と止めようとしていたが、第二王子は止まらなかった。最終的に騎士の代表者には「すまない、テディ様の相手をしてもらっていいか? 怪我をした場合は責任をもってこちらで治療をする。それに負けたとしても『勇者』様と別れる必要はない。テディ様はあんな風に言っているが陛下は『勇者』様の意志を無理に邪魔しようとは思っていないのだ」と言われた。

 この第二王子、大分、周りに迷惑をかける馬鹿なタイプのようだ。この代表の騎士が言うには、こんな第二王子だがただ馬鹿なだけで悪い人間ではないらしい。それにしても、俺が負けると信じ切っている様子は何だかなぁと思う。まぁ、普通に考えれば『勇者』パーティーの一員として『魔王』退治をしたテディ・アリデンベリに勝てる人間は早々居ないだろう。俺はネノに置いて行かれないためだけに強くなったから負ける気はしないけど。

 ネノに無様な姿は見せたくないっていうのもあるし、負ける気はない。ネノなら俺のかっこ悪い所見ても受け入れてくれるとは思うけど、やっぱり好きな子の前ではいつだってかっこよくありたいのが男ってものだろう。

 腰に下げた長剣を引き抜く。

 これは俺自身の手で打ったものだ。生まれ育った村には良い鍛冶師というのはいなかったから、自分で打てるように学んだ。ネノの剣も大体俺が打ってる。まぁ、『勇者』に選ばれてからは《勇者の剣》という能力が手に入ってそちらも使っていたようだけど。 

 正直、剣を使わなくてもなんとかなるとは思う。ただ、ネノに手を出そうとしている男なわけで、折角こうして舞台を整えてくれたわけだし、叩きのめそうと思った。向こうから吹っ掛けてきた喧嘩だし、王族相手だろうと馬鹿な事を言う相手をどうにかするのは当然である。

「ネノフィラーよ、俺の活躍を見てくれ! こんな男倒してやるからな」

 第二王子はそんなことをいってネノの方を見るが、ネノは第二王子に何も言わない。ただ俺に向かって、「レオ、やっちゃって」と口にしただけだった。ネノの隣にいるメルは「レオ様が変な人間に負けるわけないじゃん。バーカ!」と何だか挑発している。

 第二王子はそれに激高した様子を見せて、長剣を引き抜く。優秀な鍛冶師が作り出した剣だと一目でわかる。『魔王』討伐にもこの長剣を使っていたのかもしれない。

 まぁ、相手がどんな武器を使っていようが正直関係はないけど。

 第二王子は確か、魔法も剣術も相当の腕を持ち合わせているはずだ。性格がこれだけ変だとは知らなかったが、『勇者』パーティーの一員として活躍したのもあって実力は噂通りだろう。

 第二王子と俺の決闘が始まった。

「我が名において、赤き炎を生み出したまえ。《火炎弾ファヤーブレッド》」

 第二王子の詠唱により、魔法が完成する。

 現れたのは、無数の小さな弾だ。ただの弾ではない。炎の弾。相手を燃えつくすような熱量を持つそれが、数十ほどその場に存在している。それを見て騎士達が「テディ様!? 一般人に何を本気に!」「止めないと死んでしまうのではっ」と声をあげていたが、ネノに「大丈夫」と止められていた。

 その魔法が俺に一斉に向かってくると同時に、第二王子は地面を蹴って、俺に襲い掛かる。

 うん、魔法をこれだけ使いながら向かってくるというだけでも第二王子は腕が立つのは事実なのだろう。魔法を上手に使えるものでなければこれだけの数の《火炎弾ファイヤーブレッド》を暴走させずに制御するのは難しい。基本的に魔法使いと言われる人種は魔法を使っている間は、こんな風に動く事が出来ない。他に気を取られれば魔法の暴走が起こる事が多いからだ。

 数十個の魔法を向けられても、第二王子がとびかかって来ても俺は焦ってなかった。まずは、魔法をすべてもらってしまおうと《時空魔法》を行使する。弾の数だけの空間を生み出して、その中に《火炎弾ファイヤーブレッド》をしまう。

 とびかかってきていた第二王子は「は!?」と声をあげたが、それでも止まらずに俺に剣を振り下ろす。それを自分の長剣ではじく。はじいた後は、スピードをあげて剣を繰り出す。そうしていれば、第二王子は余裕が徐々になくなっていく。

 俺が大きく振りかざせば、第二王子は体勢を崩した。そんな第二王子を右足を出して転ばせる。そして、尻を地面につけた第二王子の首に長剣を突き付けた。

「俺の勝ちで、いいですよね?」

 声をかければ、第二王子は信じられないといった表情を浮かべた。





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