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初めての貴族のパーティー ⑦

「ふふっ、レオと一緒に踊るの楽しい」

「ああ。俺も楽しい」

 こうやって二人だけで踊っていると、まるで二人だけの世界に迷い込んだようなそんな気持ちにさえある。

 俺とダンスを踊れることが楽しいと笑みをこぼしているネノがあまりにも可愛くて、俺はネノ以外には視線を向けられない。だって、俺の奥さんは本当に可愛いから。

 楽しい時間はあっという間で、ダンスの時間はそうやって過ぎて行った。

「『勇者』様も、『勇者』の旦那様も素晴らしいダンスでした」

 踊り終えた後、領主が拍手をしながら俺たちのことを迎え入れる。

 他の貴族たちは遠慮してか囲ってくることはなかった。

「ん」

「『勇者』様はこれまでパーティーでダンスを踊っていなかったと聞いております。我が家のパーティーでは踊ってくださり、ありがとうございます」

「レオと一緒だから踊った。それだけ」

 領主の言葉にネノはただそう答える。

 それにしてもパーティーでダンスを踊っただけで喜ばれるというのは、驚きだ。それだけネノは『勇者』として過ごしていた時にダンスを踊ってこなかったのだろうなと思う。

「『勇者』の旦那様も素晴らしいダンスだった。君は《時空魔法》を使えるだけではなく体力があるのだな。あれだけずっと踊り続けるというのは難しいから」

 領主の言葉に俺がサポート役のように思えていたのだろうかと思った。

 俺の噂は《時空魔法》が使えることは出回っているけれど、それ以外のことはそこまで広まってないんだろうな。生まれ育った村を出てから魔物を倒してはいるし、ダンジョン内で宿を経営しているという点でも戦う力はあるって分かると思うけど。ただやっぱりネノの強さの方が目立つからかな。

「ん。レオは凄い」

「体力は昔からつけてますよ」

 ネノは昔から色んな場所に一人で赴いていくような子だった。だから俺はそんなネノについていくためにも体力をつけていた。

「『勇者』の旦那様は魔物を倒すことも出来るのかい?」

「できますよ。ネノだけ一人で戦わせるわけにはいかないですからね」

 昔からネノは強くて、俺の力を借りなくてもネノは魔物を倒すことは出来た。俺がそれを出来なかった頃から、一人でどうにでも出来た。

 昔のことを思い起こすと、俺はネノを一人で戦わせたくなかったんだなと思う。

 俺にとって特別で、好きな子が一人で危険なことをするのを放っておきたくなかった。それに俺がネノに追いつきたかったから。

 それに俺がそうやって戦う力を持っていた方が、ネノに何かあった時に俺がネノを守れるし。

「なるほど……。『勇者』様の影に隠れて目立ってはいないが、君も十分に凄いな」

「ん。領主、見る目ある。私のレオ、凄い」

 ネノが自慢げに胸を張ってそんなことを言っている。

「《時空魔法》の使い手で、『勇者』様が認めるだけの戦いの実力がある。『勇者』様もだが、その才能を宿経営に使っているのは少しもったいなく思える」

「私とレオ、宿経営、楽しんでやってる。もったいない言われても、知らない」

「強制するつもりはないから安心してください。ただ……それだけの実力があるのなら『勇者』様と『勇者』の旦那様にそういう仕事をすることを望む者は出てくるかもしれません」

「嫌なら断る。気が向いたらやる。それだけ。面倒ならどうにでもする」

 実力があればあるほどそうやって戦う仕事の方を望まれることも多くあるだろう。それでも嫌だったら俺もネノもそれをやるつもりはないけれど。

「そのままの流れでこういうことを頼むのはあれだが……、ダンジョン内で最近異変が現れている。なのでもし何かしら異変について分かることがあれば教えてもらえると助かります」

「ん。気が向いたらやる。異変、何?」

「ダンジョンと言うのはそれぞれの階層で出てくる魔物というのは異なる。ただ基本的にこの街のダンジョンは出てくる魔物の種類というのは大体決まっている。しかし最近、その階層に居ないはずの魔物を見かけたことがあるとのことだ。それに本来生息している場所に魔物が見られなかったりと、不思議な状況が起きているそうだ」

「なるほど。その異変、放置しているとまずそう?」

「最悪の事態は考えたくはないが、何かしらの問題が起きている可能性は大いにあるのです。過去にダンジョンの異変が見られた際は、その後にダンジョンから魔物が溢れてくるという事象が起こったと伝えられているのです。もしそのようなことが起きてしまえば……被害は膨大なものになってしまいます。冒険者たちにも依頼をして調べていますが、『勇者』様が動いて下さるのならば助かります」

「そう。解決したら報酬くれる?」

「はい。もちろんです」

「ん。じゃあ、見つけたら言う」

 俺とネノはダンジョンで宿を経営している間、異変などは気づいていなかったが……、連日ダンジョンの中に足を踏み入れている冒険者たちが気づく異変があったようである。俺たちがダンジョンをぶらついたところで異変の原因などを探れるとは思わないが、まぁ、何か見つけたら領主に報告ぐらいはしよう。

 ネノもそう思っているから、領主の言葉に頷いているのであろうし。


 ――そしてそんな会話をした後、俺たちは早めにパーティー会場を後にすることにする。


 他の参加者たちはもっと遅くまで過ごすらしいが、俺たちは明日も宿を開店する予定なので、あまり遅くまで滞在するつもりはない。リュアジーンの街まで戻らないといけないしな。

「えー、もう帰るの? もっと食べたいものあるのになぁ」

 そんな風に言っているメルには、「それなら置いて行くから、一人で帰ってくるように」と言っておいた。そしたら「僕も帰る!」と言ったので、そのまま三人で帰宅した。


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