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初めての貴族のパーティー ⑤

「ごめん、ネノ。ちょっと話し込んでた」

「ん。私、構う。これ、美味しい。一緒に食べよう」

 ネノは俺の言葉にそう言って、取ってきた料理を見せてくる。ネノの皿から俺は魚を取り、食べる。少しの辛みのある味付け。うん、美味しい。これ、どんな香辛料を使っているのだろうか?

 そういう料理に携わる者としての探究心がうずく。

 ネノは折角パーティーに参加しているからこそ、俺が沢山の種類の料理を食べたいと思っているのを知っていて様々な種類のものを少しずつ持ってきてくれたらしい。本当にネノは俺のことをよく見てくれていて、そのことが嬉しいと思う。

「レオ、デザートも色んな種類ある」

「うん。そうだな。それにしても量が多くて全部は食べきれなさそうだよな」

「それはそう。メルは幾らでも食べれそうだけど」

 人型に変化しているメルは小さな子供にしか見えないが、メルの本体は人よりもずっと巨大なドラゴンである。だからこそ見た目よりも沢山食べるほうだ。

 ちらりとメルを見ると、どうやら参加者の貴族に話しかけられているようだ。……不敬な言動をしなければいいけれど。メルにとってみれば人の世界が貴族や平民と言う身分で分かれていることもよく分からないことであろうし、ドラゴンからしてみればそんな身分よりもずっと強さの方が大事だろう。

「メル、話しかけられているけど大丈夫かな」

「子供だし、大目に見てもらえる。それに私の連れ。ちょっと失敗してもどうにかなる」

「まぁ、それはそうだな」

「レオも、ちょっとぐらいの無礼なら大丈夫」

 まぁ、俺がちょっと何か失敗して仮に貴族と敵対することになったとしたら、ネノも一緒に敵対することになるだろうからなぁ。貴族たちも『勇者』であるネノと敵対したいわけではないだろうし、少しぐらいは目を瞑ってはくれるだろう。

 とはいえ、俺自身が偉いわけでもないのでそれで偉そうな態度をしようとは全く思わないけれど。

 ……視界に映るメルはなんだか餌付けされている様子である。美味しそうな食べ物をもらって、口をもごもごさせている。見た目が可愛い美少年だから、女性たちから評判が良いのだろう。逆に男の貴族たちは、夫人や令嬢たちから可愛がられている様子のメルを嫌そうに見ているものもいる。

 あとは笑みを浮かべているけれど、目は笑っていない……そんな感じの人とかがいる。表情に出している人よりもそうやって裏を隠してメルに近づこうとしている方が警戒する必要があるだろう。

 ネノに話しかけてくる人が思ったよりも少ないのは、「レオとゆっくりしている、用あるなら手短に」と先ほど言っていたからである。ネノは特に貴族たちと縁を結ぶことを目的にこのパーティーにきているわけでもなく、俺がパーティーで着飾ったネノを見たいっていったからだし。

 パーティーというだけあって、参加者は全員着飾っている。貴族たちは見目の良い人が多い。でも俺は惚れた弱みもあって、ネノが一番可愛いと思う。

 こういう場所でも誰よりも人目を引いて、それでいて可愛い。

「レオ、どうしたの?」

「やっぱり俺のネノは可愛いなぁって。ドレス、凄く似合ってる」

「ふふっ、レオもかっこいい。似合ってる。一番」

 俺の言葉にネノはそう言って、嬉しそうに微笑む。うん、可愛い。

 こういう貴族のパーティーに出ると、『勇者』として旅だった半年でネノは沢山の人と出会ってきたんだろうなと思う。ネノの世界は俺より一足先に広がって、色んな人と出会って、でもネノは俺を一番だと言ってくれる。

 貴族たちに無礼な真似をしてしまわないかと少し心配はしていたけれど、ネノがいつも通り横にいるとそういう心配より楽しい気持ちの方が大きい。

 しばらくそうやってのんびり、二人だけで話して過ごしていたら領主から「『勇者』様、参加者たちと会話を交わす時間を設けてもらえないだろうか?」と言われた。ネノが話しかけないでオーラを出しているのもあり、少ししか参加者たちと喋ってなかったからだろう。領主からしてみれば折角ネノに参加してもらっているので、そういう機会を設けたいのかもしれない。

「少しなら、いい」

 ネノがそう言ったのは、俺と一緒に参加するパーティーをネノが楽しんでいるからだと思う。ネノは少し、機嫌が良さそうである。

 ネノの言葉に領主は笑って、それから俺とネノの元へ参加者たちが集まってきた。俺はネノのオマケみたいなものである。俺にちゃんと挨拶をする人もいれば、ネノにばかり話しかけている人もいた。

 ……あからさまな態度はネノからの心証が凄く悪くなるんだけどなぁ。

 ネノは流れ作業のようにてきぱきと彼らとの会話を続けている。短い会話で、基本的に挨拶と少しの会話だけで終わる。

 ネノにとってもっと長く話そうと思えるような参加者が今のところいないのだろうというのが分かる。このパーティーに参加している貴族は高位貴族はほとんどいないようだ。

 大体、男爵とか、騎士爵とは、あとは子爵とか、いても伯爵ぐらい。

 平民の俺からしてみれば全部まとめて貴族と言う感じだが、ネノ曰く高位貴族がいるパーティーだともっとパーティーの規模も大きくなるらしい。

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