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ダンジョンに潜る ⑨

 奇跡的に助かった令嬢は大変傷心している様子だと噂が流れている。実際の所はどうかは分からないけれど護衛たちは死亡し、令嬢だけが生き残った状態らしいのでもうダンジョンに自分から潜ろうなどとは思わないだろう。

 ただその令嬢はしきりに俺たちのせいでこんなことになったということを言いふらしているらしい。本当に放心状態ならばそういうことを言う元気もないはずなので、それなりにその令嬢は元気なのだと思う。

「自己責任。それを私たちのせいにするの、面倒……」

「そうだな」

「うん」

「一旦放置してダンジョン潜るか」

「うん。そうする」

 一応令嬢は見つかったので、ダンジョンに潜るのもありだろうと思った。なので、俺たちはダンジョンにまた潜ることにした。

 令嬢捜索の冒険者たちも引いているし、街に居て色々言われるのも面倒なのだ。

 それにしても魔物が溢れるダンジョンに自分から足を踏み入れておいて、それを人のせいにする意味は正直分からない。

 ダンジョンに入る時にまた兵士に何とも言えない表情を浮かべられたけれど、それも放置した。

「自称『勇者』って人たちも、あのダンジョンの入り口の人たちも全員黙らせたい! 煩い!」

「メルは物騒」

「物騒すぎはするけど気持ちは分かるかな。あいつら多分、ネノが本物の『勇者』だと知ったら何も言わなくなりそうだし」

 自称『勇者』たちや令嬢、それに他の街の人々だっておそらくネノが本物の『勇者』だと知れば何も言ってこなくなる人の方が多いだろうから何とも言えない気持ちになる。

 まぁ、本物の『勇者』だと知った所で『勇者』ならこうあるべきとかそういう理想を押し付けるタイプの人もいるとは思うけれど。

「そもそもレオ様にもネノ様にも勝てないのに色々言うのすごいよね。人ってそういう所で、逆らっちゃいけない人のことを分からずに色々言うから凄いなって思うよ! 自分よりも圧倒的に強い人相手に服従しないなんて選択肢は本来ないはずだし」

 メルはあくまでドラゴンで、魔物の一種なのでそういう思考回路しか持ち合わせていない。

 メルからしてみれば、人という生き物は中々不思議で仕方がないのだろうと思う。

「まぁ、そういうものなんだよ。あとは周りが同調しているから余計に言いやすいんだと思うけど。数が多いというのはある意味力だから」

 周りが同調するからこそ、俺たちに意見を言ったり、俺たちのことを悪く言ったりとか、そういうことを当然のように言えるのだと思う。貴族の令嬢という一般的に権力を持った存在が俺たちのことを非難しているから、自称『勇者』たちや街の人たちだって声をあげる。

 これでダンジョンに入った令嬢の方が悪いという声をこの街の権力者が挙げていたのならばそちらに同調する人の方が多かっただろうし。

「自分の考え、強く持つ方がいい。皆、流されすぎ」

「ネノはそういうよなぁ。俺も皆流されすぎだなとは思うけど、そういうものだよなとは思ってる」

「宿、開店したら、面倒なこと言う人、排除」

「うん。それでいいと思う。開いたら多分色んな人がやってくるだろうけれど、令嬢の言葉に同調して色々言ってくる人たちは別に入れなくていい」

「ん」

「ただ、あれだよなぁ。皆流されやすいからネノが『勇者』だって広まったら逆に俺たちに意見していた自称『勇者』たちとか、令嬢も立場悪くなりそうだよな」

「自業自得」

 流されやすい人たちなら、ネノが『勇者』だと知ったら逆にそういう行動をしそうな気もした。

 うん、そういうの面倒だよなぁと思う。

 そんな風に話をしながらダンジョンで魔物を狩ったり、店で出す食事の材料を採取したりとか色々やった。

 ダンジョン内は広くて、まだまだ探索しきれてない部分もあるので毎回潜る度にそこそこ楽しい。

 しばらくダンジョン内を探索した後、帰ることにした。

 ダンジョンから出ると、面倒なことに何人かの人が待ち構えていた。その中にはあの令嬢の姿もあったので、正直面倒に思った。

 その場に居る人たちは俺たちのことを睨みつけていた。……が、その中の一人がネノの顔を見て顔色を変えた。

 ……もしかしたらネノの顔を知っている人物なのだろうか?

 もう少しネノが『勇者』であることを言わずにのんびり過ごそうとしていたので、どうしようかなと一瞬悩む。しかしこの場から去ったところでネノが『勇者』であることは広まるだろうし、まぁ、いいかと思った。

「貴方たち! 謝罪もなく悪びれもなく過ごしているなんて――」

「黙りなさい!!」

「え、お、おじ様??」

 令嬢が俺たちに話しかけたかと思えば、一人ネノの顔を見て表情を変えた男が声をあげる。

「『勇者』様、この度は私の姪が申し訳ございませんでした!!」

 そしてその男は、まっすぐにネノの元へと近づいたかと思えばそう叫んで、頭を下げたのだった。



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