03
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授業の合間には十分間の休憩時間があったけれど、何も言い出せないまま昼休みになってしまった。
私と宮園さんはいつものようにお弁当を持って友愛部の部室にやって来た。
部室へ向かっている間は、お互いに口を開かなかった。
私は気まずさを感じながら、宮園さんの様子を伺っていた。相変わらず彼女は澄ました顔をしているのだった。
部屋の中に入ると宮園さんはピシャッとドアを閉めた。
毎回、勢いよく閉めるのはどうしてなのだろう? そういう癖なのかな?
机の上にいつもと同じ風呂敷で包まれた重箱を置く宮園さん。
一方、私の弁当箱は以前よりも大きめのサイズに変わっていた。この前の遊園地デートで少食を装う必要はないということに宮園さんが気づかせてくれたからだ。
「座らないの? 早く食べましょう」
平然とした様子で宮園さんは椅子に腰を下ろし、風呂敷を広げ始める。
彼女は私がどれだけ苦しんでいるか、知りもしないのだろう。
でも、そんなことはどうでもいい。
言うんだ。ここでちゃんと。
「宮園さん」
ようやく私は声を発した。いつまでも沈黙を続けるわけにはいかない。今度こそ腹をくくろう。
たとえわかってもらえなくても、私は本音をぶつけたい。
宮園さんに嘘はつきたくないから。
「今朝は本当にごめんさない。私は気が弱いから、断り切れなくて……。でもね、私の……私の友達は宮園さん一人だけだよっ!」
私は涙ながらに叫んだ。
色んな思いが込み上げてくるが、上手く言葉にできない。だから、シンプルな形で真実を伝えるしかなかった。
「中村君とは何もないの。この先も連絡は取らないよ。もちろん、中村君だけじゃなくて、他の人とも。私のスマホ、家族と宮園さんの連絡先しか登録してないもん」
「松浪さん……」
宮園さんは呆気に取られている。私がいかに本気であるか、彼女に伝わっただろうか。
「嘘じゃないよ。お願い。信じて……」
「ええ、信じるわ。だから、もう泣かないで松浪さん」
私の目からボロボロと涙が零れ落ちる。
みっともない顔をしているんだろうなぁ、今の自分。
「私の方こそ、ごめんなさい。変な意地を張って松浪さんを追い詰めてしまったわ。どうか許して……」
宮園さんも泣いていた。
泣いている顔も美しいと私は思った。
「宮園さんが謝ることじゃないよ。悪いのは全部私だよ。私が紛らわしいことをしたのがいけないんだよ」
断る勇気がなかった。それがすべての原因だった。
悪いのは宮園さんでも中村君でもない。勇気が足りなかった私なんだ。
「いいえ、私がいけないのよ。あの時、私は動揺していたわ。中村君に松浪さんを取られてしまうんじゃないかって。それが恐くて、悲しくて、ついムキになって連絡先を握りつぶしてしまったの。松浪さんが誰と連絡先を交換していようと、私にはそれを阻む権利なんてないはずなのに」
それを聞いて私は嬉しかった。やっぱり宮園さんは私を特別だと思ってくれているんだ。
誰にも渡したくない。自分だけのものにしたい。そういった気持ちで私と接してくれていたんだね。
「私も同じだよ。宮園さんは誰にも譲らない。私だけと仲良くしてほしいから……」
「……ありがとう」
宮園さんは私を抱きしめる。とても強い力で。
絶対に手放さない。そういった意志の表れなのだろう。
彼女の両腕で身体が締め付けられる。その痛みと苦しみは私に大きな喜びをもたらした。
私も思い切り彼女を抱きしめる。柔らかい胸を押し付け合う格好で、私たちは泣いた。
それから、仲直りのキスを交わす。
宮園さんの甘い香りがした。幸せだった。
「松浪さんは私だけの松浪さんなのよね?」
「うん……。そうだよ」
「じゃあ、その証を松浪さんの身体に刻み付けておくわね」
「んあっ……!」
彼女の手が私の胸を掴む。
少し触れただけなのに、私の身体は過剰に反応した。
相手が宮園さんだから……なのかな。
二度と離さないわ。
宮園さんは私の耳元で囁くと、再び強く抱きしめてきた。
私は涙を流しながら、「うん」と答えるのだった。
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