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私は宮園さんと遊園地を後にした。
今日は本当に楽しかった。最高の思い出を作ることができた。
特にジェットコースターや観覧車は効果が大きかった。おかげで二人の距離感が一気に縮まったといえる。
しかもなんと、明後日の月曜日に宮園さんの家にお泊りする約束までしてしまったのである。
これは彼女が私を特別な存在だと認めてくれた証拠だ。
宮園さんは他の誰よりも私のことを想ってくれているに違いない。
この調子だ。きっと私たちは両想いになれる。
少しだけ自信が出てきた。さらに前向きな気持ちになったと思う。
やったよ、ユリエルさん。遊園地デート作戦は大成功だよ。
私は今日の成果を早く彼女に報告したくて、ウズウズしているのだった。
ぐぅ~。
ここで私のお腹が鳴った。
今日はお昼前にご飯を食べたので、まだ夕方の五時前なのにお腹が減り始めていた。
「またお腹空いてきちゃった……」
お腹を押さえる私。
「松浪さん、少食って言ってたけど、実際はそうでもないみたいね」
「……そ、そうかな?」
いけない。小柄なくせに大食いだと思われるのが嫌なので、人前では少食をアピールしてきたのだが、宮園さんに嘘を見抜かれてしまった。
「食べるのは好きでしょう? 私の前では遠慮せずにたくさん食べればいいのよ。悪いことではないわ」
「笑ったりしない?」
「笑わないわ。オムライスを美味しそうに食べる松浪さん、すごく可愛かったわよ」
「かっ、かわっ……」
また可愛いって言われちゃった。
彼女は私が食べている姿も褒めてくれた。嬉しいような恥ずかしいような……。
「人は美味しいものを食べる時、幸せな気持ちになれるわ。私は松浪さんにはいつも幸せそうな顔をしてほしいと思ってる」
「宮園さん……」
素敵な考え方だな、と私は思った。
食事は幸福をもたらす。幸福が人を笑顔にする。
宮園さんは私の幸せを願ってくれているのだった。
私は彼女の想いに応える必要がある。
これからは少食を演じるのはやめよう。せめて宮園さんの前では笑顔で食事を取りたい。
彼女と友達になる前の私は、昼休みに一人でお弁当を食べていた。
一人で食べても美味しいものは美味しいけれど、誰かと一緒に食べるとさらに美味しく感じることに気づいた。
宮園さんとの食事は幸福感が段違いだ。
もっと楽しく、明るい気持ちになれば、幸せも増えていくだろう。
食べたいのに我慢するのは損である。自ら幸福を手放しているようなものだ。
私の幸せを願う宮園さんのために、私は遠慮を捨てなければならない。
「明日からは、大きめのお弁当箱持って来るね」
「ええ。それがいいわ」
帰ったらお母さんにお願いしないと。
手間が増えるかもしれないけど、きっと喜んで作ってくれると思う。
ぐぅぅぅぅぅ~。
また大きな音でお腹の虫が鳴く。
空腹アピールはしたくないけれど、身体は正直だった。
「これ、よかったら食べて」
宮園さんはカバンの中から「カロリーメ〇ト」を取り出した。
私が一番好きなチョコレート味だった。
「いいの? でも、これ……」
「私も小腹が空いた時に食べてるの。今はそんなにお腹減ってないから、松浪さんが食べて」
箱を開けて袋を取り出す宮園さん。
開封して、中身を取り出す。
「はい。あーん」
そのまま私の口に近づけてきた。
「あー……」
パクっと一口、ブロック状の茶色いバーを齧る私。
モサモサしてるけど、この食感が好きなんだよね。
モグモグと咀嚼する私の姿を宮園さんは微笑みながら見つめている。
「美味しい?」
「美味しいよ」
「もう一本あるわ」
「そっちは宮園さんが食べて」
「遠慮しなくていいのよ?」
「ううん。宮園さんに食べてほしいの。二人で食べた方がもっと美味しいもん」
「それもそうね」
納得した宮園さんは残りのもう一本を食べた。
「うん。美味しい」
私たちは見つめ合いながら、フッと笑った。
ゲートの外で待機していると、駅に向かうバスがやって来た。
帰りのバスは空いていた。立ちっぱなしになる心配はない。
宮園さんと隣同士の席に座り、楽しくおしゃべりをしながら帰路に就いた。
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