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遊園地デートの最後に私たちは観覧車に乗った。
ゴンドラが上昇するにつれて、窓から見えている地上の人々や建物がどんどん小さくなっていく。
「今日は来られてよかったわ。誘ってくれてありがとう」
宮園さんが礼を言う。彼女は私の向かい側に座っている。
「こちらこそ、ありがとう。また来ようね」
色々ハプニングはあったけど、とてもいい一日だった。
宮園さんとの仲がより深まったと思う。
宮園さんは立ち上がり、私の隣に移動して座席に腰を下ろした。
二人の肩と肩がピッタリとくっついた状態になる。
「ねぇ。写真、撮りましょう」
スマートフォンのインカメラを起動させる宮園さん。
観覧車からの眺めを背景として、二人で記念撮影を行うことになった。
「松浪さんもほら、ピースして」
「う、うん」
カシャ。
「ふふ。これは二人だけの思い出ね」
たった今撮ったばかりの写真が彼女からラインで送られてきた。
そこには照れくさそうな顔でピースサインをする私と相変わらず綺麗な顔をしている宮園さんが映っていた。
二人で一緒に写真を撮ったのはこれが初めてである。
それどころか、今まで友達がいなかった私は、こうやって誰かとスマホで写真を撮ること自体が一度もなかった。
初めてのツーショット写真だ。その相手が宮園さんでよかった。
私は嬉しくて頬が緩んだ。これは一生の宝物にしよう。
「松浪さん。こっち向いて」
今度は私を単体で撮影し始める宮園さん。
カメラを向けられるのは慣れていないため、どんな顔をすればいいのかわからない。
とりあえず笑っておく。
ぎこちない笑顔になっているかもしれないが、そこは許してほしい。
「うん。可愛く撮れてる」
宮園さんは満足そうだった。
自分がどんな感じで映っているのか不安だが、彼女が気に入っているなら、まぁよしとしよう。
私も宮園さんの写真が撮りたくなった。
好きな人の写真がフォルダの中にあれば、きっと嬉しいと思う。
宮園さんは今、私の真正面に座って窓からの景色を眺めている。
西日に照らされた彼女の横顔はとても綺麗だった。
被写体にスマホのカメラを向ける。
彼女はこちらの様子に気づいていない。
隠し撮りをするつもりはないけど、今がシャッターチャンスだ。これを逃すわけにはいかない。
カシャッ。
「松浪さん?」
宮園さんがシャッター音に反応した。
不思議そうな表情をしながら私を見つめている。
「あ……これは、その」
盗撮がバレてしまった人みたいなリアクションをする私。
やましいことをしたという自覚があり、罪悪感に襲われるのだった。
勝手に撮影されたら、不愉快だもんね。
「いいわよ。好きに撮ってくれても」
ところが、宮園さんは怒るどころか撮影を許可してくれた。
サービスが精神旺盛なのか、こちらを見てニッコリと微笑んでいる。
「撮るね……?」
「どうぞ」
白くて綺麗な肌。大きな瞳。整った顔立ち。上品さを感じさせる姿勢。
彼女の姿はとても絵になるものだった。
それを自分のスマホに納めることができる貴重な機会だ。遠慮している場合ではない。
カシャ。カシャッ。カシャッ。
連続で何度もシャッターを切る。
角度を変えたり、ズームをしたり、様々な方法で撮影を行った。
写真の中の宮園さんも美しかった。これをスマホの待ち受け画像にしたいと思えるくらいだ。そんなことをしたら引かれるだろうから、やめておくけど……。
スマホの画面をスクロールさせながら、私はニマニマと笑う。
どの写真の宮園さんも可愛いなぁ。
おかげで最高の宝物が完成した。これが一番の収穫かもしれない。
大好きな宮園さんとの思い出を記憶と記録の両方に残すことができた。
私は満足している。
観覧車が一周する。もう降りる時間になった。
私はもうしばらく、宮園さんと二人で空中を旅していたかった。
名残惜しいけれど、そろそろ時間だ。
閉園時間はもうしばらく先だが、宮園さんの家には門限というものがある。
彼女は十八時までに帰宅しなければならない。
バスと電車での移動時間を踏まえると、今日のところはここまでとなりそうだ。
まだ一度も乗ることができていないアトラクションが残っている。それは今度来た時に乗るとしよう。
観覧車のゴンドラを降りる。私たちは地上に戻ってきた。
それから、出入口のゲートに向かって歩き出す。
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