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百合×百合オペレーション  作者: 平井淳
第二章:ワクワク遊園地デート作戦

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感想をお待ちしております。

「それでは出発です! 行ってらっしゃーい!」


 係員の合図でコースターがゆっくりと動き出す。

 ガコンガコンと音を立てながら、コースの頂上を目指して昇っていく。


 ここで私はある違和感を覚えた。


 今日ジェットコースターに乗るのは最初であるはずなのに、さっきもこの光景を見たような気がしたからだ。


 いや、そんなはずはない。これが正真正銘の一回目だ。

 いわゆるデジャブというものだろう。このような現象はたまに起こる。あまり深く考えないようにしよう。


 急降下に備えて私は身構えた。こういう時は思い切り叫んだ方が楽しいのかもしれないけど、宮園さんの隣ではしゃぐのは恥ずかしい。


 最も高い所までやって来た。これから私たちは真っ逆さまに落ちる。


 来る……。うう、やっぱり恐い。


 緊張が走る。肩に力が入った。

 これから訪れる恐怖に耐えられるだろうか。


 ここで再び不思議な感覚に襲われた。

 私はさっきも、こうして落下の瞬間をドキドキしながら待っていたような……。


 そしてこの後、ジェットコースターが止まってしまうのではないかという予感がした。

 何となく……である。特に根拠はない。


 ガチャン!


 予感は的中した。

 車両が落下の寸前に緊急停止したのである。


「止まったわね。何が起こったのかしら」


 宮園さんが問いかけてくる。


「トラブルかもしれない」


 今のは何だったんだろう?

 どうして私は車両が停止するとわかったのだろうか。


 乗客たちがざわつく。突然の事態に動揺を隠せない様子だ。


 それに対して、私は割りと落ち着いていた。

 宮園さんも慌てることはなかった。いつものように冷静だ。

 

「恐くないわ。二人一緒だもの」


 私の右手の甲に手を添えながら宮園さんが言った。


「う、うん」


 再び謎の既視感を覚える私。

 似たようなことが前にもあったのでは?


「恐がらなくても平気よ。きっと助かるわ」


 彼女は私を気遣う言葉をかけてくれた。

 こんな状況でも気配りができるのは立派だと思う。


「ところで確認なのだけど、月曜日のお夕飯はハンバーグでいいかしら」


 いきなり話題を変えてくる宮園さん。

 明後日のお泊りの件について言っているようだ。


「うん。ハンバーグ好きだよ」

「じゃあ、決まりね。それから、お夕飯の後はトランプと双六をしましょう」

「オセロはないの?」

「あるわよ。それもしましょうか」

「そうだね」


 なぜ私はオセロが宮園さんの家にあるかどうか尋ねたのだろう?

 別にオセロがやりたくて仕方がなかったわけではない。ただ気になったのである。


「その後はお風呂ね。松浪さんの身体、私が洗ってあげるわ」

「ええっ? それはいいよ。自分で洗うから……」

「裸の付き合いも大切よ?」

「でも……。普通に恥ずかしいし……」


 なぜか宮園さんは私の裸を見たがっている。

 私も彼女の裸が見たい。しかし、そんなことを正直に言えるはずもない。


 宮園さんとお風呂。

 断りたいけど、断りたくない。


 こんな感情を抱くのも初めてではない気がする。

 前にも彼女と同じやり取りをしていたのではないか。いや、そんなまさか。


『お客様にお知らせいたします。当ジェットコースターはシステム異常のため緊急停止しております。ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんが、再開まで少々お待ちください』


 アナウンスが流れてきた。

 車両がストップしたのは、やはり異常事態が発生したからだった。


「宮園さん」

「何かしら?」

「やっぱり身体洗ってもらっていいかな?」

「ええ、もちろん」

「その代わり、宮園さんの身体は私が洗うね」

「まぁ。嬉しいわ」


 変なことは考えない。友達として裸の付き合いをするだけだ。

 ただ彼女と仲を深めるために身体を洗いっこするのである。いやらしい願望は捨てよう。


 私は宮園さんが望むことは何でもしたい。

 彼女が私とお風呂に入りたいと言ったので、それに応じることにしたのだ。


「寝る時は私と同じベッドでもいいかしら?」

「大丈夫だよ」

「私、寝惚けて松浪さんのこと抱き枕にしちゃうかもしれないわ」

「全然平気だよ」


 抱き枕でもサンドバッグでも構わない。

 宮園さんが私を求めてくれることが幸せなのだ。


「楽しみね。明後日が待ちきれないわ」


 宮園さんが喜んでくれている。


 ああ、よかった。

 私はね、その顔が見たかったんだよ。


 私が生きる理由は宮園さんである。宮園さんがいなければ生きる意味はない。


 また、彼女のおかげで私は自分の存在意義を見出すことができた。


 これまで私は自分には生きる価値がないと思っていた。何の取柄もない、ダメダメな人間の自分は誰にも必要とされることはない。そう感じながら生きてきたのである。


 だけど、宮園さんは私を求めている。彼女にとって私は価値がある存在なのだと気づいた。彼女が私に何かを要求してくる度に、それに応えてあげたいと思うようになったのだ。


 宮園さんが存在する限り、私も生き続ける。

 彼女に「いらない」と言われる日まで、とことん彼女に尽くそう。


 これが私の愛である。


「この後、もう一回コーヒーカップに乗りたいわ。どれだけ速く回転できるか挑戦してみたいの」

「うん、いいよ」


 とことん付き合おう。

 たとえ、どんな要求であったとしても。


 私は宮園さんの左肩にもたれかかった。

 彼女は私を黙って受け入れてくれた。


 ジェットコースターはまだ動かないが、しばらくこのままでいいかなと思った。

お読みいただきありがとうございます。

感想をお待ちしております。

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