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しばらくおしゃべりをしていると、思っていたよりも早くジェットコースターの順番が回ってきた。楽しい時間はすぐに過ぎてしまうようだ。
私と宮園さんは先頭の車両に乗った。左側が私で右側が宮園さんである。
ここは一番迫力を感じることができる場所だ。ジェットコースター初心者の宮園さんは大丈夫だろうか。
とはいえ、彼女の心配をしている余裕はなかった。私も平気かどうかわからないのだ。
絶叫系マシンは苦手ではないけれど、少しだけ恐さを感じていた。
宮園さんの前で再びみっともない姿を晒すわけにはいかないので、泣かないように努力したい。ちゃんとトイレも事前に済ませておいた。多分漏らす心配はないと思う。
小学生の頃にもこのジェットコースターには乗ったことがある。普通に楽しかったし、泣いたりすることもなかった。今の私はもう高校生だ。今回もきっと問題ないはず。
「それでは出発です! 行ってらっしゃーい!」
係員の合図でコースターがゆっくりと動き出した。
ガコンガコンと音を立てながら、コースの頂上を目指して昇っていく。
急降下に備えて私は身構えた。こういう時は思い切り叫んだ方が楽しいのかもしれないけど、宮園さんの隣ではしゃぐのは恥ずかしい。
最も高い所までやって来た。これから私たちは真っ逆さまに落ちる。
来る……。うう、やっぱり恐い。
緊張が走る。肩に力が入った。
これから訪れる恐怖に耐えられるだろうか。
ガチャン!
「え?」
ここで車両が急停止した。数秒経っても動かないままだ。
後ろに座っている他の乗客がざわつき始める。
「これって、いつ動き出すの?」
宮園さんが尋ねてきた。
「わかんない。本当なら途中で止まったりはしないんだけど……」
何かトラブルがあったのかもしれない。
よりによってコースの最上部で止まるなんて。
地上よりも強く風が吹いている。車両が煽られて揺れる度に悲鳴が上がる。動揺と不安に襲われた乗客たちは落ち着きを失い始めていた。
私も手足が震えている。声には出さないが、かなりの恐怖を覚えているのだった。
大丈夫……。きっと大丈夫。
心の中で自分にそう言い聞かせる。
しばらく待てば動き出すはずだ。それまでの辛抱である。
右手の甲が急に温かくなった。
宮園さんが手を添えてきたのだ。彼女は震える私の手を優しく抑えてくれている。
「恐くないわ。二人一緒だもの」
「宮園さん……」
彼女の言葉は私を勇気づけた。
たとえ、このまま永遠に車両が動かなかったり、助けが来なかったとしても、宮園さんがそばにいてくれる。もしこの高い所から落ちて死んでしまうことになっても、その時は彼女も同じだ。
二人は運命を共にしている。生きるか死ぬか、それはもはや重要ではない。
私が恐れているのは宮園さんと離れ離れになることだけだ。彼女と一緒に死ねるなら、何も問題はない。
「さっきのお話の続きをしましょう。明後日の月曜日、お夕飯は何が食べたい?」
恐怖を紛らわせるために会話をすることにした。
黙り込むよりも、リラックスしながら時が来るのを待った方がいいだろう。
「リクエストしてもいいの? じゃあ、オムライスがいいな」
「今日食べたばかりなのに?」
「そうだった……」
「松浪さん、よっぽどオムライスが好きなのね」
その通りである。オムライスは私の好物で、お母さんが定期的に作ってくれる。特にハヤシライスソースをかけて食べるのが好きだ。
「やっぱりオムライスはナシ! ハンバーグがいい」
「わかったわ。麻衣さんに伝えておくわね」
「小田原さんがご飯作ってるの?」
「いいえ。麻衣さんは献立を決めるだけで、調理をするのはうちで雇っている料理人の方よ」
「その料理人さんって、いつも宮園さんのお弁当を作ってる人?」
「そうよ」
「楽しみだなぁ。宮園さんのお弁当、すごく美味しいもん」
昼休みは宮園さんとお昼ご飯を食べているが、私は毎回何かしらのおかずを彼女に分けてもらっていた。どれも美味しいものばかりなので、ハンバーグも期待できそうだ。
「お夕飯の後は何をして遊びましょうか。うちにはトランプと双六とオセロがあるわ。どうかしら」
「うん。全部やろうよ」
お嬢様の家にテレビゲームはないらしい。どれもアナログばかりである。かくいう私の家にもないけれど。
「その後はお風呂ね。私が松浪さんの身体を洗ってあげるわ」
「ひ、一人で洗えるよ……」
「まぁまぁ、そう言わずに」
宮園さんに身体を洗ってもらうなんて、恥ずかし過ぎて死んでしまう。
でも、宮園さんの頼みは何でも答えてあげたい。
「……どうしても?」
モジモジしながら私は問う。
「ええ、どうしても。松浪さんの裸が見たいの」
「宮園さん?!」
また私を揶揄ってるでしょ。
もうその手には引っかからないからね。
「松浪さんも見たいでしょ? 私の裸」
「う……」
見たい……。
でも、そんな欲求なんて正直に言えるわけないよ。
「松浪さんって、実は意外とエッチな子よね」
「な、何言って……」
ウソ?! バレてる?
終わった。もうダメだ。
宮園さんに私の正体を知られたら、二人の関係はそこで断ち切られてしまうかもしれない。
彼女に嫌われることだけは避けたかったのに。
「さっきもずっと私の胸に顔を押し付けてたわね。感触はどうだった? 気持ちよかった?」
「ごめん……なさい……」
私は俯いた。
顔が熱い。宮園さんの方を見ることができない。
「責めてるわけじゃないの。私はただ、感想が聞きたいだけ。率直に答えてほしいわ」
「気持ちよかった……です」
「本当? 嬉しい」
「嬉しいの?」
「それはもう。気に入ってもらえてよかったわ。これからはいつでも私の胸を借りていいのよ。遠慮しないでね」
どういうこと? わけわかんないよ……。
宮園さんは何を考えているの?
「わ、私は……」
「松浪さんは私のことをエッチな目で見てる」
「なんで……わかるの?」
「見ればわかるわ。目は口程に物を言うって言葉があるくらいだもの」
ああ、今すぐここから飛び降りてしまいたい。
隠しておきたかったことを本人に知られてしまったのだ。
「うっ……うう……」
目からポロポロと涙が零れ落ちる。
私はただ泣くことしかできなかった。
「泣かないで。私は嬉しいの。松浪さんがそういう人で、本当によかったと思ってる」
「私のこと、嫌いにならないの?」
「ならないわ。むしろ、もっと好きになった」
「ホントにホント?」
「ええ。大好きよ」
よかった……。
宮園さんに嫌われちゃったら、もう生きる意味などないのだ。
「私も松浪さんのこと、そういう目で見てるから」
「えっ」
耳を疑う内容だった。
宮園さんが私を……?
「どう? 気持ちいい?」
「あっ……。ダメだよ、こんなところで」
宮園さんは私のホットパンツに左手を突っ込んできた。
その指で私の大切な部分を弄り始める。
「ほ、他の人もいるのにっ……。んんっ」
「バレなければいいのよ」
何これ? どうしてこうなってるの?
宮園さん、大胆過ぎる。
快感が抑えきれない。宮園さんの手でこのまま……。
「今の松浪さん、最高に可愛いわ」
「んあっ……はぁっ……」
「我慢しなくていいの。さぁ、身体の力を抜いて」
「ダメっ……。宮園さんっ……!」
「ふふふ」
意地悪な笑みを浮かべながら、宮園さんは私を弄り続ける。
無理だ。もう耐えられない……。
「ああああっ」
大きな声を上げてしまった。
絶対に他の乗客にも聞こえているだろう。
腰を浮かせながら、身体を痙攣させる私。
「はぁ……はぁ……。宮園……さん……」
彼女はうっとりした表情で私を見つめながら、左手の指先をペロリと舐めた。
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