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私がおすすめしたオムライスはとても美味しくて、宮園さんにも好評だった。デミグラスソースが卵によく合っていた。
この他にもフライドポテトとコーンバターも注文していたが、二人で食べるとすぐになくなった。
「美味しかったわね。ごちそうさまでした」
両手を合わせて宮園さんが言う。
満足してもらえてよかった。
昼食を終えた私たちはレストランを出る。
「ねぇ、松浪さん。あれってお化け屋敷よね?」
「うん。そうだけど……」
宮園さんは目の前にある建物に興味を示した。
「行ってみたいわ」
「えっ?」
「お化け屋敷も気になっていたのよ」
彼女は私の腕を掴んで歩き始める。
「あっ、あ……」
私は怖いものが苦手だ。今までずっとお化け屋敷は避けていた。
今日も入らない予定だったが、宮園さんに入りたいと言い出したので、断るわけにもいかない。
流されるまま入り口までやって来た。
奥から人の悲鳴が聞こえてくる。私はすでに恐怖を感じていた。心拍数がドンドン上昇する。
「入りましょう」
「あ、待って。心の準備が……」
二人で腕を組んだまま内部へと進む。宮園さんの足取りは軽く、私は彼女に引きずられるような形になっていた。
「こういうの、ワクワクするわ」
「怖くないの……?」
「怖いから楽しいのよ」
よくわからない。怖いものは怖いだけだ。どうしてそれが楽しいと思えるのか。
心霊系のテレビ番組やホラー映画も観たくない。夜一人で眠れなくなってしまうから。
ああいうのが好きな人って、どんなメンタルをしているのかな?
臆病者の私にはお化け屋敷はハードルが高い。今すぐ引き返したいくらいだ。
けど、こうして宮園さんと密着できているのはお化け屋敷のおかげだ。今の状況を満喫しなければ勿体ない。
怖いけど幸せ。不思議な感覚である。
ガシャーン! とお皿が割れるような音が鳴り響いた。
私はビクッと身体を震わせる。
「い、今のは何?」
いきなり驚かさないでほしい。心臓に悪い。
『一枚足りない……』
そう言って、シクシクと泣く女性の声が聞こえてくる。
「皿屋敷ね。あの有名なお菊さんの怪談話」
「夜になると一枚、二枚って数える声が井戸から聞こえてくる話だっけ?」
「ええ」
前方には井戸があった。女性がすすり泣く声はそこから聞こえてくる。
井戸を横切ろうとした時だった。
中からお菊さんの人形が勢いよく飛び出してきたのである。
「ひいいっ!」
私は宮園さんの胸に顔を埋める。つい反射的に飛びついてしまった。
これはわざとではない。顔を背けようとしたら、たまたま彼女の胸が同じ高さの位置にあったのだ。
「びっくりしたわね」
怯える私を宮園さんはそっと抱きしめてくれた。
お化け屋敷の中は冷房が効いており、さらに恐怖心のせいで寒気が酷かったが、宮園さんの温もりを感じて私はホッとした。
もうとっくに気持ちは落ち着いている。でも、しばらくこのまま抱き着いていよう。
愛する宮園さんの匂いと体温に包まれて、私はとても幸せだった。
彼女の胸に顔を押し付けたまま、頭を優しく撫でてもらう。
何だか安心する。いつまでも、こうしていたい。
「本当に松浪さんは可愛いわね」
「っ~!」
嬉しさと恥ずかしさがこみ上げてくる。
その感情を素直に表したいのに、今は顔を上げることができない。私は無言のまま宮園さんにしがみつく。
「松浪さんの気が済むまで、ずっと待つわ。だから安心して」
時間は無制限。好きなだけ彼女を抱きしめてもいいらしい。
じゃあ、もっと続けよう。
「……甘えん坊でごめんね?」
「たくさん甘えていいのよ。私は甘えん坊な松浪さんも好きだから」
身体が熱くなるのを感じた。
みっともない姿を受け入れてくれる宮園さん。その懐の深さに私はますます惹かれていくのだった。
お化け屋敷は怖い。さっさと抜け出したい。
なのに、宮園さんに甘え続けたいという気持ちが強くて、ここから動きたくないと思ってしまう。
お菊さんが泣く声とホラーなBGMが聞こえてくる中、私はここがお化け屋敷であることを忘れて宮園さんに夢中になっていた。
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