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バスを降りて、遊園地の入場ゲートに向かった。
今日は土曜日で天気もいいので、たくさんの人が来場していた。ゲートの前では手荷物検査とチケットの確認が行われており、長い列ができている。
「すごい人の数ね。遊園地はそれだけ人気がある場所なのかしら」
「大人も子供も楽しめるアトラクションがいっぱいあるから、やっぱり魅力的なんだと思う」
私がここに来るのは小学校六年生の夏休み以来、約五年ぶりである。
あの時はお父さん、お母さんと家族三人で来ていた。ジェットコースターや観覧車、空中ブランコなどに乗ったことを覚えている。
友達と遊園地に来たのは今回が初めてだ。
その相手が宮園さんだというのは、とても感慨深い。
列に並んで待つこと数分。手荷物検査の順番が回ってきた。私たちはいよいよ園内へ入場することになった。
係の人にチケットを見せてゲートをくぐると、この遊園地のシンボルともいえる大きな観覧車が正面にそびえ立っていた。また、観覧車の付近では名物のジェットコースターがうねりながら滑走しており、乗っている人たちの甲高い叫び声が聞こえてくる。
「これが遊園地……。素敵だわ」
感嘆する宮園さん。あちこちを見渡し、どれから乗ろうかとワクワクしている様子だった。
私も久々の遊園地に感激している。中学時代以降、楽しい思い出が一つもないので、今日は存分に楽しみたいと思う。
「松浪さん。私、あれに乗ってみたいわ」
宮園さんが指差したのはメリーゴーランドだった。
白い馬が反時計回りに移動しながら、ゆっくりと上下に動いている。遊園地における定番の乗り物だった。
「うん。乗ろう」
メリーゴーランドは意外と空いていたので、すぐに乗ることができた。
私と宮園さんはそれぞれ隣同士の白馬に跨った。
どこからともなく軽快な音楽が流れ出し、それに合わせてグルグルとセットが回り始める。
身体が浮いたり沈んだりする感覚が楽しい。動き出した当初、宮園さんは「あら」とか「まぁ」などと言ってそわそわしていたが、途中から慣れてきたのか、今はずっと笑っている。
「楽しいわね、これ。いつまでも乗っていたい気分だわ」
すっかり気に入ったようである。
だが、遊園地にあるのはメリーゴーランドだけではない。まだまだ他にも彼女が楽しめるものはあるはずだ。
次に私たちが向かったのはコーヒーカップである。
コーヒーカップの形をした乗り物に腰掛け、中央に設置されたハンドルをグルグル回すとカップが回転するという仕組みだ。
この前来た時は、一緒に乗っていたお父さんが勢いよくハンドルを回したせいでカップが速いスピードで回転し、少し怖い思いをした。私は半泣きになりながら「やめてよぅ」と訴えていたものだ。
私は宮園さんと二人で同じカップに乗り込んだ。
「このハンドルを回せばいいのね」
張り切って回そうとする宮園さん。ハンドルを握る手には力が込められていた。
「うん。でも、ほどほどにね?」
あまり回し過ぎると酔ってしまうかもしれないので、ある程度の加減が必要である。
「思っていたよりも重いわね。松浪さんも一緒に回してくれる?」
「少しだけだよ……?」
宮園さんとタイミングを合わせながらハンドルを回す。
これが私たちの初めての共同作業である。
「いい感じよ。だんだん速くなってきてたわ」
「でも、これ以上は……」
「松浪さん、もっと激しく」
「ダメだよぉ」
猛烈なスピードでカップが回転する。
宮園さんは平気なのだろうか。
「あははっ。これもすごく楽しいわね」
「み、宮園さんってばぁ……」
彼女のペースに流される私。
でもまぁ、楽しんでくれているならいいか。
コーヒーカップを降りると、目が回って真っすぐ歩けなかった。
そんな私を宮園さんが支える。彼女の肩を借りながら、私はゆっくりとベンチに腰を下ろした。
「次は何に乗りましょうか」
「その前にちょっと休憩……」
ぐぅぅぅぅぅぅ~。
「あら?」
「はうぅ……」
お腹が鳴った。しかもかなり大きな音で。
うう……。宮園さんの前で腹ペコアピールなんてしたくなかったよ。
今朝は時間がなかったので、朝食を取っていない。
無視できないレベルの空腹だった。
「少し早いけれど、先にお昼にしましょうか」
「……うん。ごめんね」
まだ二つしかアトラクションに乗っていないのに、いきなりご飯を食べることになるのは悪い気がした。
「謝ることじゃないわ。私もちょうどお腹が空き始めていた頃だったから。ところで、遊園地の中にお食事処はあるのかしら?」
「もちろん。ここなら売店とレストランがあるよ」
「あら、そうなのね。素晴らしいわ」
遊園地では一日中滞在する人も多い。よって、お腹が空いた時に食事が取れるようになっているのだった。家族や友達と過ごすにはピッタリの施設だといえる。
「宮園さん、何食べたい?」
「どんなものがあるの? よく知らないから、私は松浪さんと同じものにするわ」
そっか。そりゃそうだよね。
宮園さんは初めて遊園地に来たのだから、どのような食事があるのか知るはずもない。
ここは私が彼女をリードする場面だ。
「じゃあ、おすすめを紹介するね。ついてきて」
私は宮園さんを連れて園内の洋食レストランへ向かった。
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