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紗友里の部屋を出たユリエルが向かったのは、リリィのところであった。
悪魔の少女は紗友里の自宅前でユリエルを待ち構えていた。
「あら、ちゃんと来たわね。心の準備はできてるかしら?」
嬉しそうな顔をするリリィ。
これから始まるお楽しみの時間を首を長くして待っていたものと思われる。
「対価を払えば、紗友里さんのデートを邪魔しないでくれるのですね?」
ユリエルは確認を取る。
「ええ、もちろんよ。それがあなたの願いだもの。約束は果たすわ」
「……そうですか。なら安心です」
「うふふ。じゃあ、早速だけど支払ってもらうわね。『お部屋』に案内するわ」
彼女たちの前に直径二メートルほどの真っ黒なホールが出現する。
「中へどうぞ。ここでゆっくり楽しみましょう」
ゴクリと唾を飲むユリエル。
このホールは悪魔が生み出した魔空間へと繋がっているようだ。彼女はこれから対価を支払うために魔空間でリリィと戯れることになる。
今日一日、リリィは紗友里に一切手出ししないこと。それがユリエルの願いだった。
悪魔と契約したユリエルは、自らの身体で代償を支払い、紗友里を守ることにした。
自分さえ、自分さえ我慢すれば……。
これも計画のためだ。悪魔に魂を売ってでも、計画は完遂されねばならない。
ユリエルは覚悟を決めた。
「誰にも邪魔されない最高の場所よ。現実世界とは完全に切り離された異次元の空間なの。どんなに大きな声を出しても外には聞こえないわ。だから、思い切り気持ちいいことしてあげる」
「紗友里さんには黙っててくださいね……?」
「ええ。あたしたちの契約は二人だけの秘密よ。クライアントの情報は漏らさないわ」
悪魔は嘘をつかない。悪魔が契約の相手を騙すことはないのだ。いつだって真実だけを述べる。しかし、人間は悪魔の放つ言葉を自分にとって都合のいい形で解釈してしまう。それが原因で破滅への道を辿ることになるのだ。
秘密は守る。それは天使も悪魔も同じだった。人間のように他人の秘密を話のタネにして盛り上がるような趣味は両者とも持ち合わせていないからだ。
よって、ある意味では悪魔は最も信用できる相手だった。
「ほら、入って。怖がらなくていいのよ」
「っ……!」
身震いをさせるユリエル。
緊張と恐怖が彼女を支配している。だが、迷いはない。
ホールの中へ足を踏み込む。
そこにはダブルベッドが用意されていた。その近くには紫色の怪しい光を放つランプが置かれており、空間全体を薄暗く照らしている。妖艶で幻想的な雰囲気が漂っていた。
ユリエルとリリィはベッドに腰を下ろす。
リリィが挨拶代わりのキスをしてきた。
「はむっ」
次に右耳を甘噛みされる。
ユリエルは脳が溶けるような気分になった。
身体が一気に熱くなり、あちこちが疼き始めるのだった。
「たっぷり可愛がってあげるわね」
リリィが微笑む。
こうして儀式は始まった。
ユリエルは悪魔の餌食となった。
あの手この手でリリィは天使に快楽をもたらす。
これまで多くの少女たちを昇天させてきた百戦錬磨のレズビアンだ。
究極の技を惜しみなく披露する。
「ああああああっ! いい、いいです!」
愉悦に浸るユリエルの叫び声が空間に響き渡る。
もう何度絶頂したかわからない。
自分が天使であることを忘れ、一匹のメスとして乱れ狂った。
紗友里を守るという目的さえも二の次になっているのだった。
「はぁ……、はぁ……♡」
ビクッビクッと震えながら仰向けに寝転がるユリエル。
目から涙、口からは涎が流れ出ていた。
「どう? 最高だったでしょ?」
リリィは動けなくなったユリエルの身体をあちこち撫でまわす。
「はい……。気持ち、よかった……です」
「あはっ。素直に言えたわね。偉い偉い」
初めて味わう感覚だった。
今までは百合を見るだけで満足していたのに、それ以上の快感を得ることができたのだ。
これは危険な対価である。
そうわかっていながら、「また次も」と考え始めている自分に戦慄する。
進んではいけない道に入ってしまった。
もう後戻りはできない。
ユリエルは完全に堕ちた。
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