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「これから一緒に頑張りましょうね、紗友里さん! その恋、きっと実りますから」
ユリエルさんは私の手を握りながら言った。
やけにノリノリなところが気に入らない。応援してくれるのは嬉しいけど、悩んでいる私を見て楽しんでいるようにしか思えないし、だいたい他人の恋愛に首を突っ込むのは、あまりいい趣味じゃないよね。
友達と恋バナで盛り上がるのとはワケが違う。恋バナというのは、信頼できる一部の人間だけに秘めたる想いを打ち明けるものだから価値がある。ところが、ユリエルさんは私の心を勝手に覗き見て、頼んでもいないのに世話を焼こうとしてくる。お節介としか言いようがない。
「お節介……ですか。そうですよね。私ってば図々しいですよね。調子に乗り過ぎてしまいました。これから気をつけます」
また心の声を聞かれてしまった。
しょぼんと落ち込むユリエルさん。そんな反応をされたら、ちょっと申し訳なく感じてしまう。
「あ、ううん。別に気にしてないよ。ユリエルさんは私のために協力してくれるんだもんね。お節介だなんて思ってごめんね」
私は彼女に謝っておいた。
「こちらこそ、すみません。ですが、紗友里さんの幸せを願う気持ちは本当なんです。それだけは信じてください」
「わかってる。ありがと」
自身の恋愛事情について根掘り葉掘り聞かれたり、詮索されたりするのはいい気分ではない。でも、ユリエルさんは私の味方だと言ってくれた。
自分一人だけで悩みを抱え込むのはとても辛いことなので、それを理解してくれる人がいるだけで気持ちが楽になることもあるだろう。
宮園さんへの想いを見透かされているのは恥ずかしいけど、とにかく今は彼女を頼ってみようと思う。
「放課後になったら作戦会議をしましょう。私はそれまでの間、色々と策を練っておきますね」
「うん。お願い」
「では、紗友里さんを元の場所へお戻しします。あ、そうそう。何か困ったことがあれば、その時は心の中で私の名前を三回唱えてください。いつでもどこでも助けに行きますから」
正義のヒーローみたいなことを言い出すユリエルさん。
私の方から彼女を呼び出す機会なんて、この先ないとは思うけど、もしものことがあるかもしれない。どんな時でも助けに来てくれるなら、それはすごく心強い。
「はーい。皆、席に着いて」
担任の先生が教室に入って来た。
それと同時に始業時間を知らせるチャイムが鳴る。
見慣れた景色が目の前にあった。
私は自分の席に座っている。
天界から無事に戻ってきたようだ。
さっきまで私はユリエルと名乗る自称天使の女の子と会話をしていた。ひょっとして、あれは全部夢の中の出来事だったりして。
『夢ではありませんよぉー』
脳内にユリエルさんの声が響く。
どうやら、今も私と彼女は繋がっているみたいだ。
姿が見えていなくても、私の心の声は彼女に聞こえてるんだね……。
授業中は宮園さんのことを考えないようにしよう。宮園さんにまつわるイケない妄想がユリエルさんにダダ洩れになってしまうから。
『エッチなことばかり考えてたら、授業に集中できないですもんね!』
もう! ユリエルさんはちょっと黙ってて。
はぁ、何だか調子狂っちゃうなぁ。
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