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百合×百合オペレーション  作者: 平井淳
第二章:ワクワク遊園地デート作戦

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感想をお待ちしております。

 誰もいない部室で私たちは抱擁を交わす。密着状態がしばらく続いた。


 宮園さんの温もり、吐息、心臓の鼓動……。そのすべてが愛おしかった。私は今、それを独り占めしている。これ以上の幸せはない。


 彼女の匂いは私をクラクラさせた。

 どうして彼女からはこんなにいい香りがするのだろうか。たまらなく好きな匂いだった。私は彼女に本能的に惹かれているような気がした。


「好きよ、松浪さん……。愛してる」


 強く抱きしめられたので、私もそれに応えるように腕に力を入れた。


 いつまでもこうしていたい。片時も離れたくない。


 このままお互いに押し潰し合って、ぐちゃぐちゃに混ざり合って、ドロドロに溶けて、冷え固まって、一つの肉塊になってしまいたい。


「松浪さんは私のこと、どう思ってるの?」


 宮園さんは抱擁を中断し、私の顔を見ながら問いかけてきた。


「私は……」


 もちろん好きだ。好きで好きでたまらない。

 私は宮園さんに愛されたい。私は宮園さんを愛したい。


 しかし、残念ながら、その気持ちを告げる勇気が出ない。その先の結末を知るのが恐いのだ。


 私は今の関係を失いたくないのである。友達として仲良くなれたのに、彼女に対する私の愛が重くて黒くて気持ち悪いせいで、嫌われてしまうかもしれない。


 でも、今ならどんなことでも素直に言える。

 どうせこれは夢だから。

 夢の中の宮園さんなら、私の気持ちを全部受け止めてくれるに違いない。


 ここで見えているものは、すべて妄想上の出来事だ。

 妄想の中だから、宮園さんとキスやハグを交わすことができている。どれも現実では起こり得ないことだった。


 失うものがない世界。おかげで私は強気になれる。

 ならば伝えよう。本当の気持ちを……。


「好きっ……! 宮園さんのこと、大好きだよ。死ぬほど愛してる」


 言えた。初めて言えた。

 ずっと言いたかった。破裂寸前にまで膨らんでいた胸の内側の想いを伝えた。

 

 すると、宮園さんは涙を流しながら、切ない笑顔を浮かべるのだった。


「嬉しい……。本当に嬉しい。松浪さんも私と同じ気持ちだったのね。私も松浪さんを死ぬほど愛してるわ」


 百点満点の回答だった。

 さすがは私の妄想である。期待を裏切らない。これこそ望んだ通りの展開だ。


 「絶対的勝利」を確信した私は調子に乗り始めた。勢いに任せて、現実世界では言えないことまで口走ってしまうのだった。


「宮園さんのことを考えてたらね、身体がおかしくなっちゃうの。変な気持ちになって、だんだん熱くなって、鎮めるのが大変なんだ」

「私もよ。松浪さんのことで頭がいっぱいで、いやらしい気分が抜けないわ」


 宮園さんもまた正常ではなかった。私の妄想が狂気を増すに連れて、彼女の言動も過激なものになってゆくようだ。 


「実は今もそうなの……。この感じ、どうすればいいのかしら? 松浪さん知ってる?」


 その答えをすでに彼女は知っているのだろう。

 ここは敢えて知らないフリをしているように見えた。


「こうすればいいんじゃないかな」


 私は宮園さんを机の上に押し倒す。

 意表を突かれた様子の彼女は、驚いた顔をしながら私を見上げている。


 仰向けで無防備な格好の宮園さん。私はこのまま彼女を貪り尽くそうと思った。

 だって、夢の中だもん。何をしても問題ないよね。


 妄想の世界では、彼女が私を嫌いになることはない。

 狂気も痴態もすべて許される。


「来て……」


 宮園さんは両手を伸ばし、私を迎え入れようとしている。

 やはり私たちは同じ気持ちのようだ。


「宮園さんっ……!」

「いいわよ。遠慮しないで」


 その一言で、私は自分の中の制御装置が壊れたような気がした。

 欲望のままに暴走を開始する。


 部室には私と宮園さんの喘ぐ声が絶え間なく響いた。

 二人は我を忘れて、激しく愛をぶつけ合うのだった。


 どれくらいの時間が経っただろう。

 クタクタになった私たちは床の上に倒れ込んでいた。


 私はうつ伏せのまま、宮園さんの身体に覆いかぶさっている。


 二人とも下半身は何も身につけていない状態だ。

 部屋には私たちのスカートと下着が脱ぎ捨てられていた。


「これは夢なんだよね?」


 私は確認する。


「……ええ、そうね。全部夢よ」

「そっか。だったら覚めないでほしいな」

「私もそう思うわ」


 幸せなひと時だった。宮園さんとの戯れは、この世で最大の快楽だ。私は心も体も満足していた。


 この夢から覚めた時には、とてつもない虚無感に襲われるのだろう。


 ここで味わった幸福と快感がファンタジーであったことを悟るのだ。宮園さんと両想いになれたという喜びも、彼女と交わったという経験も、すべては私の妄想が生み出した幻影に過ぎない。


「そろそろ昼休みが終わるわね。現実に戻りましょう」


 宮園さんが私の額に手を当てる。


 私の意識はここで途切れた。


 また夢で続きをしよう。

 そう約束しておけばよかった。

お読みいただきありがとうございます。

感想をお待ちしております。

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