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百合×百合オペレーション  作者: 平井淳
第二章:ワクワク遊園地デート作戦

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感想をお待ちしております。

 和式便器は使いたくないので、それを避けて洋式便器の個室に猛ダッシュで入り、扉を閉める。

 切羽詰まっていて鍵をかける余裕はなかった。でも、今は授業中でトイレには私以外に誰もいないので問題ないだろう。


 膝の辺りまで下着を下ろし、急いで便座に腰掛けた。


「はぁぁぁぁ……。危なかったぁ」 


 もう少しで完全に決壊するところだったが、どうにかに間に合った。


 あのまま教室にいたら、今頃大変なことになっていただろう。

 高校生活が終了せずに済んでよかった。


「ふぅ……」


 用を足し終えると、身体が一気に軽くなった気がした。


 ホームルーム前に中村くんから話しかけられて困っていた時に続いて、宮園さんはまたしても私をピンチから救ってくれた。


 昨日は私が粗相をした時、メイドの小田原さんに連絡して着替えを手配してくれたのだった。


 彼女には助けられてばかりである。感謝してもしきれない。


「お待たせ……」


 私は洗った手をハンカチで拭きながら宮園さんのところへ戻った。

 彼女はトイレ前の廊下で私を待ってくれていた。


「大丈夫だった?」

「うん。ホントありがとう。とっくに限界だったんだけど、なかなか先生に言えなくて……」

「仕方ないわ。とても言い出せる雰囲気ではなかったものね。今日の福田先生、いつもよりピリピリしていらっしゃるみたいだし」


 先生をピリつかせてしまったのは私が原因だろう。朝のホームルームで号令が遅くなったり、挨拶の声が小さかったせいで余計に時間が遅れたのだ。


「じゃあ、保健室に行きましょう」

「体調の方は問題ないよ?」

「先生には保健室へ行くと伝えたでしょう。それなのに、すぐに松浪さんが戻ってきたら不自然だわ」

「あー、そういえばそうだね」


 嘘を通すには、辻褄を合わせる必要がある。

 よって、今の私は保健室で休んでいることにしなくてはいけないのだ。


 とはいえ、体調不良でもないのに授業を受けずに保健室で寝るのは、ズル休みをしているような気分になる。

 ただでさえ授業についていけてないのに、これ以上サボったら挽回するのは難しい。


「勉強のことは心配しないで。放課後、私がちゃんと教えるから。あと、日直の仕事も代わりにやっておくわね」

「いいの?」

「ええ。いいに決まってるじゃない。松浪さんのためだもの」


 そう言って宮園さんは私を安心させようとする。

 彼女はなぜ、こんなに優しいのだろうか。私のために色んなことをしてくれるのだ。


 どんなお願いでも聞いてくれるかもしれない。ならば、遊園地デートの件も……。


 いや、今はまだやめておこう。これは廊下を歩きながらするような話ではない。チケットも教室に置いたままだし。誘うのは当初の計画通り昼休みになってからだ。


 保健室の前までやって来た。

 宮園さんがドアをノックするも返事はない。


「失礼します」


 私たちは部屋の中へ入る。

 保健の先生はいなかった。今は席を外しているみたいだ。


「こういう時は勝手にベッドを使ってもいいみたいよ。とりあえず、ここで寝てて」


 ベッドの前まで宮園さんに誘導される。

 私はブレザーを脱いでハンガーにかけ、上履きを脱いでからベッドで横になった。


 宮園さんが仕切り用のカーテンを閉める。これでまわりから私たちの姿は見えなくなった。


 カーテンの内側で宮園さんと二人。しかもベッドの上。

 これが漫画だったら、この後エッチな展開に……。


 またしても私は変なことを考え始めていた。


 宮園さんは私の頭を優しく撫でながら「お大事にね」と言った。私は別に病気ではないけれど。


「いつまでここにいればいいのかな?」


 ずっと仮病を使って寝ているのはマズい。罪悪感に襲われて落ち着かない。


「そうね。じゃあ、四限目までにしておきましょう。午後は教室に戻って授業を受けてね」


 昼休みまでは寝ていろということらしい。


 ちょっと長すぎる気もするけど、まぁいいや。授業の内容は宮園さんが教えてくれるみたいだから。もしかしたら、普通に先生の説明を聞いているよりも、宮園さんの解説を聞いた方がよく理解できるのではないだろうか。


「それじゃ、またね」


 宮園さんは私を残して保健室を去ることになった。


 あ、行っちゃうんだ……。


 ドキドキするシチュエーションだったけど、期待していたことは何も起こらなかった。

 そりゃそうだよね……。漫画みたいな展開が現実で起こるはずないし。

お読みいただきありがとうございます。

感想をお待ちしております。

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