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百合×百合オペレーション  作者: 平井淳
第二章:ワクワク遊園地デート作戦

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08

感想をお待ちしております。

 チャイムが鳴ると担任の福田先生が教室に入ってきた。これから朝のホームルームが始まる。


 先程まで妄想に夢中になっていた私は、うっかりトイレに行きそびれてしまった。いつもは家を出る前かホームルーム前に済ませているのに、今日はどちらもタイミングを逃した。


 ホームルームが終わったら今度こそトイレに行こう。一時限目の授業が始まるまで少し時間があるから、その間に済ませればいいや。


 昨日あんなことがあったばかりなので、さすがに二日連続で同じ失態を繰り返すわけにはいかない。しかも、今いる場所は教室だ。宮園さんだけでなくクラスの皆の目がある。ここで漏らしたら学校生活が終わるだろう。


 おしゃべりの声はまだ止まない。

 クラスの皆は福田先生がすでに来ていることに気づいていないようだ。


 すると、先生は声を張り上げて言った。


「全員静かに。もうとっくにチャイムは鳴っているわよ。日直、号令は?」


 生徒たちの会話がピタリと聞こえなくなる。教室は一瞬で静かになった。


 福田先生は怒鳴ったりはしないけれど、威厳と迫力を感じさせる声をしていた。時々キツい言い方をすることもあるので、恐そうなイメージがあり、私は先生のことが少し苦手だった。


「今日の日直は誰? 早く号令をかけて」


 先生はイラついた様子だった。

 

 日直の人はどうして何も言わないのだろう?

 不思議に思っていると、段々嫌な予感がしてきた。


 もしかして、今日は私が日直なのでは……。


「誰なの?」


 嫌な予感は的中した。

 黒板の右端に私の名前が書かれていたのだ。


「きっ、起立!」


 慌てて号令をかける。


 それに合わせてクラスメイトたちが一斉に立ち上がった。

 ピリピリとした空気が私を怯ませる。


「礼……」

「声が小さい。やり直し」


 ひっ……。


 やっぱり恐い。こんな状況で声なんて出ないよ。


「どうしたの、松浪さん? とっくに時間は過ぎているわよ」


 先生が私を責め立てる。

 気迫に押されて泣きそうになった。あと、ほんの少しだけちびってしまった。


『紗友里さん! ひとまず落ち着いてください! 焦らなくて大丈夫ですから』


 ユリエルさんがフォローを入れてきた。

 彼女の一声でようやく私は冷静さを取り戻した。


 今は怯えている場合ではない。

 日直としての役割を果たすことに専念するんだ。


「礼っ……!」

「「おはようございます!」」


 今度こそは上手くできた。

 合格と判断してくれたのか、先生は何も言ってこなかった。

 

「着席」


 生徒たちは再び席に座る。

 

 はぁ~、恐かった……。

 日直の仕事でこんなに緊張するなんて思わなかった。


 号令が済んで気が緩むと、また少しちびった。


 ダメだ、我慢しないと。ホームルームが終わるまで油断はできない。


 私はお腹に力を入れてグッと堪える。

 これ以上は一滴も出さないようにしたい。


「今朝は席替えをします。ここに番号が書かれたクジ入りの箱を置いておくので、出席番号順に引きに来てください」


 せ、席替え?

 よりによって、こんなタイミングで……。


 机を動かしている余裕などない。早く終わってくれないと本格的にマズいのだ。

 

 一筋の汗が右の頬を流れる。

 不安がさらに大きくなっていた。

お読みいただきありがとうございます。

感想をお待ちしております。

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