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百合×百合オペレーション  作者: 平井淳
第二章:ワクワク遊園地デート作戦

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06

感想をお待ちしております。

 森亜矢奈はティーンズファッション誌の読者モデルを務めている。


 抜群の顔とスタイルを誇る彼女は、最新の流行ファッションを取り入れた服をオシャレに着こなし、若い女子たちから人気を集めていた。


 自分は他の誰よりも美しい。狙って落とせない男はいない。

 いつも自信に満ちており、怖いもの知らずな性格をしているのだった。


 クラスメイトたちは読者モデルの自分を崇めている。メイクやファッションについてアドバイスを求めてくる者もいた。


 「美のカリスマ」とでも言うように、女子たちは亜矢奈を褒めちぎってくる。


 これは当然のことだと思っていた。自分にはその資格がある。他の女子生徒とは格が違うのだ。


 優越感に浸る毎日。我が物顔でクラスの女王に君臨している。


 だが、一つだけ気に入らないことがあった。

 同じクラスの松浪紗友里に関してだ。

 

 他の女子生徒たちは亜矢奈のファッションや容姿を褒めるのだが、紗友里だけは何も言ってこないのである。新学期が始まって一カ月が過ぎたにも関わらず、彼女とはまだ一言も口を聞いたことがない。


 会話がないのは亜矢奈だけではない。紗友里がクラスメイトと仲良くしているところは一度も見たことがなかった。


 休み時間は一人で食事をしており、放課後になれば一人でそそくさと帰っていく。

 まるで誰とも仲良くする気がないように見える。


 ――何なの、あの子。どうしてこの私に見向きもしないのよ?


 同じ女子なら自分に憧れたり、お近づきになりたいと思うはずじゃないのか。オシャレな自分に話を聞いてみたいと思うのが当然ではないのか。なぜ彼女は挨拶すらしてこないのか。


「あーあ。何かムカつくんだけど……」


 低く小さな声で亜矢奈はぼやいた。


「うおっ? いきなりどうしたよ、亜矢奈」

「亜矢奈ちゃん、激おこなのぉ?」


 友人の望とゆいが顔色を窺ってきた。

 望はゆいからノートを借りて英語の予習を丸写ししていたが、思わずその手を止めた。


 この二人はいつも自分のそばにいてくれる。休み時間も放課後も、休日も一緒に過ごす仲である。亜矢奈は彼女たちを親友だと思っていた。


「何かあったのか?」

「話聞くよぉ?」


 二人とはやけに馬が合う。性格も趣味もバラバラなのに、なぜか居心地がよかった。喧嘩をしたこともない。


 彼女たちになら、自分の本音を素直にぶつけることができる。

 亜矢奈は今抱えている不満を打ち明けることにした。


「松浪さんってさ、私のことどう思ってるのかな?」


 紗友里は自分にちっとも話しかけてこない。

 亜矢奈を嫌っているのか、恐れおののいているのか、あるいは興味がないのか。


 いずれの理由にせよ、許容することはできない。

 自分はこのクラスの全員から敬愛されねばならないのだ。


「松浪さん? さぁ、どうだろうなぁ……」

「ゆいもよくわかんなぁい」


 二人は首を捻った。

 

「あの子、私を嫌ってると思う?」


 質問の仕方を変えてみる。


「嫌われるようなことでもしたのか?」

「別に何もしてないけど」

「っていうかぁ~、亜矢奈ちゃんはぁ、どうしてそんなこと気にしてるのぉ?」

「それは……」


 なぜ松浪紗友里が気になるのか。


 はっきりとした理由はわからないが、とにかく彼女が自分に興味や関心を示さないことが許せないのだ。


 こんなに可愛くて綺麗な自分が同じクラスにいるのに、憧れの眼差しを向けてこないなんてあり得ない。それでも女子かと言いたくなる。


「私はどうしても、あの子を振り向かせたいの」


 遠くの席でポツンと座る紗友里を見つめながら、亜矢奈は静かに言った。

 

 この私を無視するなんて、いい度胸をしている。

 亜矢奈のプライドに火がついた。


「ぽよよ! それってもしかしてぇ~」

「亜矢奈って、松浪さんのことが好きなのか!」


 まったく予想外の反応を見せる友人たち。


「は、はぁ? どうしてそうなるわけ?」

「だって、振り向いてほしいんだろ?」

「そういう意味じゃないわよ。私に無関心なのがムカつくってこと」

「それってぇ、『好き』の裏返しなんじゃないのぉ?」

「違う!」


 ダメだ。完全に誤解されてしまった。確かに自分の言い方も悪かったかもしれないが……。


 とにかく紗友里のことは好きではない。どうにか変な勘違いをされずに、このモヤモヤを二人に伝える方法はないだろうか。


 亜矢奈は眉間にしわを寄せて「うーん」と唸る。

 

 まずは紗友里への苛立ちをアピールして、好意がないことを理解させることにしよう。


「さっき見たでしょ。中村くんに話しかけられた時、松浪さんずっとモジモジしてた。男子の前で可愛い子ぶるなんてキモすぎ。ぶりっ子じゃん」


 週末のボウリング大会に参加するか問われただけなのに、紗友里はなかなか返事をしなかった。

 じらすことで中村の気を引こうとしていたのではないか。


「あー、あたしは英語のノート写してたから知らないわ」


 望はその光景を見ていないと言う。


「ゆいも見てなかったぁ。そんなところまで見てるってことはぁ~、やっぱり松浪さんのこと好きなんじゃないのぉ?」

「なるほど、中村に負けて嫉妬してんのか! まぁ頑張れ。まだ勝ち目は残ってるさ。多分!」


 そう言って望は亜矢奈の肩を叩きながらゲラゲラと笑った。


 相談する相手を間違えたようだ。


 紗友里に好意を寄せているなどという不名誉な勘違いをされてしまい、余計に腹が立った。


 こうなったら、松浪紗友里の件は自分一人だけで対処するしかない。


 亜矢奈は「もういいわよ」と言ってそっぽを向いてしまった。

お読みいただきありがとうございます。

感想をお待ちしております。

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