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百合×百合オペレーション  作者: 平井淳
第一章:ドキドキ放課後勉強会作戦

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感想をお待ちしております。

 リリィがユリエルを解放したのは、戯れが始まってから十分後のことであった。


 揉みくちゃにされたユリエルはすっかりやつれてしまい、自慢の羽もぐったりとしおれている。


 廊下にへたり込んだまま大きなため息をつくユリエル。

 悪魔に弄ばれたという黒歴史を今すぐ消し去りたい気分だった。


「あー、楽しかったぁ。また遊びましょうね、ユリエル。今度はもっと凄いことしてあげるわ」


 満足した様子のリリィは両手を挙げて思い切り伸びをする。


「け、結構です……。もう顔も見たくありません」

「意地っ張りねぇ。嫌がってる割には気持ちよさそうに喘いでいたじゃない。さっきのアレ、快感だったでしょ?」

「いえ、全然気持ちよくなかったです。むしろ吐き気がしたくらいですよ」

「アンタ、全然素直じゃないのね。正直に言いなさいよ。本当はもっとたくさんしてほしいくせにぃ」


 ツンツン、とユリエルの脇腹を突くリリィ。


「きゅぴぃっ!?」


 不意打ちをくらったユリエルは鳥のような鳴き声を上げた。

どういうわけか、いつも以上に感度が鋭くなっているのだった。

 彼女の背筋と羽がピーンと伸びる。


「あははっ」


 それを見てリリィは楽しそうに笑う。

 悪魔とは思えないほど無邪気な笑顔だった。


「ぐぬぬ。何という屈辱……。この私が悪魔ごときに翻弄されるなんて」


 悔しさを顔に滲ませながら、ユリエルは言った。

 まさに天使が悪魔に敗北を喫した瞬間であった。


 このことが神に知れたら、彼女は確実に天界から追い出される。


 天界の恥晒し、悪魔に魂を売った天使……などと仲間たちからもたくさん非難を浴びることになるだろう。それは絶対に避けたい。


 今ここでの出来事は他の誰にも知られてはならない。

 ユリエルとリリィだけの秘密に留めておく必要がある。


 言い換えれば、彼女はリリィに弱みを握られたも同然だった。

 この件をばらしてほしくなければ命令に従え、といつ言われてもおかしくはない。


「ねぇねぇ、いいこと思いついちゃった。アンタ、あたしと契約しない?」

「しません。悪魔と手を組む天使がいるとでも?」


 早速脅すつもりなのか? とユリエルは警戒する。


「まぁ最後まで聞きなさいって。これはアンタにとっても悪い話じゃないと思うわよ?」

「巧みな言葉で乗せようとしても無駄です。私は人間と同じように悪魔の甘言に耳を貸すつもりはありません」

「ふふふっ。強がる顔も可愛いわ。たまにいるのよねぇ、悪魔なんかに屈しないって言い張ってたのに、最後はあたしという名の沼にどっぷり浸かって溺れちゃう女の子が。そういうタイプの子ほど一度快楽を味わえば元に戻れなくなっちゃうの。あたしとのエッチにハマり過ぎて廃人になってしまった子もいるわ」

「この悪魔……!」

「で、本題なんだけど。アンタが贔屓にしている女の子……松浪紗友里をあたしに寄越しなさい」

「……! どうしてそれを!」


 リリィはすでに知っていたのだ。ユリエルが紗友里と繋がっていることを。

 なぜバレてしまったのか。彼女はいつからわかっていたのか。


 これはとんでもない失策だ。紗友里との関係を隠し通すべきだったのに、最も危険な相手に知れ渡ってしまった。


「アンタがここで待ってる相手って、その子なんでしょ? 見ればわかるわよ。ずっと部屋の中を気にしてるみたいだし」


 悪魔に結界のことを尋ねた時点で墓穴を掘っていたのだった。


 ユリエルの関心は部屋の中に向けられていた。つまり、彼女がそこにいる人間と特別な関係で結ばれていることが容易に想像できでしまう。


 だが、一つだけ腑に落ちない点があった。

 部屋の中にいるのは紗友里だけではない。宮園由利香もいるのだ。


 それなのに、リリィはなぜユリエルの相手が紗友里であると断定することができたのだろうか。


 いや、今はそれを気にしている場合ではない。

 秘密がバレてしまった以上、ここから先は紗友里を守るために悪魔との攻防戦に集中せねばならない。

 

「紗友里さんをどうするつもりですか……?」

「それは内緒。でも決して悪いようにはしないわ。あの子はきっとハッピーになれる。あたしが彼女の願いを叶えてあげるもの」

「悪魔の言うことを信じると思っているのですか? そんな怪し過ぎる相手に紗友里さんを渡すわけにはいきません。彼女を幸せにするのは私です。私が先に約束したのです」


 約束は守らねばならない。

 ユリエルは誓ったのだ。紗友里のことを幸せにすると。


 天使は嘘をつかない。幸せにすると決めた人間を裏切ることは断じて許されない。


 そして何より、理想の百合カップルを成立させるという夢がかかっている。

 これまでの計画を悪魔によって台無しにされるのは嫌だった。


「無理なものは無理です。お断りします」


 ユリエルはキッパリと言い放つ。


少女楽園ガールズ・エデン計画……」


 ここでリリィは奇妙なフレーズをボソッと呟いた。

 それはユリエルにとって聞き捨てならないセリフなのだった。


「……待ってください。どうしてそれをあなたが知っているのです?」

「やっぱりアンタが黒幕だったのね。ビンゴだわ」

「質問に答えてください。どこでその言葉を……」

「あたしも計画に乗るわ」


 ニヤッと笑みを浮かべるリリィ。

 一方、ユリエルは表情を強張らせたままだった。

 

お読みいただきありがとうございます。

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