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ここはかつて授業で使われていた教室だった。
黒板は現校舎のものより黒っぽい色をしており、壁や床はコンクリートではなく木の板が張られている。
部屋の真ん中には古い机と椅子がそれぞれ二つずつ置かれていた。まるで私と宮園さんのために用意されているかのようだった。
現在、旧校舎におけるいくつかの教室は文化部の部室として利用されている。
この部屋は宮園さんが立ち上げた部活--「友愛部」に割り当てられた部室みたいだ。
「私、静かで落ち着く場所が好きなの。休み時間は騒がしい教室じゃなくて、他の誰もいない部屋でゆっくり過ごしたかった。松浪さんと二人きりで」
「私と……?」
「ええ。松浪さんと」
「どうして私なの?」
宮園さんが一緒に過ごす相手として私を選んだのはなぜなのか。
普段から仲良くしている友達じゃなくていいのだろうか。
そう疑問に思っていると……。
「それはね、松浪さんのことが好きだから」
まったく予想していない答えが返ってきた。
彼女の言葉を耳にした瞬間、私は頭が真っ白になった。
雷に打たれたような激しい衝撃を感じた。
「好きって……どういう……」
たじろぐ私。
宮園さんが何を意図して、そのような発言をしたのかわからない。
もしかして、からかわれてる?
「好きっていうのは、こういうことよ」
彼女は私を両手で手繰り寄せ、力強く抱きしめた。
それから、自らの唇を私の唇と強引に重ね合わせる。
「んっ……」
短く声を上げる私。
凄い力だ。身動きが取れない。宮園さんを振り払うことができなかった。
いや、抵抗する気など最初からない。
むしろ、この状況は私がずっと望んでいたものだった。
宮園さんと抱き合い、口づけを交わすという夢が叶ってしまった。
こんなにも、あっけなく……。
私も宮園さんのことが好きです。
今すぐそう答えたいのに、口が塞がっていて話せない。
でもいい。まだまだこうしていたかったから。
いや、ずっとこのままでもいい。窒息死するまで彼女に愛されていたい。
快感と息苦しさに溺れる私。
欲求はさらに強く、激しくなっていく……はずだった。
ところが。
「松浪さん? さっきからどうしたの?」
「え? あれ?」
急に唇の感触が消えたのである。
私を抱きしめていたはずの宮園さんは、いつの間にか教室の真ん中にある机に座っている。
机の上には彼女が教室から持ってきた風呂敷に包まれた箱のようなものが置かれていた。
「ぼーっとしてないで、お昼食べましょうよ。さぁ、隣に座って」
もう片方の机と椅子を指す宮園さん。
今まで彼女は私とキスをしていたはずなのに、どうやってそこへ移動したのだろう。
「宮園……さん?」
「白昼夢でも見ていたのかしら? 立ったまま変な方向を見つめていたけれど」
「あ、うん。ごめんね。ちょっと寝不足で頭が回ってなくて……」
今のは夢だった?
宮園さんとキスをする幻覚を見ていたというの?
私は日頃からさっきのような妄想をする癖があるけれど、現実と夢が区別できなくなるほどではなかった。
いくら宮園さんとキスがしたいからって、昼間からこんな夢を見ちゃうなんて末期だよ。
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